青山森人の東チモールだより…進むワクチン接種
- 2021年 6月 29日
- 評論・紹介・意見
- 青山森人
一日の感染者数、100人を下回る
東チモールにおける新型コロナウィルスの一日の感染者数を見てみましょう。まずは5月下旬です(前号の東チモールだよりからの続き)。
【2021年5月】(カッコ内は回復者を含めた感染累積数、以下同様)
29日=130(6752), 30日=145(6897), 31日=97(6994) .
5月8日から一日の新規感染者数が100人を超え続けていましたが、5月31日、久し振りに100人を下回りました。次に6月です。
【2021年6月】
1日=167(7161), 2日=149(7310), 3日=112(7442),
4日=89(7511), 5日=148(7659), 6日=81(7740),
7日=24(7764), 8日=98(7862), 9日=79(7941),
10日=140(8113), 11日=31(8145), 12日=83(8228),
13日=57(8285), 14日=56(8341), 15日=71(8412),
16日=66(8478), 17日=26(8504), 18日=98(8602),
19日=76(8678), 20日=29(8707), 21日=21(8728),
22日=53(8781), 23日=62(8843), 24日=46(8889),
25日=23(8912), 26日=67(8979), 27日=56(9035).
6月の初旬、一日の感染者数が再び100人を超え、5日と10日は100人を超えましたが、7日には24人という低い数字を記録し、中旬以降になると100人以下の傾向が定着してきました。これはワクチン接種の効果の現れでしょうか。
死者数は5月28日の時点で総数15人でしたが、5月29日に1人、6月5日・8日・14日・24日そして26日にそれぞれ一人が亡くなりました。6月27日の時点で、死者総数は21人となっています。
ワクチン接種の進捗
4月7日から始まったワクチン接種について報道を追ってみましょう。
5月28日の時点で7万6683人、6月4日の時点で8万7230人がワクチン接種をしました。
6月9日、東チモールはCOVAX (COVID-19 Vaccines Global Access、ワクチン購入が困難な低所得国にワクチンを供給する仕組み)の枠組みでアストラゼネカ製ワクチン50万800回分のワクチンを受け取りました(タトリ、2021年6月11日)。
50万回の接種分ワクチンとなると、25万人の二回接種分ということであり、東チモールの人口が125万とすると(実際は150万かもしれないが…… 東チモールだより第431号)これだけで人口20%の二回接種分に達する分量です。この報道が本当だとすれば、東チモールは6月9日に、ごっそりとワクチンを受け取ったことになります(50万回分の一部では…?)。
一方6月1日、WHOが中国の製薬会社シノバク製のワクチンを緊急使用のリストに加えたと発表したことにより、Covaxの枠組みでシノバク製のワクチンも途上国を含め各国に供給されることになりました。これに呼応して在東チモールの中国大使が10万回分のシノバク製ワクチンを東チモールに友情の現れとしてプレゼントすると述べました。
6月24日、GMN(国民メディアグループ)局のインタビュー番組にオデッテ=ベロ保健大臣が出演し、アストラゼネカ製とシノバク製の二社のワクチンがこの国で接種されることについて、大臣は両社のワクチンの違いの明言をできるだけ避けようとしている様子でした。また同大臣は、二つのうちどれを接種するか接種者に選ばせることはしないと述べました。複数のワクチンがこの国に存在することについては、一つのワクチンだけでは必要回数分を賄えないからだと応えました。そしてワクチン接種による健康被害の補償については検討中であるとも言及しています。
東チモールのワクチン接種は6月に順調に進んだようです。6月25日、保健省の発表によると一回の接種を受けた人は東チモール全体で24.4%の18万3994人、首都圏であるディリ地方に限ると、50.5%の10万8053人です。二回の接種を受けた人は東チモール全体で3.28%の2万4764人、ディリ地方に限れば6.39%の1万3671人です。
ワクチン外交の綱引きか?
外交や貿易でオーストラリアと中国があからさまに対立する最近の報道を見るにつけ、アストラゼネカ製のワクチンを東チモールに供給支援するオーストラリアに負けてなるものかと中国が巻き返しを図っているような印象を抱いてしまいます。東チモール政府としては、こうした”ワクチン支援合戦”は大歓迎であることでしょう。
6月23日、シノバク製のワクチン接種が学生や教師にたいしてさっそく始まると(タトリ、2021年6月23日)、24日、シャナナ=グズマンがシノバク製ワクチンの接種を自分の警護員など取り巻きの者たちと一緒に受けました。野党の党首とはいえ国民のカリスマ指導者という肩書がつけられている人物にしては、随分と遅いワクチンの接種です。
チモール海の「グレーターサンライズ」ガス田からパイプラインを東チモールにひくという大規模事業を実現するために中国からの資本をあてにしているシャナナは、中国に友情の現れを示すために、あえてアストラゼナカ製のワクチンを避け、中国製のワクチンを待っていたのかなぁ…とつい余計な勘繰りをしたくなります。
青山森人の東チモールだより 第438号(2021年06月28日)より
青山森人 e-mail: aoyamamorito@yahoo.co
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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