半澤健市の執筆一覧

「さくら丸に乗って帰ろうじゃありませんか」 ―日本軍兵士の視線で見たアジア・太平洋戦争― 書評 吉田 裕著『兵士たちの戦後史』、岩波書店

著者: 半澤健市

 本書は、戦争史、軍事史を専門分野とする日本近代史家吉田裕(よしだ・ゆたか)が書いた、アジア・太平洋戦争に従軍した兵士たちが辿った戦後の物語である。 《敗戦時に日本兵はは789万名いた》  敗戦時、すなわち1945年8月

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日本人留学生の見た1968年5月 -書評 西川長夫著『パリ五月革命 私論 転換点としての68年』、平凡社新書-

著者: 半澤健市

《日本知識人による「五月革命」体験》  本書は「五月革命」を体験した日本の一知識人が、43年間の蓄積を一気に噴出させた革命の総括である。「五月革命」とは、1968年のパリに始まった学生と労働者の反乱である。著者西川長夫(

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リーマンショックの再来か ―なにか不気味な株価下落―

著者: 半澤健市

 11年8月4日にニューヨーク証券取引所のダウ工業株30種平均株価が512ドル下げた。4日から5日にかけて世界的な株価下落と債券市場の混乱が起こった。 4日の欧米株価は平均4%から5%台の下落である。米国株式はダウ30種

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『スティグリッツ国連報告』 ―反・市場原理主義で世界金融を分析すれば―

著者: 半澤健市

 本稿は、09年9月に国連に提出された「国際金融システム改革に関する報告書」の要約である。「報告」は一つの委員会の産物であり、現在進行中の「世界恐慌」を論ずるための基本的文献だ。民間の一研究者が意気に感じて訳出したことを

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黒澤明の見た関東大震災 ―「黒澤明全作品30作の放映」・補遺2―

著者: 半澤健市

 映画監督黒澤明の原爆・原発観について黒澤論・補遺として書いた(11年4月16日の当ブログ)。関東大震災における黒澤の体験も「補遺2」として書いておきたい。(註) 黒澤明が関東大震災を経験したのは中学2年生の時であった。

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東電株主総会は茶番か ―脱原発提案否決の意味―

著者: 半澤健市

《89%の反対票の意味するもの》  11年6月28日に一万人に近い本人出席をみた東京電力の株主総会はメディアのトップニュースとなった。出席株主が「この総会は茶番だ」と言ったと報じた。 私の最大の関心は、脱原発を定款に規定

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内村鑑三の「日本の天職」論 ―先人は「大事件」をどう考えたか(6)―

著者: 半澤健市

《内村鑑三に固執する理由は》  07年3月の開設以来、「リベラル21」へのアクセスは累計百万件に接近中である。1日平均では650件に相当する。最近は1000件を超える日も少なくない。有り難いことである。多くのマスコミ出身

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関東大震災に「ソドムとゴモラの覆滅」をみた内村鑑三 ―先人は「大事件」をどう考えたか(5)―

著者: 半澤健市

《之を見て我心は狂はん計りである》  キリスト者の内村鑑三は関東大震災を天譴(てんけん、天罰)と受け取った。 しかしその納得は簡単でなかった。それは日記などから推定できる。 23年9月12日にこう書いている。「松屋呉服店

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孫正義ビジネスの独走だけでよいのか ―参議院行政監視委員会の衝撃―

著者: 半澤健市

11年5月23日の参議院行政監視委員会の全容を知って欲しい。 この短文はそのために書いている。4人の参考人が15分づつ発言した。そのあと討議が続いた。3人の参考人の発言に私は衝撃を受けた。小出裕章(京大原子炉実験所助教)

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キリスト者内村鑑三の「天譴論」 ―先人は「大事件」をどう考えたのか(4)―

著者: 半澤健市

《天の使者が八月三十一日の夕暮に》 少し長いが次の文章を一字一句静かに読んで頂きたい。(▼から▲) ▼日本国の華を鍾(あつ)めたる東京市は滅びた。しかし何が滅びたのである乎。帝国劇場が滅びた。三越呉服店が滅びた。白木屋、

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「天譴説」への反発――芥川龍之介と柳田国男 -先人は「大事件」をどう考えたか(3)-

著者: 半澤健市

《『羅生門』の作者による渋沢栄一批判》  渋沢栄一らの天譴(てんけん)説に「反発した若い文学者連」の一人に芥川龍之介がいた。『羅生門』では人心の荒廃を描いた作家は「大震に際せる感想」にいう。 ▼この大震を天譴と思へとは澁

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関東大震災における「天譴(てんけん)説」論議 -先人は「大事件」をどう考えたか(2)-

著者: 半澤健市

 東日本大震災を、我欲に走った人間への天罰だ、と言った都知事石原慎太郎は世論の猛反発を受けて発言を撤回し謝罪した。東京の電力を供給する東北が大損害を受ける一方、軽微な被害で済んでいる首長のいうべき言葉ではなかった。石原の

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先人は「大事件」をどう考えたか ―失った言葉を取り戻すために―

著者: 半澤健市

《蜷川幸雄の言葉に共感する》 地震以来、私は言葉を失っている。 親しい友人、知人たちも同じであるようである。地震の話に触れようとしない。触れる場合でもどこから手をつけてよいか分からない様子である。いきおい話は、断片的、感

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映画作家の想像力―黒澤明の原発観 ―「黒澤明全作品30作の放映」・補遺―

著者: 半澤健市

映画監督黒澤明が原子力を取り上げた作品は三本ある。 『生きものの記録』(55年)、『八月の狂詩曲』(91年)、『夢』(90年)である。最初の二つは原爆、三つ目は原発を扱っている。私は08年の黒澤全作品のNHK放映時のコメ

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「にほんのうた」を聴いて思うこと  ―緊張だけでよいのだろうか―

著者: 半澤健市

《「東京・春・音楽祭-東京のオペラの森」》  個人的な体験を書くことをお許しいただきたい。 11年3月23日の午後、私は家人と東京上野の「旧東京音楽学校奏楽堂」で東京オペラシンガーズの唱う「にほんのうた」を聴いていた。企

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全共闘のどこが悪いのか ―衆院予算委のテレビ中継を観る―

著者: 半澤健市

《山本一太と与謝野馨の「対決」》 11年3月4日、NHKテレビで衆議院予算委員会の中継の一部を観た。 自民党の山本一太が経済財政担当相与謝野馨の「変節」「転向」を追及した。敵であった民主党・国民新党連立内閣に、議員のまま

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日の丸とエジプト国旗(2) -読者のコメントに触発されて-

著者: 半澤健市

 有り難いことに「日の丸とエジプト国旗」(2月18日)に対して読者から多くのコメントをいただいた。それに触発されて再考し確認したことを次に掲げる。おおむね繰り返しになった。 《国旗への感情移入は自然だろうか》  国旗に対

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日の丸とエジプト国旗 ―「朝まで生テレビ」と「タハリール広場」の生中継―

著者: 半澤健市

《東京高裁判決を論じた朝ナマ》 2011年2月5日(土)の「朝まで生テレビ」(テレビ朝日)のタイトルは「激論!日本は本当にダメな国家なのか?!」であった。参加者は司会の田原総一朗ら下記13名の「論客」である。 ・大塚耕平

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「失われた二〇年」に挑戦した力作 ―劇団民芸公演 『喜劇 ファッションショー』 を観る―

著者: 半澤健市

『喜劇 ファッションショー』の作者木庭久美子は、前作『選択 一ヶ瀬典子の場合』(註)で「安楽死」をシリアスに扱ったが、今回は「マネー」を喜劇として取り上げた。 《60年代のキャリアウーマン》 主役は75歳の独身女性。ビー

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三つの小沢一郎論 ―判官贔屓的なるもの―

著者: 半澤健市

11年1月22日の『朝日新聞』に興味ある小沢一郎論が三つ載った。 一つは「天声人語」、あとの二つは「オピニオン」欄の松本健一と保阪正康による小沢論である。これには「日本史に見る小沢流」というタイトルがついている。 《先輩

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ブルジョア新聞の論調は極めて健康 ―2011年の元旦各紙を読んだら―

著者: 半澤健市

 2011年元日付の新聞6紙を読んだ。朝日、毎日、読売、日経、産経、東京である。半分は記事と広告の見分けがつかないカラフルな紙面である。スーパーのチラシのようなものだから考察対象から除いた。外交・経済・政治を視点として6

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「主人とドレイ」の関係は深化すべきか ―ドキュメンタリー映画『ANPO』を観て―

著者: 半澤健市

89分のドキュメンタリー映画『ANPO』はアメリカの女性映画監督が描いた「安保」像である。同時代人へのインタビューと映像を織り交ぜて見せていく。手法として新奇なものはないが、見ていくうちに私は随所に新鮮な驚きと大きな共感

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昭和16年12月8日 ―ユーフォリアへ飛翔する危うさ―

著者: 半澤健市

《伊藤整・三好達治・高村光太郎》   詩人として出発し作家・評論家として名を残した伊藤整に『若い詩人の肖像』という作品がある。伊藤は昭和3年に小樽から上京し文学を志していた。『若い詩人の肖像』は、その頃の在京詩人たちとの

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受験科目としてのナショナリズム ―民主党議員の勉強会で何かが変わるだろうか― 

著者: 半澤健市

《ナショナリズム勉強会 それがどうした》  松本健一著『日本のナショナリズム』(ちくま新書・10年5月刊)を読んで次のことを知った。松本が自著をテキストにして講師を務めた民主党議員の勉強会のことである。期間は07年から民

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