SJJA&WSJPOの【西サハラ最新情報】158 国連安保理決議・あと一年西サハラ人を応援!

 2016年4月29日の午後(日本時間4月30日早朝)、国連安保理は西サハラ住民の民族自決権行使を助けるMINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)の一年更新を認めました。 

 いつもの年と違うのは、①決議草案を巡って予想以上に時間がかかったこと、②国連事務総長が自ら西サハラを視察し報告したこと、③丁寧な記者発表があったこと、、等々、つまり、やっと世間の目が<最後の植民地・西サハラ>に集まってきたということです。 逆に、モロッコは、世の人に騒がれてほしくない、世の人にモロッコの悪事を知られないうちに西サハラを自分の物にしよういう魂胆だから、国連を嫌い国連の活動を妨害し、国連主導のMINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)の職員を追放し、MINURSO任期の更新を無きものにしようと、フランスに頼み込んでいました。 フランスは国連安保理の常任理事国で拒否権を持っています。 が、、

(1) 国連安保理、西サハラ決議の報告:
 「2016年4月29日、国連安保理は、記名投票でMINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)の任務をさらに一年更新することを決め、早急に追放されたMINURSO職員たちが完全復帰できるように求めた」と、国連安保理は表明した。

モロッコはパン・ギムン国連事務総長の西サハラ視察に反発して、2016年3月末にモロコ占領地・西サハラのMINURSO多国籍職員84人を追放した。

 国連安保理は全ての国連加盟国にMINURSOの活動を支援するように呼びかけ、

「草案に対して、15安保理理事国のうち10か国が賛成し、ベネズエラとウルグアイが反対し、アンゴラとニュージーランドとロシアが棄権した。草案は賛成多数で可決され、MINURSOの任務は2017年4月30日まで延長された」と、報告している。ベネズエラなどが最終草案に強く反対したのは、アメリカが出した第一草案には、モロッコの人権侵害や挑発行為や国連妨害などに対して強い非難が盛られていたのに、「やっちゃだめよ」程度に抑えられていたからだ。ベネズエラは最終草案には<脱植民地化>とか<西サハラ住民投票>に関して明確な計画表がないと非難し、これからも<アフリカ最後の植民地・西サハラ>の開放に向け国連に働き続けると反論演説をした。

 「政治家を含む多数のMINURSO職員が(モロッコによる追放によって)その任務を全うできないのは、非常に残念だ。90日以内に職員の完全復帰を事務総長は報告するように」と、国連安保理は国連事務総長に指示した。この件にかんしても、第一草案では60日以内と、早期解決を促していた。モロッコはフランスと共謀して、ズルズル細やかに、引き伸ばし作戦を継続している。

 「両当事者に、国連主導の下で真摯にわだかまりなく直接交渉をするように」と、国連安保理は促し、国連事務総長と国連事務総長西サハラ個人特使クリストファー・ロスに、感謝を表明し変わらぬ支援を約束した。

これまで国連安保理は殆ど真剣な討議などせず、5分足らずの全会一致で西サハラ草案を片づけてきた。全く、異例のことだ。

元のモロッコ植民支配国で今もモロッコを仕切るフランスは、第一草案に反対し、草案に手を入れて最終草案を作らせた。

(2) ポリサリオ西サハラ難民政府の反応:
 2016年4月29日、国連安保理のMINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)の任期更新決議を受けたポリサリオ戦線西サハラ難民政府は、「西サハラは国連安保理が更に一年間、MINURSO任務を延長したことを歓迎する。国連安保理は、一刻も早くモロッコに追放されたMINURSO職員を復帰させるべきだ。国連安保理の決議は、①植民地という現状の凍結は容認できないこと、②西サハラ天然資源の商取引は(西サハラ脱植民化などの)政治活動とは別物という考えは容認できないと、大声で宣言した。安保理メンバーは、MINURSOの更新と西サハラ人の民族自決権を強く支持した。我々はこの国連安保理決議を注意深く検証し、次の行動を決めていく」と、宣言した。

tn201604301728406MINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)テイファリテイ司令部の職員やPKO要員と筆者

(3) モロッコの反応:
 CORCAS(モロッコ王立サハラ問題諮問評議会)は4月30日の時点で国連安保理決議に関する声明を出していない。モロッコ王室中央政府の指令を待っているようだ。情報元締めのMAP (マグレブ・アラブ・プレス)は、「2017年4月30日まで、MINURSOの任期を更新した。安保理決議の主点は、モロッコが進めている<モロッコ領内のサハラ自治州>という提案を実現性と信頼性に満ちたものだと、改めて確認していることだ」と報じている。

闇に葬られそうになっていた西サハラ問題とモロッコの悪巧みが、様々な形で炙り出されてきたのは、パン・ギムン国連事務総長が西サハラを視察したからです。「百聞は一見に如かず」です! モロッコとフランスは頭を使って、MINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)を足止めし、国連主導の両当事者交渉を先延ばしにしようと企んでいます。

「安保理メンバー諸氏が西サハラ砂漠に頭を突っ込む日々は、終わった」と、ブハリ西サハラ難民政府国連代表がニューヨークで語りました。

エエッ! それを言うのは早すぎない? 本戦は始まったばかりだよ?? これから、まだまだ国連安保理のお世話になると思うよ!!

文:平田伊都子 ジャーナリスト、  写真:川名生十 カメラマン

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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