横田 喬の執筆一覧

世界のノンフィクション秀作を読む(32) チャールズ・M・ダウティの『アラビア砂漠』(筑摩書房、小野寺健:訳) ――砂漠のアラブ族に関する第一で不可欠の宝典(下)

著者: 横田 喬

 ◇ザイドの家族、妻ヒルファ  遊牧民のザイドにはヒルファの他にもう一人の妻があったが、逃げてしまった――大抵の夫婦では、男が暴虐であるため、これは珍しいことではない――そして今は彼女の母親の部族、ビシュル族と暮らしてい

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世界のノンフィクション秀作を読む(31) チャールズ・M・ダウティの『アラビア砂漠』(筑摩書房、小野寺健:訳) ――砂漠のアラブ族に関する第一で不可欠の宝典(上)

著者: 横田 喬

 上掲の英国人作家ダウティ(1843~1926)の著作について、かのアラビアのロレンス(1893~1935)は同書に寄せた序文で「砂漠のアラブ族についての唯一無二の宝典」とまで激賞している。ダウティはこの書物を完成するの

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世界のノンフィクション秀作を読む(30) 髙橋是清の『自伝』(1936年、千倉書房刊)――波乱万丈、数奇きわまる人生の述懐(下)

著者: 横田 喬

 ◇森有礼氏の書生から大学南校の教師へ  かくて、我々が横浜に着いたのは、明治元年の十二月。伝手があり、私ら帰朝生三人は森有礼さんにお世話を願うことになる。当時、森さんは洋行後に外国官権判事に任ぜられ、神田錦町住まい。当

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世界のノンフィクション秀作を読む(29) 高橋是清の『自伝』(1936年、千倉書房刊)――波乱万丈、数奇きわまる人生の述懐(上)

著者: 横田 喬

 高橋是清(1854~1936)は戦前に日銀総裁~首相(政友会総裁)を務め、後に二・二六事件(当時は蔵相)で暗殺された知名な人物。幕末から明治初年にかけての明治維新の激動期に、僅か十三歳の身で海外勉学を志した異数の魂の面

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世界のノンフィクション秀作を読む(28)クワメ・エンクルマの『わが祖国への自伝』(理論社刊、野間寛二郎:訳)― ―「アフリカの独立の烽火」の克明な記録(下)                          

著者: 横田 喬

③ロンドンでの活動  1945年5月、私はニューヨークからロンドンに向かった。一か月ほど後、英国で第五回パン・アフリカ会議が開かれ、私は組織委員会の秘書役に。会議には全世界から二百人余が出席し、アフリカ民族主義(植民地主

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世界のノンフィクション秀作を読む(27) クワメ・エンクルマの『わが祖国への自伝』――「アフリカの独立の烽火」の克明な記録(上)

著者: 横田 喬

 1957年にイギリス領黄金海岸(ゴールド・コースト)植民地がガーナとして独立し、1960年のいわゆる「アフリカ独立の年」の烽火となった。上掲の著書は、このガーナの独立がどのようにして起こったかを、そのリーダーだったクワ

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世界のノンフィクション秀作を読む(26) J・ブノアメシャンの『エジプト革命』(筑摩書房刊、牟田口義郎:訳『オリエントの嵐』第五章)――エジプト史上不滅の光を放つ闘い(下)

著者: 横田 喬

 ⑤カイロ暴動  パレスチナ戦争の翌日から、エジプトは徐々に革命前夜の状態に入る。時のノクラン首相は執務室で警官に偽装したテロリストによって斃された。1950年1月の総選挙では、議席の三分の二が英国からの独立を求めるワフ

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世界のノンフィクション秀作を読む(25) J・ブノアメシャンの『エジプト革命』(筑摩書房刊・牟田口喜郎:訳『オリエントの嵐』第五章)――エジプト史上不滅の光を放つ闘い

著者: 横田 喬

 著者(1901~1983)は特異な経歴を持つフランスの著名なノンフィクション作家。第二次大戦中、枢軸国側に身を寄せたヴィシー政権の閣僚として外交工作に従事~戦後、戦犯として投獄(十年)中に書き上げた中東ものの一作である

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世界のノンフィクション秀作を読む(24) マリ・エレーヌ・カミユの『革命下のハバナ』(筑摩書房刊、真木嘉徳:訳)――キューバ革命大詰めの迫力ある目撃記(下)

著者: 横田 喬

 ◇カーキ色の救世主(続) 通過する村という村は煌々と明かりを灯し、夜更けにもかかわらず歩道の上に沢山の人だかりがしています。彼らは「解放者」(フィデル)の通過を見逃さぬよう、四十八時間前から同じ場所で待っている様子でし

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世界のノンフィクション秀作を読む(23) マリ・エレーヌ・カミユの『革命下のハバナ』(筑摩書房刊、真木嘉徳:訳)――キューバ革命大詰めの迫力ある目撃記(上)

著者: 横田 喬

 著者(1932~)は執筆時、新婚早々のフランスの新進ジャーナリスト。報道写真家の夫との蜜月旅行(1958年末)でハバナに赴く巡り合わせとなり、かのフィデル・カストロによるキューバ革命の大詰めに直面する。手記は自分の体験

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世界のノンフィクション秀作を読む(22)エドガー・スノーの『中国の赤い星』(筑摩書房刊、宇佐美誠次郎:訳) 中国共産党の実態を初めて世界に紹介した歴史的著作(下)

著者: 横田 喬

 周恩来の電報が届き、延安では皆が私を待っていた。着くとすぐに、私は「中華人民共和国主席」の毛沢東に会った。瘦せたリンカーンのような人物で、中国人の平均身長より高く、やや猫背。濃い黒い髪の毛が非常に長く伸び、大きな鋭い眼

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世界のノンフィクション秀作を読む(21)エドガー・スノーの『中国の赤い星』(筑摩書房刊、宇佐美誠次郎:訳) 中国共産党の実態を初めて世界に紹介した歴史的著作(上)

著者: 横田 喬

 上記の著作は米国のジャーナリスト、エドガー・スノー(1905~1972)の手で日中戦争が本格化した直後の1937年秋に出版された。彼は前年6月、外国人として初めて中国陜西省北部のソヴィエト地区に入り、毛沢東や周恩来ら中

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世界のノンフィクション秀作を読む(20) アンネ・フランクの『アンネの日記』――隠れ家で逼塞する日々を瑞々しく活写(下)

著者: 横田 喬

 【空襲】<1943年7月19日> 昨日の日曜日、北アムステルダムが激しい空襲を受けました。二百人ほどが死に、無数の負傷者が出て、病院はどこも超満員です。鈍い、遠雷の轟きのような爆音を思い出すと、今でも身の毛がよだちます

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世界のノンフィクション秀作を読む(19) アンネ・フランクの『アンネの日記』――隠れ家で逼塞する日々を瑞々しく活写(上)

著者: 横田 喬

 本作はユダヤ系ドイツ人の少女アンネ・フランクによる日記ふうの文学作品だ。第二次世界大戦中のドイツによる占領下のオランダ・アムステルダムが舞台。ナチスの手によるユダヤ人狩りのホロコーストを避けるため、咳もできないほど息を

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世界のノンフィクション秀作を読む(18) ハインリヒ・ハラ―の『世界の屋根を越えて』(『チベットの七年』抜粋) ――「事実は小説よりも奇なり」を地で行く冒険行(下) 

著者: 横田 喬

 <チベットのお正月> 今は2月15日の前日、チベットの正月に相当する。屋根に祈りの小旗が飾られ、切り立ての樅の木が立てられる。お経が厳かに唱えられ、善男善女は神々に供物を捧げに寺に向かう。宗教とこれほど深く結びつき、遵

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世界のノンフィクション秀作を読む(17) ハインリヒ・ハラ―の『世界の屋根を越えて』(『チベットの七年』抜粋) ――「事実は小説よりも奇なり」そのままの冒険行(上) 

著者: 横田 喬

 オーストリアの登山家・写真家ハインリヒ・ハラ―(1912~2006)は、幼少のチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世と交流を持った数少ない人物だ。第二次大戦中のインドでイギリス軍の捕虜(彼は当時ドイツ人扱い)とな

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世界のノンフィクション秀作を読む(16) リンドバーグの『翼よ、あれがパリの灯だ』 ――航空機で初めて単独大西洋横断に成功したアメリカの国民的英雄の回顧録(下)

著者: 横田 喬

 私は目が覚めた。しばらく高く飛び、それから低く飛ぶ。右手で、次に左手で、操縦する。一時間ごとに燃料タンクを調べ、計器類を読むという機械的操作もやる。午後四時五十二分、九時間分の燃料を消費し、約八百ポンド積載量が減り、機

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世界のノンフィクション秀作を読む(15) リンドバーグの『翼よ、あれがパリの灯だ』 ――航空機で初めて単独大西洋横断に成功したアメリカの国民的英雄の回顧録(上)

著者: 横田 喬

 アメリカの飛行家チャールズ・リンドバーグ(1902~1974)は1927年、「スピリット・オブ・セントルイス」と名付けた単葉単発のプロペラ機でニューヨーク~パリ間を飛行。大西洋単独無着陸飛行に史上初めて成功し、世界的名

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世界のノンフィクション秀作を読む(14) スウェン・ヘディンの『さまよえる湖』(下)――史上最大のアジア探検家による中央アジア探索記

著者: 横田 喬

 <ロプ湖への旅路>5月11日、時速40㌔強の強風が吹き、夜の最低温度は18度もあり、午後二時には33度を超えた。寝袋に入って寝るには暑過ぎ、のんびりその上で寝転ぶ。嵐のために三日間を無駄にし、その上14日には辺り一帯見

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世界のノンフィクション秀作を読む(13) スウェン・ヘディンの『さまよえる湖』(上)――史上最大の探検家による中央アジア探索記

著者: 横田 喬

 ユーラシア大陸の中央部には、比較的未開のままで広大な地域が近代まで残されていた。ここに史上最大のアジア探検家スウェン・ヘディン(1865~1952)が登場する。スウェーデン人の彼は十九世紀末から二十世紀前半にかけて、中

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世界のノンフィクション秀作を読む(12) T・ヘイエルダールの『コン・ティキ号探検記』(下)  ――文献を信じ、古代の筏(複製)で南太平洋横断に成功

著者: 横田 喬

 ――赤道に近づき、海岸から遠くなるにつれ、トビウオが珍しくなくなる。時々、冷たいのが高速で飛んできて顔にピシャリとぶつかり、甲板の当直者の罵声が聞こえることもあった。トビウオのフライは朝食用に好評で、鱒のフライを思い出

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世界のノンフィクション秀作を読む(11) T・ヘイエルダールの『コン・ティキ号探検記』(上)  ――文献を信じ、古代の筏(複製)で南太平洋横断に成功

著者: 横田 喬

 <古代ペルーの人々は太平洋をパルサ材の筏で渡り、ポリネシア人の祖先となったのでは?>との仮説を自ら実証すべく、ノルウェーの探検家(人類学・海洋生物学者)トール・ヘイエルダール(1914~2002)は1947年、古代の筏

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世界のノンフィクション秀作を読む(10)マイケル・ルイスの『マネー・ボール』 資金面で圧倒的に劣る球団が如何にして勝つか(下)

著者: 横田 喬

 1990年代にアスレチックスのGM(ゼネラル・マネージャー)を務めたアルダーソンという人物は名門大学出身の、教養ある弁護士だった。彼は球界の常識と対立する野球理論でアスレチックスを運営しようと図った。例えば、打撃につい

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世界のノンフィクション秀作を読む(9)マイケル・ルイス著『マネー・ボール』 資金面で圧倒的に劣る球団が如何にして勝つか(上)

著者: 横田 喬

 アメリカのノンフィクション作家マイケル・ルイスが2003年に著した『マネー・ボール』は大リーグ関係者を揺るがした。本のテーマは明快で、資金面でライバルに圧倒的に劣るチームが、いかに勝つか。その実例として、当時のオークラ

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世界のノンフィクション秀作を読む(8) 福沢諭吉の『福翁自伝』――「門閥制度は親の仇」と喝破した当人による自叙伝(下)

著者: 横田 喬

 ◇事情探索の胸算 病院なるものの、その入費の金の案配は? 銀行なるものの金の支出入は? 郵便法とは? 徴兵令の趣向もとんと判らず、選挙法とはどんな法律で、議院とはどんな役所か、諸々不明。入り組んだ事柄になると、五日も十

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世界のノンフィクション秀作を読む(7)福沢諭吉の『福翁自伝』――「門閥制度は親の仇」と喝破した当人による自叙伝

著者: 横田 喬

 本書は幕末維新~明治の洋学者・教育者、福沢諭吉晩年の口語文体による自叙伝だ。1898(明治31)年7月1日から翌99(明治32)年2月16日にかけて計67回、当時の『時事新報』に掲載された。「門閥制度は親の仇でござる」

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世界のノンフィクション秀作を読む(6) ヘンリー・D・ソローの『ウォールデン――森の生活』(講談社学術文庫・佐渡谷重信:訳)――人生のあるべき姿を深く洞察(下)

著者: 横田 喬

 ――ホーホー啼く梟のセレナーデも聴いた。近くで聴くと、大自然の中で奏でられる最も憂愁の響きのようだ。その啼き声は、昼間の光が届かない湿地や黄昏の森にはうってつけの美しい歌声であり、広大で未開のままの<自然>そのものを暗

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世界のノンフィクション秀作を読む(5) ヘンリー・D・ソローの『ウォールデン――森の生活』(講談社学術文庫、佐渡谷重信:訳)――人生のあるべき姿を深く考察 (上)

著者: 横田 喬

 著者ソロー(1817~1862)は19世紀中葉に活動したアメリカの思想家だ。本書は彼がボストン近郊の田舎町コンコードの近くにあるウォールデン池の畔で二十代後半の二年二か月間を過ごした折の生活記録~随想集。現実的体験を通

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世界のノンフィクション秀作を読む(4) J・クラカワ―の『荒野へ』(下) アラスカの荒野で孤独死したエリート米国青年の数奇な運命

著者: 横田 喬

 ――互いに往来している間に、若者はよく怒り、顔を曇らせ、両親や政治家、大多数のアメリカ人に特有の空疎な生き方を非難していたことを、老人ははっきり覚えている。彼との仲がぎくしゃくするのを恐れ、フランツは相手がそんなふうに

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世界のノンフィクション秀作を読む(3) J・クラカワーの『荒野へ』(上) アラスカの荒野で孤独死したエリート米国青年の数奇な運命

著者: 横田 喬

――1992年4月、アメリカ東海岸の裕福な家庭に育った一人の若者が、ヒッチハイクでアラスカへ来着。マッキンレー山の北の荒野に単身徒歩で分け入っていった。四カ月後、彼の腐乱死体がヘラジカを追っていたハンターの一団に発見され

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