童子丸開氏「日本の3・11、スペインの3・11証拠抹殺!」
- 2011年 8月 14日
- 時代をみる
- 童子丸開
(童子丸開氏のサイト http://doujibar.ganriki.net/00mokuji.htmlよりの転載です。)
私の住むスペインでは「3・11」を「11M(オンセ・デ・エメ)」といいます。スペイン語で3月11日はOnce de Marzoで、「11M」の「M」は3月marzoのMです。
日本ではもちろん「3・11」というと東日本大震災・福島原発事故勃発の日を指しますが、スペインで「11M」といえば、2004年3月11日に起こったマドリッド列車爆破「テロ」事件を指します。この事件については『シリーズ まやかしの「イスラム・テロ」』内にある次の各ページをご覧ください。ただし「11M]では日本人にとって分かりにくいので「3・11」と書いています。
マドリッド3・11(1) アスナール政権の失速とETAによる下地作り
マドリッド3・11(2) 「ザマミロ!アスナール!」で済むのか?
マドリッド3・11(3) バーチャルリアリティの事件捜査
マドリッド3・11(4) 「生け贄」と「魔女」たち
マドリッド3・11(5) 「3・11委員会」の無能
マドリッド3・11(6) 固められた《筋書き》
マドリッド3・11(7) 3・11とは何だったのか?
もちろんですが、7年前にスペインで起きたマドリッド列車爆破「テロ」事件と日本で起きた東日本大震災・福島原発事故勃発との間には、起こった出来事自体については何の関連もありません。しかしながら、たまたま同じ日付で起こったという以外に、この2つの出来事にはいくつかの注目すべき一致点があるように思えます。それはたぶん世界のどこでも、何らかの重大犯罪に付随して必ず現れてくる種類のものなのでしょう。それが、証拠の隠匿、破壊、無視という、「証拠抹殺」です。
福島原発事故を「重大犯罪」と呼ぶのは、単に事故発生後の出来事だけではなく、そもそも核兵器とその「平和」利用の歴史自体が重大犯罪の歴史だからです。近年イスラム教徒に向かって多用される劣化ウラン弾もまた一種の「核兵器」と呼んで構わないと思います。戦争や「事故」の際には今まで内包されていたもろもろの犯罪性がセットされた形でむき出しの姿で登場して来るわけで、「原発事故」はゆるやかに行われる核戦争の一部であり、「戦争犯罪」とすら呼んでもよいものでしょう。
※ 参照:放射能:フクシマの子どもたちの未来(全訳:松元保昭)
このページのタイトルにある「証拠抹殺」ですが、犯罪が起こりその「証拠」を破壊したり隠匿したり無視したりする行為があるなら、それを行う人間は犯罪に関与すると疑われるべきでしょう。この「証拠」には物的証拠だけではなく具体的な事実に基づくデータ、証言、映像資料が含まれます。もちろんこの「証拠抹殺」という表現は佐藤栄佐久元福島県知事のお書きになった「知事抹殺」を真似させてもらったものですが、佐藤氏が知事として抹殺されたこともまた、この核「平和」利用という大犯罪の一環をなすものです。その犯罪性を隠匿するためにこそ「知事抹殺」が行われたわけで、佐藤氏をはめて軽微な犯罪者に仕立てた者たちこそが、その大犯罪の重要な共犯者なのです。
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そもそも私がこれを書くきっかけになったのは次のビデオです。
http://www.youtube.com/watch?v=2eD9a75uAqg
上杉隆 おしどり トークライブ-1
YouTubeでこのトークライブは2、3、4と続きますが、それは各自ご覧ください。この「トークライブ-1」でおしどりマコさんが、環境科学や核種分析の専門家である東大の先生から聞いた話をしておられます。その中で2分35秒あたりからビデオの最後までですが、おしどりマコさんの話の概略を文章にまとめてみます。表現などは実際のビデオの声とは異なります。
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(おしどりマコ)その先生に聞いたことだが、福島原発の爆発による瓦礫(がれき)や残骸が散らばっている。東電はその散らばっている残骸をロボットを使って集め、コンテナに詰め込んでいる。先生は、その瓦礫を一つでもいいから解析したいとおっしゃっている。先生は3月15日くらいに福島原発の西門あたりで土壌のサンプリングなどをしていろんなデータを出した。それでいろんな情報が分かるのだが、しかし瓦礫を一つでも解析できたらもっと分かるはずだ。
今は、事故直後にどんなイベントがあったのか、何が順番に爆発して、どこの炉心がどうなったのか、といったことがいっさい分かっていない。しかしどこの場所の瓦礫にどういう核種があるのかを解析することによって、それを知るための非常に重要なデータが手に入る。ところが東電はそのような解析を一切行わずに、瓦礫を集めてコンテナに詰め込んでいる。これは中国が列車を土に埋めたのと同じことだ。(笑)
(上杉)中国の方がまだましだ。その翌日にマスコミから批判されて1日で元に戻した。でも日本は150日ほど経っても元に戻さない。中国の方が150倍くらい民主的な国だということが証明された。(爆)
(おしどりマコ)中国のメディアがすごく突っ込んでいた。
(上杉)日本はそういうことをやっても、全くダメだ。…
(以下、上杉氏の日本の大手メディアの報道姿勢についての実例が数多く語られるが、ここでは省略する。2番目以下のビデオをご覧いただきたい。)
【追加参照資料】
誰かが安全と言うのを求めて自己判断せず受け入れる「安全神話」を脱るために、この世のリスクを受け入れアドベンチャーとして闘う覚悟をする件。(自由報道協会のニュース:おしどりマコさんの記事)
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「中国が日本より150倍民主的」かどうかはともかく、確かにその東大の先生が指摘するとおりですね。
中国が事故を起こした高速鉄道の車両を地中に埋めたのは、意図的な証拠隠しという以上に、とにかく何を葬ってでも早く運転を再開しなくっちゃ!以外は何も頭に無かった当局者の大ドジなのでしょう。たとえ証拠隠しの意図がなかったとしても、事故原因追究と今後の改良のために欠かすことのできない物証を破壊する犯罪的な行為でした。「事故を防ぐ」という最重要課題は「高速鉄道を走らせる」という目の前のニンジンに吹き飛ばされているわけです。
日本でいうとこの程度のことは、今まで原発の巨大事故を「想定不適当」として対策を施さず、いくつかの事故後にデータが改ざん・捏造されてきた歴史を見るならば、特に珍しいことでもないわけですね。そして3月11日以来もう十分に明らかにされたとおり、福島原発事故が発生してから日本中で起こったことは、中国の当局者も真っ青の「隠し、騙し、やらせ」のオンパレードでした。これはもう「過失」の限度を超えて犯罪の領域に入っています。日本のマスメディアに関してはビデオで上杉さんがおっしゃっているとおりでしょう。その割に「中国たたき」にはけっこう熱心なメディアが多かったようですが、情け無いのは、それがそのまま自分に帰ってくるということを想像すらできない知力の摩滅です。日本といい中国といい、アジア文明はどうなっちゃたのかと、つくづく情けなさがつのる今日この頃です。
東大の先生の話に戻りましょう。
確かに、原発付近の瓦礫は高線量に汚染されており、危機一髪の状態を続けてきた原子炉をともかくも落ち着かせる作業にとって非常に危険であり、早急に取り除かなければなりません。しかし同時に、もし東京電力や原子力安全保安院などの責任者の頭に、本当に事故原因を追究したいし追究しなければならないという気持ちがあるのなら、何が事実なのか本当に知りたいし知らねばならないという気持ちがあるのなら、そしてその情報を多くの人々と共有したいし共有しなければならないという気持ちがあるのなら、瓦礫の一部を、たとえ小さなかけらでも、場所と採取日時を明確にして研究サンプルとして保存し分析を行おうとするはずです。また他の研究機関に分析を依頼するはずです。
今まで東京電力が作成した線量に関してのマップは発表されているようですが、いまだに原子炉近辺の場所ごとの核種分析の結果はお目にかかっていません。まして何の破片にどんな核種がへばりついていたのかなどの詳細なデータは全く分かりません。東大の先生がおっしゃるとおり、これではきっと、地震による配管の破壊、ベント、メルトダウンから水素爆発にまでいたった事故の経過の詳細を追究するのは、ほとんど不可能なのかもしれません。
もし「今はそれどころではない、そこまで頭も手も回らない」というのならそれは言い訳に過ぎません。要するに「本当に事故原因を追究したい」、「何が事実なのか本当に知りたい」などとは全く思っていない、という意味です。その気になれば、各大学や研究機関の人々に頼んで現場に、小型のロボット持参ででも来てもらい、瓦礫のサンプルを計画的に集めてもらえば済むことでしょう。話を持ちかければ応じる研究者や研究機関がいくらでもあるはずで、東電にしても保安院にしても、要は事故の詳細を誰にも知られたくない、ということですね。中国の「列車埋葬」をはるかに上回る重大な証拠隠蔽と非難されてしかるべきでしょう。
こうやって、「ステップ1が済んだ。ハイ、次、ステップ2。」なんて言ってる間に、何が起こったのかを追究するための物証がどんどんと失われていくことになります。その他に、敷地内の核種について今まで東京電力から発表されているデータにしても東電だけのものに過ぎず、客観的なデータとなりうるのかどうか極めて疑問です。何せ今までとんでもない数値を発表しては取り消してきた経過があり、修正した数値ですら本当に信頼の置けるものかどうか、誰一人確認のしようが無いのです。これほどの重大な問題について「東電の敷地内にある物は東電に任せる」というのでは、内閣にしても保安院にしても、何のための国家機関なのか、国難の際の判断や権限について、一私企業と国家と、どちらが上位にあるのか、首を傾げたくなります。
さらにそういったことを、中国人の爪の垢を煎じて厳しく追究しようとしない大手メディアにしても、「本当に事故原因を追究したい」、「何が事実なのか本当に知りたい」と思っているのかどうか、非常に疑問ですね。要するに、企業、国家組織、メディア組織で総ぐるみの「証拠抹殺」が進行していると言えるのでしょう。
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ところで、「証拠抹殺」という点では、実を言うとスペインの3・11、2004年3月11日に起きたマドリッド列車爆破「テロ」事件でもっと強烈な実例があるのです。『マドリッド3・11(1) アスナール政権の失速とETAによる下地作り』にも書いたことで、詳しくはそちらをご覧いただきたいのですが、その日の朝7時半過ぎにマドリッド付近の4箇所で満員の通勤列車が爆破されました。そしてその犯罪の最も重要な物的証拠である爆破された列車の車体は、事件直後に解体処分され、警察科学捜査班による検分を受けることも専門家によって分析されることもなく、その存在を抹殺されてしまったのです。
もちろんこのような犯罪の物証を破壊する行為は明らかな法律違反です。ところがそれは、上級の裁判所から出された命令によるものでした。日本とは裁判制度や犯罪捜査の制度が異なるので話がややこしいのですが、まさに「超法規」、国家機構そのものによる物証破壊でした。2007年に判決が下った3・11事件裁判では、もちろん検察側と弁護側がこの点について激しく争いました。しかしこの物証破壊の詳細は最高裁の判断によって最後まで明らかにされず、多くの有力メディアで問題にされることもなく、判決でも触れられることはありませんでした。
また車両や爆破現場付近からわずかに採取された検体から「GOMA2」というタイプのダイナマイトが検出されたと国家警察から発表されたのですが、それらの検体はすべて水とアセトンで洗い流されて二度と再検証のできない状態にされていました。ところがわずかに一つだけ国家警察が分析しなかった検体が見つかり、裁判所の命令で、監視カメラの元でその検体の分析を行った結果、「GOMA2」とは別タイプの爆発物が検出されたのです。しかし判決文はその事実すら軽々と無視しました。そして最高裁もその判決文を追認しました。これが現実です。
その物証破壊をどの判事が誰に命令を下して誰がどのように実行したのかといった詳細は、2011年の現在に至るまでスペイン最高裁によって機密とされたままです。この事件の裁判の過程で明らかになったのは、事件1年後にはすでにそれらの車両が影も形も無くなっていたということだけです。7年後の2011年夏になってようやく、事件の2日後に車両工場で本格的な解体作業が始まった事実と一人の作業員の証言、そしてそのときのビデオ映像や写真が、一部の既存メディアで公開されましたが、その詳細はいまだに闇の中です。
奇妙なことはそればかりではありません。このような世界中の誰が見ても理不尽なことを「おかしいじゃないか」と追究しようとすると、たちまち「進歩派」として認められる新聞や解説者たちから「陰謀論!」という罵声を浴びることになります。何がどうして「陰謀論」なのかさっぱり分からないのですが、先ほどの解体作業にしてもほとんどのテレビ局は無視し続けています。これもまたわけの分からない話ですが、実際にスペインではそうなのです。それが現実なのです。詳しいことは『マドリッド3・11』のシリーズをお読みいただきたいのですが、裁判所、国家警察、政府、メディア、一部の政治集団とその取り巻きによる総ぐるみの「証拠抹殺」としか言いようがありません。その意味で、マドリッド3・11列車爆破事件は「イスラム・テロ」でも何でもなく、純然たる国家テロ、国家犯罪です。
さらにこの事件では実に稚拙、見え見えとしか言いようのない証拠捏造が多数行われ、また数々の矛盾と撞着に満ち溢れています。まさに「隠し、騙し、やらせ」のオンパレードなのですが、それを指摘するとまた「陰謀論」のレッテル貼りが待ち構えています。不思議ですね。(詳しくは上記リンク先を参照のこと。)
ただこの国でまだ救いがあるのは、国民の3分の2が、程度の差はあれこの事件の捜査と裁判に疑問を持っていること、そして大手メディアの一部が、レッテルを貼られながらも一部の疑問を表に出し追究しようとしている点です。これにしても裏にいくつかの政治力学が働いている面があって一概に賞賛はできないのですが、しかし「おかしなものはおかしい」と声を上げる既存メディアがあるだけ、きっと日本よりはまだ民主度が高いのでしょうね。
この種の「隠し、騙し、やらせ」のオンパレードは、2005年に英国で起きた7・7事件(ロンドン地下鉄バス爆破事件)でも同様です。爆破されたバスや地下鉄の車体の、実物が公開されたり、その詳しい鑑定結果が公表されたことはありません。それらがどこでどのように処理されたのかすら明らかにされていません。さらに、「犯人」とされた者たちの荷物や自宅から爆発物が押収されたにもかかわらず、その爆発物が何だったのかの正式な特定は行われないままです。そのような決定的な物証は、いったいどうなってしまったのでしょうか? マドリッド3・11と同様にですが、このようなことに対する疑問に声には「陰謀論!」のレッテル貼りが待ち構えています。そして大手メディアの何一つ、有名ジャーナリストの誰一人、声を上げる人はいません。イギリスはスペインよりもずっと民主度が低いようです。日本以下かな?
先日のロンドンで起きた外国人(イスラム教徒・黒人)居住区の騒乱について、こちらのメディアによると、キャメロン英国首相が「これは経済の問題ではなく文化の問題だ」と叫んだようです。英国の経済不安と公的支出のカットによる貧困の広がりがその背景にあることは明らかなのですが、このキャメロンのような発想は、先にノルウェーで起きた大量殺人の犯人であるイスラム嫌悪主義者にも底通するものかもしれません。この発言を聞いて、私はロンドン7・7事件直後のトニー・ブレアーを思い出してしまいました。(詳しくは上の同事件についてのリンク先でお読みください。)
また同種のことが2001年に米国で起きたいわゆる9・11事件ではもっと大規模に行われています。有名な話ですからここで詳しくは言いませんが、スクラップとして中国やインドに格安で輸出されて溶かされた世界貿易センタービル群の鋼材類はもとより、写真にだけ残されている激突機の機体破片やエンジンなどはただの一度たりとも、その実物が公開されたり、その詳しい鑑定結果が発表されたことがありません。どうしてなんでしょうね。
世界にはこういったおぞましい話がいくらでもあるんです。日本ではいままでこんなことが身近にあからさまな形で現れたことが少なかっただけです。しかし今、それが最もむごい形で日本人の目の前で展開されつつあるようです。
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もちろんこういった「テロ」という政治事件は、いま日本と福島で起こっていることとは全く異なります。しかし何か重大な出来事が起こったときに、その場でそのとき起こった事実とその出来事の真相を知るために最も重要な手がかりとなる証拠が極めてぞんざいに扱われ、あるいは意図的に破壊され、多くのデータが極めて不十分で客観性を疑われる形でしか公開されないような事態が進行し、そしてメディアのほとんどが一致してそれに沈黙する場合には、そこに何か非常にいかがわしいことが繰り広げられていると疑うべきでしょうね。それを健全なメディア・リテラシーというべきでしょう。
また私は『児玉教授:あの沈黙・長考の意味は?』の中で肥田舜太郎医師が「トンデモ」のレッテルを貼られたことに触れました。肥田さんが何十年間も告発してきたことは米軍とABCCによる「証拠抹殺」に他なりません。そしてそれこそが、この先に続く核の「平和」利用という大犯罪の出発点になったものです。「原発事故」というゆるやかな核戦争、戦争犯罪が繰り広げられている最中に、肥田さんにこの種の悪魔化レッテルを貼られることが、この犯罪の根深さを物語っています。
福島原発に関して、東京新聞や毎日新聞の一部の記事、テレビとラジオ番組の一部など、日本の大手メディアにややまともな報道をする傾向も部分的に現れてきているのですが、それはあくまでも小規模なインターネット・メディアと独立系のジャーナリストが必死に動いているおかげです。もし、岩上安身さんや上杉隆さん、日隅一雄さん、木野龍逸さん、神保哲生さん、白石草さん、おしどりマコさんなど「自由報道協会」に参加している方々、各地でインターネットを使いながら活動をしている多くの市民団体の人々、またツイッターやブログで献身的に情報を広めている数多くの人たちがいなかったら、いったいどうなっていたのだろうと、背筋が寒くなります。
近頃そのネット・メディアさえも国家による監視の対象となってしまいました。そのファシズム化の動きは今からさらに強化されるでしょうね。でも日本の既存メディアをまともにする方法は一般の国民の肩にかかっているようです。たとえば近頃週刊朝日の編集長が変わって方針を大きく変えたと言われていますが、もしそれが不健全な方向に向かっているのなら要するに買わなきゃいいのです。売れない新聞や雑誌は潰れるだけでしょう。また健全な方向に向かうものは買い支えて応援すればよいのです。そのようにもっていくしかないのかもしれません。
先ほどのマドリッド3・11でも言ったとおりですが、隠し、騙し、やらせ、メディアの無視に加えてこういった悪魔化レッテル貼りが行われた場合には、そこにはもう何の疑いもなく非常にいかがわしいことが繰り広げられているとみなすべきでしょう。先ほど「テロ事件と福島は異なる」と申しましたが、おそらくフクシマを通して現れてきているものは、そういった事件よりもはるかに巨大な犯罪の断面なのでしょう。そしてあらゆるいかがわしさ、あらゆる大犯罪の中で、最も明らかな形で現れる共通点が「証拠抹殺」なのです。
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最後に、余談ですが付け加えておきます。私がスペイン人の友人たちや近所のおっちゃんやおばちゃんたちに、いかに日本の政府が国民を騙しているのかを怒りながら語ったのですが、誰一人驚く人はいませんでした。たまたま彼らがみな以前のフランコ政権時代を知っているせいでもあるのですが、全員が「ここでも同じようなものさ。どこの国でも政府なんてそんなもんだろ?」、「そりゃそうだろ。この国でも一緒だよ。政府は国民じゃないからな。」といった調子です。また欧州ではどこでもそうですが、政治の話は日常会話の一部になっています。小学生の子どもでもニュースはよく見てますね。
そして皆、フクシマについて案外よく知っています。「スペインでさえフクシマからの放射能が見つかったのだから、日本じゃ大変だろうな」と近所の散髪屋のおっちゃんから言われました。テレビのニュースが普段でも半分以上の時間が国外のニュースで、3月中はそのほとんどが地震・津波とフクシマのニュースでした。こんなのも日本じゃ異様な感じになるのでしょうか。
また大企業や銀行がやっていることも、一般の人々はほとんど信用していません。あるとき「この国じゃ泥棒に気を付けろよ」と注意されました。私がスリやこそ泥のことかと思って「景気が悪いから物騒になったな」と答えると、「いや違うんだよ。ネクタイを締めた泥棒(ladrones con corbata)のことなんだ」と言われてしまいました。背広を着てネクタイを締めている大企業や銀行の社員を見たら泥棒と思え、ということです。
原発の話ではないのですが、去年「新型インフルエンザ」がはやったとき、知り合いのおばちゃんらがみな言ってました。「この国の政府も馬鹿なもので、外国から高い薬ばかり買わされてさ。失業者があふれてるってのに」。近所の薬屋のおばちゃんまで言ってましたね。「あたしゃ、タミフルなんか絶対に飲まないよ。効くわけないだろ? インフルエンザなんか寝てりゃよくなるのさ」。薬屋のおばちゃんが言うのだから間違いなし! もっともお客さんがタミフルを買いに来たら売ってますけど。
こんな国に住んでいますと、私もだんだんそんな感覚になってくるんですね。
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(2011年8月12日 バルセロナにて 童子丸開)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1549:110814〕
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