本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(252)
- 2020年 3月 20日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
日銀保有国債の大量償還
現在、「日銀が保有する国債の大量償還」が危惧されているが、この点に関する問題は、「本当の危機」が理解されていないことであり、私自身としては、「二つの危機」を憂慮している。つまり、最初が、「国債の償還時に、どれほどの損失が日銀に発生するのか?」という点でもあるが、実際には、現在、「日銀」が保有している国債の多くが、「マイナス金利の状態」となっており、そのために、これから想定される事態としては、「国債の償還時に、多額の損失が計上される可能性」とも言えるのである。
より詳しく申し上げると、「保有している長期国債」については、すでに、「低価法から原価法へ」という「会計処理の変更」により、「保有期間中の損失」が発生しない状況となっているが、問題は、「償還時に、この損失が表面化する状況」とも考えられるのである。つまり、今後は、「どれほどの金額の国債が、どのようにして償還されるのか?」に、大きな注意を払う必要性があるものと思われるが、より大きな注目点は、「日銀トレードが、今後も継続が可能なのか?」だと考えている。
別の言葉では、「日銀が、より高い価格で、国債を買い取ってくれる」という「安心感」が存在したために、今まで、「日銀トレード」が可能だったものと考えられるのである。つまり、「民間の金融機関が、高い価格でも、平気で、新発国債を応札してきた異常事態」については、「国債価格が、長期間、上昇を続けてきた」という点も指摘できるが、実際のところは、「民間金融機関が一時的に国債を保有しても、価格が下落するリスクが、ほとんど存在しなかった」という状況が指摘できるものと思われるのである。
しかし、今後は、「民間の金融機関が、今までと同様に、国債の入札を継続できるのか?」、そして、「日銀は、今までと同様に、国債の買い付けが可能なのか?」という「二つの疑問点」が出始めるものと考えられるのである。つまり、今までは、「量的緩和(QE)」の名のもとに、「日銀が、民間金融機関を中心に、国民から資金を借りて、無謀な国債の買い付けを行ってきた」という状況だったが、今後は、この点に関して、さまざまな問題が発生するものと想定されるのである。
具体的には、やはり、「日銀」が、「最後の手段」である「紙幣の増刷」に頼らざるを得ない状況のことだが、この時に予想される事態は、「1991年のソ連」などと同様に、強烈な「円安」、そして、「金利の急騰」であり、また、現在の「金(ゴールド)価格の急騰」については、この点に関する「予兆」だと考えている。(2020.2.23)
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デジタル通貨と新型コロナウイルス
今回の「新型コロナウイルス」には、いろいろな「天からのメッセージ」が隠されているものと感じているが、私が最も注目していることは、「1998年の信用収縮以来、なぜ、ゼロ金利やマイナス金利などの超低金利状態が継続したのか?」に対する「答え」である。つまり、この点に関して重要なポイントは、「過去20年以上」も継続した「金融システムのブラックホール」に関して、「デジタル通貨」と「新型コロナウイルス」が、まったく「逆の効果」をもたらしている状況である。
具体的には、どちらも「目に見えないもの」でありながら、「人々の行動」に対して、きわめて大きな影響力を持っていることも見て取れるのである。つまり、大量に創られた「現代のマネー」は、今まで、さまざまな「経済活動」、あるいは、「創作活動」を促してきたわけだが、実際には、「デジタル通貨」が、「人々の夢と希望」を刺激し、また、「人間の煩悩」を全開させた状況とも言えるのである。
しかし、一方で、「2019年末」に発生した「ゴーン容疑者の密出国」以降の現象としては、反対に、「新型コロナウイルス」が世界的に蔓延し、「世界の経済活動を機能不全に陥れた状況」だったことも見て取れるのである。つまり、「目に見えないウイルス」が「人々の恐怖心」を煽った結果として、「実体経済のマヒ状態」とでも呼ぶべき状況が、世界的に広がったのである。
そして、この時に発生した変化は、「お金よりも、命のほうが大切である」という「当たり前の事実」について「世界中の人々の意識が、ほぼ瞬間的に、認識した可能性」であり、このことは、今まで、「金融界のブラックホール」に隠されていたものが、表に出始めた状況とも感じられるのである。つまり、過去20年あまりの期間に発生した、「デリバティブの大膨張」と「量的緩和」に関して、「世界中の人々が、どれほど、デジタル通貨の恩恵を被ったのか?」が理解され始めた可能性である。
このように、「欲望」や「信用」を形にしたものが「マネー」であるが、現在では、反対に、「欲望」や「信用」の裏側に存在する「恐怖心」が表面化した状況とも考えられるのである。つまり、今後は、「文明法則史学」が教えるとおりに、「目に見えないもの」が、人々の重要な関心事になるものと思われるが、このキッカケとなるのが、目に見えない「デジタル通貨」が、目に見える「紙幣」となり、世界を暴れまわる状況、すなわち、本当の意味での「インフレ(通貨価値の下落)」とも感じられるのである。(2020.2.26)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9559:200320〕
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