残暑見舞い:311から十年
- 2021年 9月 1日
- 評論・紹介・意見
- 柳原敏夫
今回、いろんな方から返信を頂き、その中で考えたことを、チェルノブイリ法日本版条例案の前文を素材にしたものですが、僭越ながら紹介させて頂きます。
昨日、ニュースレターに書く原稿(チェルノブイリ法日本版条例案の前文の解説)を準備していて、今までボンヤリしていたことがハッキリしてくる経験をしました。
http://chernobyl-law-injapan.blogspot.com/2021/08/blog-post.html
その体験のあと、ほかのことでも今までボンヤリしていたことがクリアに見えてくることがあり、その1つが私にとって父親のような存在だった作家の大岡昇平についての以下の発見です。
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37年前、テレビで、作家の大岡昇平が、
「8月6日が広島原爆投下、9日が長崎。15日が終戦。これが日本近代史の三大転換点ですよ。6日から15日までは我々が正気を取り戻さなければならない」
https://bit.ly/3DwDBlI
と語るのを聴いた時、
「今頃、この人はいったい何言ってんだろう?何、妄想みたいなことを話しているんだろう?」
と訳が分からず、いぶかしく思いました。
しかし、それから27年後に311で原発事故を経験し、その後の異常な日本社会を体験し、そしてそのことの意味を考える中で、昨日、「原爆投下と終戦で我々は正気を取り戻さなければならない」と言わずにおれなかった大岡の心がようやく分かる気がしました。
76年前の、広島・長崎の原爆投下と終戦(ポツダム宣言受諾)という出来事は、明治以来、人権侵害の元凶として猛威を振るった天皇主権を否定し、人民が主権者であるという国民主権を宣言した「八月革命」を引き起こした転換点となった、永遠に胸に刻まれるべき瞬間です。
そうだとしたら、76年後の、311の原発事故は日本現代史の一大転換点です。3月11日から文科省が気が狂って20mSv通知を出した4月19日までは我々がもう一度、正気を取り戻さなければならない時です。
大岡昇平が願ったように、私たちが正気に帰った時、原子力災害においても、我々市民は無権利者ではないんだ、我々市民は主権者であり、個人の尊厳に基づき、生命、健康、身体が守られる人権を有しているんだ、ということを宣言する「三月革命」(これはまだ生成途上です)を引き起こす転換点となる瞬間です。
これが市民立法「チェルノブイリ法日本版」の前提条件です。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion11258:210901〕
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