首相は民主主義の危機に正面から応え、国民は投票を通じて意思表示を 世界平和七人委が総選挙を前にアピール
- 2021年 10月 19日
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- 世界平和七人委岩垂 弘選挙
世界平和アピール七人委員会は10月18日、「『民主主義の危機』を克服するために」と題するアピールを発表した。
アピールは、岸田文雄首相が9月29日の自民党総裁選挙で勝利が決まった直後の記者会見で、「今まさにわが国の民主主義そのものが危機にある」と述べたにも拘わらず、その後、安倍政権、菅政権が続けてきた「民主主義の否定」に言及することがなかった、と指摘し、「9年間に及んだ安倍政権、菅政権が繰り返し強権を振りかざし、異論を無視してきたことに対する国民の批判に、首相は正面から応えて、名目だけにとどまらない『民主主義の危機』の克服に努めるべきである」としている。
その一方で、アピールは「国民の国政参加の重要な機会である総選挙における投票率の低迷とその背後にある無関心は、民主主義の危機をもたらしている重要な要因の一つである。国民一人一人が、現在問われている国政のあり方に思いをいたし、投票を通して積極的に意思表示されることをわたくしたちは願っている」と述べている。
世界平和アピール七人委は、1955年、ノーベル賞を受賞した物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならない、を原則に日本国憲法擁護、核兵器禁止、世界平和実現などを目指して内外に向けアピールを発してきた。今回のアピールは149回目。
現在の委員は大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者)、池内了(宇宙物理学者)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)、島薗進(上智大学教授・宗教学)の6氏。
アピールの全文は次の通り。
「民主主義の危機」を克服するために
世界平和アピール七人委員会
岸田文雄首相は9月29日の自民党総裁選挙で勝利が決まった直後の記者会見において、「今まさにわが国の民主主義そのものが危機にある」と述べた。果たして、この発言は彼の真意からのものであろうか。
2012年以来の安倍政権、菅政権では、首相が不正に関わっていても疑惑をはらすことができず、公共的な組織に対する不当な抑圧や、公私をわきまえない利益誘導をおこなう暴挙が相次いだ。そして、それらに対する説明は拒否し、批判には応答しないということが繰り返された。何より、国会においてその都度論議すべきであったのに、開催自体を拒否し続けた。このように政治の最高責任者が、意思決定の根拠を説明して国民に理解を求めることを拒否するのは民主主義の基本的条件を否定するものである。「国民の声が政治に届かない」事態が繰り返されたのである。
岸田新首相の10月8日の所信表明演説では、これまでの政権に問われてきた問題・疑惑に一切触れなかった。「丁寧な対話」といいながら、総選挙を前にして、国会においては代表質問だけにとどめ、与野党間の論議を行う姿勢を見せなかった。これでは「民主主義の危機」にまともに向き合っていく意思があるとは思えない。9年間に及んだ安倍政権、菅政権が繰り返し強権を振りかざし、異論を無視してきたことに対する国民の批判に、首相は正面から応えて、名目だけにとどまらない「民主主義の危機」の克服に努めるべきである。
国民の国政参加の重要な機会である総選挙における投票率の低迷とその背後にある無関心は、民主主義の危機をもたらしている重要な要因の一つである。国民一人一人が、現在問われている国政のあり方に思いをいたし、投票を通して積極的に意思表示されることをわたくしたちは願っている。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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