リルケは「やり尽くす」と言うように、「苦しみ尽くす」と言っている。私たちにとって、「どれだけでも苦しみ尽くさねばならない」ことはあった。気持ちが萎え、時には涙することもあった。が、涙を恥じることはない。この涙は、苦しむ
本文を読む横田 喬の執筆一覧
世界のノンフィクション秀作を読む(1)ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』(上) 人間の偉大と悲惨を叙述し、大きな感動をもたらす
著者: 横田 喬「人間とはガス室を発明した存在だ。が、同時にガス室に入っても、毅然とした態度を保てる存在でもある」。ユダヤ人としてナチスの強制収容所生活を体験した医師Ⅴ・フランクルの著書『夜と霧』は、人間の偉大と悲惨を叙述。「言語を絶
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(62) 『カタリーナの失われた名誉』のハインリヒ・ベル ――マス・メディアとの決然たる対峙
著者: 横田 喬1974年にベルが発表した作品『カタリーナの失われた名誉』は120万部を超える空前のベストセラーとなった。ヘルマン・ヘッセ以来、四半世紀余ぶりのドイツ人ノーベル文学賞作家が意を決し対峙しようとしたものは何だったのか。情
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(61) ハインリヒ・ベルの『カタリーナの失われた名誉』――言論の暴力はいかなる結果を生むか
著者: 横田 喬ドイツの作家ハインリヒ・ベル(1917~1985)は72年、ノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「同時代への幅広い眺望と鋭い描写によって、ドイツ文学の刷新に貢献した」。その代表作の一つ『カタリーナの失われた名誉』(サイマ
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(60) 『ジャングル・ブック』のキプリング――植民地時代が生んだ動物文学
著者: 横田 喬十九世紀半ば~第二次大戦直後にかけて、植民地帝国イギリスはインドに広大な領土を持っていた。インド生まれのノーベル賞作家キプリングの出現は、いわばその植民地帝国の申し子とも映る。彼は「東は東、西は西」という言葉を残したこ
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(59)キプリングの『ジャングル・ブック』――独創的発想と非凡な叙情
著者: 横田 喬イギリスの作家ラドヤード・キプリング(1865~1936)は1907年、ノーベル文学賞を四十一歳の史上最年少で、英国人としては最初に受賞した。授賞理由は「その創作を特徴づける、観察力、想像力、独創性、発想の意欲と叙情の
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(58) 『古都』の川端康成――戦後日本文学の最高峰
著者: 横田 喬川端は1968年のノーベル文学賞受賞の際、「日本の伝統のお陰」と謙遜。「名誉などというものは重荷となり、かえって委縮してしまうのでは」と危惧する言葉も口にした。四年後に仕事部屋でガス自殺を遂げたことを思い合わせると、痛
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(57) 川端康成の『古都』 ――流麗な筆致で描く京都の面影、そして美しい双子の姉妹の数奇な運命
著者: 横田 喬川端康成(1899~1972)は一九六八(昭和四三)年、日本人で初めてノーベル文学賞を受けた。受賞理由は「日本人の心の精髄を、すぐれた感受性をもって表現、世界の人々に深い感銘を与えた」。対象作品は小説『雪国』『千羽鶴』
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(56) 『ドクトル・ジバゴ』のパステルナーク――旧ソ連での最初の反体制活動作家
著者: 横田 喬パステルナークは1958年、ノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「現代風の抒情的な詩、および大ロシアの歴史的伝統に関する分野における、彼の重要な功績に対して」。ソ連国内では当時、『ドクトル・ジバゴ』の内容はロシア革命を批
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(55) パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』――二十世紀最大の大河ロマン
著者: 横田 喬1960年にノーベル文学賞を受けた旧ソ連の作家ボリス・パステルナーク(1890~1960)の代表作は『ドクトル・ジバゴ』だ。第一次世界大戦とロシア革命という波乱万丈の時代を背景に、無類に個性的な医師ジバゴと薄幸の美女ラ
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(54) 『ジャン・クリストフ』のロマン・ロラン――反戦平和をアピールし続けた理想主義者
著者: 横田 喬ロランは若い頃、かのトルストイに私淑して文通を試み、弟扱いする返事をもらっている。反戦平和の理想を生涯のテーマに掲げ、数々の小説・戯曲・エッセイの執筆に心を砕く。第一次世界大戦の際には、フランスとドイツ両国に対し共に「
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(53) ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』――音楽への愛が綴る「青春の書」
著者: 横田 喬西欧では比較文化論的な立場から、よく「ドイツ人は耳が利き」、「フランス人は目が利く」と言う。ドイツは楽聖バッハやベートーヴェンを、フランスは画聖セザンヌやルノアールを生んでいるからだ。が、1915年にノーベル文学賞を受
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(52) 『チボー家の人々』のロジェ・マルタン・デュ・ガール
著者: 横田 喬――大河小説完成に心魂を傾けて二十年 デュ・ガールは邦訳(白水Uブックス版)で全13冊に及ぶ大河小説を完成させるのに、1914~34年の実に二十年もの歳月を費やしている。一番のクライマックス、第一次世界大戦の際は、自動
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(51) ロジェ・マルタン・デュ・ガールの『チボー家の人々』(下)
著者: 横田 喬――人間の様々な葛藤を描く大河小説 時節は1914年夏、ジャックはローザンヌからジュネーヴへ移った。新聞や雑誌方面で得る金で生計を立て、各国の社会主義者たちが集まる『本部』に足繫く出入りしている。『本部』の中心的リーダ
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(50) ロジェ・マルタン・デュ・ガールの『チボー家の人々』(上)
著者: 横田 喬――人間の様々な葛藤を描く大河小説 フランスの作家ロジェ・マルタン・デュ・ガール(1881~1958)は1937年、著作『チボー家の人々「1914年夏」』(白水Uブックス版で八~十一部)によりノーベル文学賞を受けた。授
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(49) 『狭き門』のジッド――美しいもの、弱いものへの共感
著者: 横田 喬フランスの作家アンドレ・ジッドは、旧ソ連邦とローマ教皇庁から等しく忌避された珍しい文学者だ。その代表作『狭き門』の題名は、新約聖書(マタイ伝)にある「力を尽くして、狭き門より入れ。滅びに至る門は大きく、その路は広く、之
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(48) ジッドの『狭き門』――大胆不敵な愛と心理洞察
著者: 横田 喬フランスの作家アンドレ・ジッド(1869~1951)は1947年、ノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「人間の問題や状況を、真の大胆不敵な愛と鋭い心理洞察力で表現した、包括的で芸術的に重要な著作に対して」。その代表的な著
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(47) 『百年の孤独』のガルシア・マルケス――欧米では「魔術的リアリズム」と激賞
著者: 横田 喬南米コロンビアのノーベル文学賞作家ガルシア・マルケスの代表作『百年の孤独』は、欧米の文壇で「魔術的リアリズム」と激賞され、驚異的なヒット作となった。日本でも大江健三郎や中上健次らの現代作家たちに少なからぬ影響を与え、話
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(46) ガルシア・マルケスの『百年の孤独』――奇矯な叙述に彩られた世にも不思議な物語
著者: 横田 喬1982年にノーベル文学賞を受けた南米コロンビアの作家ガルシア・マルケス(1928~2014)の代表作『百年の孤独』は欧米の評論家が「マジック・リアリズム」と激賞したベストセラー小説だ。人の怨霊が祟ったり、死者が再生~
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(45) 『サンクチュアリ』のフォークナー ―― アメリカ文学を世界の檜舞台に引き上げた功労者
著者: 横田 喬1949年にノーベル文学賞を受けたウィリアム・フォークナー(1897~1962)は、ほぼ同世代のヘミングウェイと並び称される二十世紀アメリカ文学の巨匠だ。ヘミングウェイが海外で精力的に活動~戦争や冒険などを執筆テーマに
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(44) フォークナーの『サンクチュアリ』――世にも恐ろしい暗黒の物語
著者: 横田 喬米国南部ミシシッピ州生まれの作家フォークナー(1897~1962)は1950年、ノーベル文学賞を受けた。表題の作品『サンクチュアリ』は31年に著された小説で、それまで無名だった彼の名を一躍有名にした出世作でもある。サン
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(43) 『神々は渇く』のアナトール・フランス――精細な史料調査に腐心
著者: 横田 喬「悪は必要だ。もし悪が存在しなければ、善もまた存在しないことになるから」。アナトール・フランスの箴言は、この作家が冷めた人間通だったことを証す。私は彼の代表作『神々は渇く』を精読。その精緻な筆致に感嘆し、作家というより
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(42) アナトール・フランスの『神々は渇く』――フランス革命の真実を探求
著者: 横田 喬フランスの作家アナトール・フランス(1844~1924)は1921年、ノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「格調高い様式、人類への深い共感、優美さ、真なるガリア人気質からなる作風による、文学上の輝かしい功績が認められた」
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(41) 『詩集』のパブロ・ネルーダ ――抑圧された人民を勇気づける熱血詩人
著者: 横田 喬ネルーダは詩人にして外交官、かつ後半生では政治家に転じ、上院議員として大統領候補(共産党)にまでなった。波乱万丈の人生で、指名手配~地下生活を送ったこともある。が、本業はあくまで詩作。伝統詩、ヘルメス主義(神秘主義的な
本文を読む二十世紀世界文学の名作に触れる(40) パブロ・ネルーダの『詩集』――20世紀最大のスケールと豊穣さ
著者: 横田 喬南米チリが生んだ詩人パブロ・ネルーダ(1904~73)は71年、ノーベル文学賞を受けた。 授賞理由は「一国の大陸の運命と、多くの人々の夢に生気を与える源となった、力強い作品に対して」。「20世紀最大のスケールと豊穣さ
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(39) 『ビラヴド』のトニ・モリスン――「カラー主義」と「他者化」のからくりを鋭く糾弾
著者: 横田 喬社会の分断やヘイト運動が世界中で問題化して久しい。人々は何故「よそ者」を作り出し、排除や差別をしてしまうのか。アフリカ系米国人初のノーベル文学賞作家トニ・モリスンは、そんな「他者化」のからくりを考察。講演や著述を通じ、
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(38) トニ・モリスンの『ビラヴド』――現代の米国社会に対する深い考察
著者: 横田 喬1993年、トニ・モリスンはアフリカ系米国人として初めてノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「先見的な力と詩的な重要性によって特徴付けられた小説で、アメリカの現実の重要な側面に生気を与えたこと」。受賞作の小説『ビラヴド』
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(37) 『ニルスのふしぎな旅』のセルマ・ラーゲルレーヴ――自然保護の大切さを説いた先見性
著者: 横田 喬(上)(下)二巻、一千頁を超える長尺の物語の中で、私は第十九章「大きな<鳥の湖>」の内容にとりわけ胸を衝かれた。スウェーデン中南部にある小規模の湖(トーケルン湖)の干拓をめぐる挿話だが、眼力に富む女性作家は百年以上も昔
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(36) ラーゲルレーヴの『ニルスのふしぎな旅』――スウェーデン児童文学の古典
著者: 横田 喬セルマ・ラーゲルレーヴ(1858~1940)は1907年、スウェーデン人として、また女性として初めてノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「その著作を特徴付ける崇高な理想主義、生気溢れる想像力、精神性の認識を称えて」。受賞
本文を読む二十世紀文学の名作に触れる(35) 『バーガーの娘』のナディン・ゴーディマ――人種差別に真正面から取り組んだヒューマニスト
著者: 横田 喬サハラ以南の女流作家で初めてノーベル文学賞を受けたナディン・ゴーディマは母国・南アフリカの人種差別に真正面から取り組んだ。ユダヤ系の白人だった彼女は、イスラエル政府による対パレスチナ政策が南アのアパルトヘイトと本質的に
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