自治体がDHCの差別を容認してはならない。ー 佐賀県唐津市よ、恥ずかしくないか。静岡県伊東市よ、おかしいぞ。
- 2021年 7月 1日
- 評論・紹介・意見
- 澤藤統一郎
(2021年6月30日)
毎日新聞に「追跡」と表題する、連載の調査報道欄がある。「ニュースの背景を解説、検証、深掘りリポート」というキャッチフレーズ。これが、誇大広告ではなく、充実した取材で読み応えがある。
昨日(6月29日)の毎日朝刊2面に、「追跡 自治体 次々DHC批判」「在日コリアン差別文章 連携協定解消相次ぐ」の記事。そのリードは、大要以下のとおり。
大手化粧品会社ディーエイチシー(DHC)のホームページで2020年11月以降、創業者の吉田嘉明会長名で在日コリアンを差別する内容の文章が複数掲載され、いずれも21年5月になって削除された。同社は取材にコメントを避け、削除の経緯や理由を明らかにしていない。住民の健康増進や産業振興などを目的にDHCと連携協定を結んでいた自治体や、取引先の企業はこの間、どう対応してきたのか。
DHC・吉田嘉明に染みついた唾棄すべきヘイト体質は、今さら説明するまでもない。問題は、このヘイト企業がなにゆえに今の日本の社会に存続し得ているか。いったい誰がこのヘイト企業の存続に手を貸しているのか、である。
まずは、消費者である。多くの消費者がDHC・吉田嘉明のヘイト体質を意識することなくその製品を購入している。この無知・無関心・無自覚はヘイトを野放しにする罪と言わざるを得ない。DHC・吉田嘉明のヘイト体質をよく知らねばならない。そして、DHCの製品を購入してはならない。DHC製品不買の消費行動を通じて、この社会における不当な差別解消に貢献することができる。
次いで小売店である。スーパー、コンビニ、ドラッグストアー、駅ビル、デパート等々の店舗が、ヘイト企業DHCとの取引を拒否すれば、DHCの体質を変えることができる。また、金融機関がヘイト企業DHCへの融資を止め、人材派遣業者がアルバイトの派遣を辞め、原料のサプライヤーが出荷を控え、広告業者がヘイトDHCの宣伝を拒否してもよい。DHCの経営を支えている取引業者が取引を停止することで、DHC・吉田嘉明に、「ヘイトは損だ」「ヘイトを慎まないとまともな経営は成り立たない」と思い知らせることができる。
とは言え、民間業者の対DHC自発的取引停止は、現実にはなかなかの難事であろう。世論がヘイト企業DHCとの取引を糾弾し、DHCとの取引によるイメージダウンのデメリットが顕著にならなければ容易なことではない。
しかし、地方自治体は別である。経済的合理性を行動原理としない自治体は、ヘイト企業と連携してはならない。躊躇なくヘイト解消に行動しなければならない。DHCのヘイト体質があからさまとなった今、DHCへの対応如何で、自治体の良識が計られる。「追跡」は、それを記事にしている。たとえば、高知県南国市。
同市は4月19日に電話と電子メールで(DHCに)文章削除を要請。「対応できない」とされたため同月23日に協定解消を通知した。「相手が誰でも差別的発言は良くない。市全体として差別をなくそうと動いている」と担当者は言う。また、神奈川県平塚市は「協働事業を展開してきた行政の責任」としてDHCに公式見解と再発防止策を示すよう要請。だが、公式謝罪や経緯説明は考えていないとの回答で、7月14日付の解消を決めたという。これらはヘイトを容認しない立派な自治体の例。
「追跡」が明らかにした、ヘイトを容認しない立派な自治体(☆)と、DHCのヘイトを容認した立派でない自治体(★)の色分けは以下のとおり。
☆DHCとの連携協定解消(方針や凍結含む)
宮城県石巻市 差別的な発言、掲載は遺憾
茨城県下妻市 外部の指摘を受けながらも掲載されてきたことは看過できない
千葉県横芝光町 差別を助長するような発言は容認できない
神奈川県平塚市 公式ウェブサイトに差別的な文章を掲載し続けたことは問題
神奈川県松田町 差別的な内容は遺憾。差別は許されるべきではない。
高知県南国市 差別的文章は不適切
高知県宿毛市 差別的な表現は不適切
熊本県合志市 人種差別につながる発言は容認できない。
※DHCとの連携協定解消を検討中
茨城県守谷市 企業としての主張と認識せざるを得ない。削除と見解を求めたが回答がなかった。
★DHCとの連携協定継続(方針含む)
北海道長沼町 差別を助長するような文章掲載は容認できない。削除と謝罪及 び再発防止の意思を確認した。
静岡県伊東市 差別的文章の公表は誠に残念。会長の発言と連携協定は直接関係していないと判断した
静岡県御殿場市 差別は断じて許されず、説明を求めた。謝罪と発言撤回を報告され、同様の行為を繰り返さないと誓約された。
佐賀県唐津市 一個人の発言であり、考えを述べる立場にない。協定の目的が達成されるなら解消する考えはない。
熊本県長洲町奥 差別的発言やヘイトスピーチは決して許されないが、おわびと発言撤回のメールを受けた
ヘイト容認派で最も挑戦的な態度だったのが、吉田嘉明の出身地で、系列ホテルがある佐賀県唐津市である。毎日の取材に対して、「(ヘイトコメントは)個人の発言であり、市として考えを述べる立場にない」と突っぱねている。DHCのオーナー会長である吉田嘉明のDHC公式ホームページにおけるコメントが「個人の発言」ではあり得ない。ヘイト発言を容認する唐津市のごとき態度こそが、日本社会にヘイトのウィルスを蔓延させているのだ。DHCのヘイトを容認する唐津市は、恥を知らねばならない。
また、DHCの工場などがある静岡県伊東市も、おかしい。「会長の発言と協定は直接関係していない」という。「直接関係していない」は、いかにも苦しい言い訳だが、問題は「直接関係の有無」ではない。問われているのは、自治体の側に企業のヘイト行動を許さないという断固たる意思があるか否かなのだ。伊東市のごとき姿勢が、ヘイト企業をのさばらせているのだ。伊東と言えば、著名な観光都市ではないか。観光都市としてのイメージを大切にすべきではないのか。DHCの汚れたブランドイメージを背負い込むことはあるまい。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2021.6.30より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=17123
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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