アフガニスタンの内戦、タリバンが勝利(下)
- 2021年 8月 21日
- 評論・紹介・意見
- アフガニスタンタリバン坂井定雄
首都カブールで、初めての国際記者会見
8月15日にガニ大統領が政権を放り出して国外に逃れた首都カブールに、タリバンの部隊が”無血入城“した。タリバンを恐れた472万人の市民のうち、数千人が国外脱出を求めてカブール空港に詰めかけたが、航空機に乗れた市民はごくわずかだった。
市内に入ったタリバンは、展開し、治安の回復に努めた。そして17日、政府の報道センターで内外の記者数十人を集めて、初めての国際記者会見を開いた。米CNNなど国際的TV局が全世界に中継、日本を含め各国の通信社、TV局、新聞社が速報した。
記者会見の応答役は、タリバン幹部の報道担当、ザビフラ・ムジャヒド氏。内外の現地記者には名前は知られていたが、本名かどうか、その経歴などはわからない、謎の人物。しかし、内外の記者たちの鋭い質問を裁く手腕は、なかなかだった。
▼女性の地位に質問が集中
記者会見では、女性の地位に質問が集中した。1996年~2001年の前タリバン政権下では、女性が外出するときには、頭からすっぽり覆うブルカが強制され、通学などには男性の同伴が義務付けられるなど、女性の地位と権利がひどく奪われていたからだ。
それに対してムジャヒド氏は、「女性にかかわる問題はとても重要だ。イスラム法の範囲内で、女性の権利を尊重する。男女同権だ。われわれのルールや制限の下で、女性は様々な活動ができる。教育や保健分野などだ」「一定の枠内で働き、学ぶことができる」と答えた。
イスラム法は、巨大な法体系だ。イスラム法を持ち出しても、具体的な問題に多様な回答ができる。大部分のイスラム諸国の法源はイスラム法だが、国々の法律も行政も多様だ。
▼旧タリバン政権時代とは大違い
これからアフガニスタンを支配するタリバン政権は、20年以上前のタリバン政権とは大きく異なる政治・行政・国際関係になるだろう。
その手始めにタリバン指導部は18日、2004年~14年に大統領を務めたカルザイ氏と会談した。支持を求めるとともに、新たな政権作りを協議したとみられている。タリバン指導部は、どのような政権を作ろうとしているのか、上下両院の議会をどうしようとしているのかはわからない。タリバン指導部は、これまでの政治制度を維持しようとしているのではないか。
タリバン政権にとって、さらに重要なのは、財政と国際関係だ。この二つは結びつき、絡まりあっている。アフガニスタン政府の財政は、6割以上を国際的な支援に依存している。独自の収入源は、世界最大の麻薬のケシの輸出だが、政府の収入にはならず、タリバンの資金源になっているという。タリバン政権の前途は多難だ。(了)
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