韓国政治の「日本化」
- 2023年 1月 30日
- 評論・紹介・意見
- 小原 紘日韓軍事同盟
韓国通信NO713
韓国語の勉強がきっかけで隣国に関心を持ち続け半世紀になる。「なぜ韓国語?」といぶかる人が多い学習だったが、1984年に始まったNHKのハングル講座、1988年のソウルオリンピック、日韓共同開催2002 FIFAワールドカップ、韓流ドラマの人気もあって学習者は増え続けた。日韓関係が最悪といわれる中でも、映画やドラマ、Kポップスから隣国に親しみを感じる若者たちが増えているのはうれしい。
私にとって言葉を学びながら韓国と日本を考える50年だった。命がけで軍事政権と抗う民衆の姿がまぶしく勇気づけられた日々。
少し話せるようになって韓国の友人がたくさんできた。日本の友人を案内して何度も訪れた。韓国は第二のふるさとになった。
最近の韓国の様子がおかしい。コロナでかつてのように行き来が難しなった面はあるが、伝わってくるニュースから想像もしなかった韓国が伝えられる。魅力ある国が日本並みに感じられる。
植民地からの解放もつかの間、北と南の熾烈な戦争によって国土は焦土と化し、北は共和国として一党独裁国家として歩み始め、南は軍事政権のもと民衆は苦難の道を歩んだ。自力で勝ち取った民主化宣言と2017年の「ローソク市民革命」で韓国は世界に類まれな民主国家へと歩み始めた。市民革命の経験がない日本との違いは歴然だ。
世界に感動を与えた非暴力と民衆による「革命」から間もない韓国に起きた異変。民主化に急ブレーキがかかり逆走の感さえ強い。新大統領のせいにばかりもできない。圧倒的な「ローソク」の支持から生まれた文政権を見限った韓国社会の変化も見落とせない。
<韓国の今>
韓国は少子高齢化、所得格差と非正規雇用労働者の増大、男女格差、福祉の貧困、自殺者の増加など日本と同じ深刻な悩みをかかえる。
文政権への期待が多かった分、失望は大きく、誹謗中傷に近い尹錫悦候補の政権批判が浮動票を掴み文政権後継候補を破った。韓国の政権交代は悲劇の歴史でもある。今回も勝った尹政権が大統領選で敗れた李在明を市長時代の汚職容疑で捜索を始めた。前大統領に報復が及ぶという観測もある。
大統領就任後、「国民のための政治、国民生活の再生、議会と野党との協力、分断から統合」を掲げた尹政権は物価高騰とコロナに苦しむ庶民生活をどこ吹く風(と私には見える)とばかり独善的、分断的強権政治を推し進めているように見える。
病的なまでの尹大統領の「北朝鮮嫌い」「アカ嫌い」は野党、労働組合、市民団体へ向けられ、最近は「有言実行」と言わんがばかりに政党、多数の労働団体の家宅捜査を断行。「赤狩り」軍事政権時代の公安政治を平然と復活させた。
「北朝鮮と一戦構える覚悟」という尹大統領の口からは先制攻撃、核の保有、日本の軍備増強の容認、日米韓の軍事同盟強化が平然と語られる。見逃せないのはわが国の自民党政権への露骨な迎合姿勢である。懸案の元徴用工へ賠償金の放棄が企てられている。反共主義に凝り固まった大統領の支持率は30%後半と発足1年たらずで早くも退陣要求が出始めた。同じ30%支持率でも、政権を自民党以外に考えられない国民に支えられている岸田首相の盤石さとは好対照だ。
<日本は今>
通常国会が始まったが、あまりにも問題が多すぎる。物価高騰への対策、朝鮮半島と 韓国語の勉強がきっかけで隣国に関心を持ち続け半世紀になる。「なぜ韓国語?」といぶかる人が多い学習だったが、1984年に始まったNHKのハングル講座、1988年のソウルオリンピック、日韓共同開催2002 FIFAワールドカップ、韓流ドラマの人気もあって学習者は増え続けた。日韓関係が最悪といわれる中でも、映画やドラマ、Kポップスから隣国に親しみを感じる若者たちが増えているのはうれしい。
私にとって言葉を学びながら韓国と日本を考える50年だった。命がけで軍事政権と抗う民衆の姿がまぶしく勇気づけられた日々。
少し話せるようになって韓国の友人がたくさんできた。日本の友人を案内して何度も訪れた。韓国は第二のふるさとになった。
最近の韓国の様子がおかしい。コロナでかつてのように行き来が難しなった面はあるが、伝わってくるニュースから想像もしなかった韓国が伝えられる。魅力ある国が日本並みに感じられる。
植民地からの解放もつかの間、北と南の熾烈な戦争によって国土は焦土と化し、北は共和国として一党独裁国家として歩み始め、南は軍事政権のもと民衆は苦難の道を歩んだ。自力で勝ち取った民主化宣言と2017年の「ローソク市民革命」で韓国は世界に類まれな民主国家へと歩み始めた。市民革命の経験がない日本との違いは歴然だ。
世界に感動を与えた非暴力と民衆による「革命」から間もない韓国に起きた異変。民主化に急ブレーキがかかり逆走の感さえ強い。新大統領のせいにばかりもできない。圧倒的な「ローソク」の支持から生まれた文政権を見限った韓国社会の変化も見落とせない。
<韓国の今>
韓国は少子高齢化、所得格差と非正規雇用労働者の増大、男女格差、福祉の貧困、自殺者の増加など日本と同じ深刻な悩みをかかえる。
文政権への期待が多かった分、失望は大きく、誹謗中傷に近い尹錫悦候補の政権批判が浮動票を掴み文政権後継候補を破った。韓国の政権交代は悲劇の歴史でもある。今回も勝った尹政権が大統領選で敗れた李在明を市長時代の汚職容疑で捜索を始めた。前大統領に報復が及ぶという観測もある。
大統領就任後、「国民のための政治、国民生活の再生、議会と野党との協力、分断から統合」を掲げた尹政権は物価高騰とコロナに苦しむ庶民生活をどこ吹く風(と私には見える)とばかり独善的、分断的強権政治を推し進めているように見える。
病的なまでの尹大統領の「北朝鮮嫌い」「アカ嫌い」は野党、労働組合、市民団体へ向けられ、最近は「有言実行」と言わんがばかりに政党、多数の労働団体の家宅捜査を断行。「赤狩り」軍事政権時代の公安政治を平然と復活させた。
「北朝鮮と一戦構える覚悟」という尹大統領の口からは先制攻撃、核の保有、日本の軍備増強の容認、日米韓の軍事同盟強化が平然と語られる。見逃せないのはわが国の自民党政権への露骨な迎合姿勢である。懸案の元徴用工へ賠償金の放棄が企てられている。反共主義に凝り固まった大統領の支持率は30%後半と発足1年たらずで早くも退陣要求が出始めた。同じ30%支持率でも、政権を自民党以外に考えられない国民に支えられている岸田首相の盤石さとは好対照だ。
<日本は今>
通常国会が始まったが、あまりにも問題が多すぎる。物価高騰への対策、朝鮮半島と台湾有事に対する情勢認識と国防費増額問題、少子化対策、原発の再稼働問題、コロナ対策と経済、エセ宗教と政治家の癒着問題、辺野古基地建設と沖縄の基地問題、政治と金まみれのオリンピック疑惑の検証、福島の復興と原発事故の処理、汚染水の放出問題、憲法違反の国葬強行問題、政治にはびこるウソと隠ぺい体質の究明、国政を私物化した安倍元首相問題(モリ・カケ・サクラ問題)、1200兆円を超える財政再建問題など、どれひとつとっても深刻な問題ばかり。会期150日間でどうするつもりなのだろうか。
<これからどうなるのか>
昨年末の「徹子の部屋」で、2023年がどういう年になるかと聞かれたタレントのタモリが「新しい戦前になるのじゃないか」と答えたという。また学者の内田樹は「起こりうる最悪の事態」を予測した(いずれも『週刊金曜日』NO1408)。
私たちの周囲には戦争という最悪の事態を心配する人が結構多い。本気でそう思うならシェルター(避難施設)が話題になってもよさそうだが、そんな話をする人はいない。戦争になったら、「おしまい」と考えているからだろう。
わが国では戦争についてあまり口にしない。「新しい戦前」は、しゃれた表現に聞こえるが政治的発言をしない芸能人としてはギリギリの発言なのかも知れない。
「目に映る現実はどうにもならないほど暗い」と語る辺見庸は、「戦後日本の精神的、倫理的機軸が音もなくズレているのを感じ戦慄する」と「新時代のパンセ」(生活と自治2022/3号」)で語り、「戦争の足音が聞こえる。たぶん幻聴ではない」とつぶやく。
多くの人が日本社会の劣化を感じ取っていながら平静を装っている。
辺見庸が語るように私も「何がおかしいのだろう?テレビ、ラジオから絶えず狂者のように引きつった笑い声」が最近とても気になって仕方がない。
首相とその周辺の政治家が何を語ろうとあまり興味がわかない。こんなに信用のできない人たちに政治を語らせても意味が無いような気がする。あきらめるか! あきらめないなら戦争が起こる前に危険な彼らを引きずり下ろすしかない。
戦争の準備をしながら少子化対策を語ること自体ふざけた話だ。人間尊重と平和を第一に考えるなら人殺しの武器に巨額の税金を使うとはうつけものがすることだ。
強権政治を正面に打ち出した尹錫悦大統領と政治の目的をはき違えた岸田首相は双子の兄弟みたいなもの。日韓の両市民が直面する課題はとてつもなく大きい。
に対する情勢認識と国防費増額問題、少子化対策、原発の再稼働問題、コロナ対策と経済、エセ宗教と政治家の癒着問題、辺野古基地建設と沖縄の基地問題、政治と金まみれのオリンピック疑惑の検証、福島の復興と原発事故の処理、汚染水の放出問題、憲法違反の国葬強行問題、政治にはびこるウソと隠ぺい体質の究明、国政を私物化した安倍元首相問題(モリ・カケ・サクラ問題)、1200兆円を超える財政再建問題など、どれひとつとっても深刻な問題ばかり。会期150日間でどうするつもりなのだろうか。
<これからどうなるのか>
昨年末の「徹子の部屋」で、2023年がどういう年になるかと聞かれたタレントのタモリが「新しい戦前になるのじゃないか」と答えたという。また学者の内田樹は「起こりうる最悪の事態」を予測した(いずれも『週刊金曜日』NO1408)。
私たちの周囲には戦争という最悪の事態を心配する人が結構多い。本気でそう思うならシェルター(避難施設)が話題になってもよさそうだが、そんな話をする人はいない。戦争になったら、「おしまい」と考えているからだろう。
わが国では戦争についてあまり口にしない。「新しい戦前」は、しゃれた表現に聞こえるが政治的発言をしない芸能人としてはギリギリの発言なのかも知れない。
「目に映る現実はどうにもならないほど暗い」と語る辺見庸は、「戦後日本の精神的、倫理的機軸が音もなくズレているのを感じ戦慄する」と「新時代のパンセ」(生活と自治2022/3号」)で語り、「戦争の足音が聞こえる。たぶん幻聴ではない」とつぶやく。
多くの人が日本社会の劣化を感じ取っていながら平静を装っている。
辺見庸が語るように私も「何がおかしいのだろう?テレビ、ラジオから絶えず狂者のように引きつった笑い声」が最近とても気になって仕方がない。
首相とその周辺の政治家が何を語ろうとあまり興味がわかない。こんなに信用のできない人たちに政治を語らせても意味が無いような気がする。あきらめるか! あきらめないなら戦争が起こる前に危険な彼らを引きずり下ろすしかない。
戦争の準備をしながら少子化対策を語ること自体ふざけた話だ。人間尊重と平和を第一に考えるなら人殺しの武器に巨額の税金を使うとはうつけものがすることだ。
強権政治を正面に打ち出した尹錫悦大統領と政治の目的をはき違えた岸田首相は双子の兄弟みたいなもの。日韓の両市民が直面する課題はとてつもなく大きい。
初出 :「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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