9・19脱原発デモ、空前の盛り上がり -福島原発の事故以来最大規模に-
- 2011年 9月 20日
- 時代をみる
- 9.19脱原発デモ岩垂 弘
1960年代から、この国のありとあらゆる集会・デモをみてきたが、これほど多様で多彩な参加者を集めた集会・デモはなかった――9月19日午後、東京・明治公園で行われた「さようなら原発1000万人アクション」を見ての感想である。主催者によると、参加者は6万人。3月11日の東日本大震災によって生じた東京電力福島第一発電所の事故以来、全国各地で「脱原発」をめざす集会・デモが行われてきたが、その中では最大規模となり、国民の間で「脱原発」の世論が着実に高まりつつあることを印象づけた。この「脱原発」の激流は、今後、多方面に影響を与えそうだ。
「さようなら原発1000万人アクション」は、この6月、内橋克人(経済評論家)、大江健三郎(作家)、落合恵子(作家)、鎌田慧(ルポライター)、坂本龍一(音楽家)、澤地久枝(作家)、瀬戸内寂聴(作家)、辻井喬(詩人)、鶴見俊輔(評論家)の9氏が呼びかけ人となって始められた(実行委員会の連絡先は原水禁)。来年の3月までに「脱原発を実現し、自然エネルギー中心の社会を求める全国署名」を1000万筆集め、東日本大震災1周年にあたる来年3月11日に衆参両院議長、首相に提出しようという運動だ。明治公園を会場とするこの日の集会・デモはこの署名運動を盛り上げるためのイベント第一弾だった。
集会の開会は午後1時30分からと公告されていたが、開会前からおびただしい人々が続々と会場の明治公園につめかけ、午後1時前には、会場は、のぼり、旗、プラカード、横断幕、風船をもった人たちで満杯。文字通り、立錐の余地もないという表現がぴつたり。会場に入れなかった人たちは、周りの道路や公園に溢れた。
参加者の顔ぶれは実に多様、多彩だった。労組員、生協組合員、消費者団体・平和団体・護憲団体、女性団体などの関係者、学生、高齢者、若者、女性、そして、子ども。明らかに1人でやってきたと思われる一般市民の姿も。のぼりや旗から判断して、北海道、青森、宮城、福島、静岡、三重、岐阜、和歌山、大阪、兵庫、広島、沖縄からの参加もあった。
これらの参加者がそれぞれ掲げていた、のぼりやプラカード、ゼッケンに書かれた文字も実にさまざま。「脱原発」「反原発」「原発から撤退を」「即時廃炉を」「全原発を即時停止せよ」「安全な原発はない」「ストップ浜岡原発」「子どもの未来のために廃炉を」「さようなら原発」…… といった具合だ。そこには、「脱原発」を求める人々の切実な思いが込められているようだった。
この集会が大勢の参加者を結集しえた理由の一つは、原水禁系の労組と原水協系の労組が初めて「脱原発」で“共闘”できたということにあるとみていいだろう。会場では、原水禁の運動に参加している旧総評系の自治労、日教組、私鉄総連、全港湾などの旗と、原水協の運動に参加している全労連系の全印総連、民放労連など各労組の旗が同時に林立し、風にはためくといった光景がみられた。
こんなことは、1986年の原水爆禁止運動再分裂以来なかったことである。
集会では、呼びかけ人9氏のうち5人が発言したが、まず登壇した鎌田氏が「5万人集会を目指してきたが、きょうはいまのところ4万人が集まっている」と報告すると、会場から、万雷の拍手。その後、鎌田氏は「この集会は一つの結節点である。これを出発点として、1000万署名を実現しよう。これまでに集まっているのは100万だから、あと900万集めなくては。何としても1000万署名を達成し、脱原発の声として政府につきつけよう。野田首相は原発を再稼働する方針のようだが、国民の八割は原発はいや、やめてくれ、と言っている。原発の再稼働は国民に敵対するものだ。核と人類が共存できないことはヒロシマ、ナガサキ、フクシマが証明した。子どもたちに平和な社会を残すためにも脱原発を」と呼びかけた。
大江氏は「原子力というエネルギーは必ず犠牲を伴う」と原子力の危険性を強調し、「原発をなくすには市民のデモしかない」と訴えた。
内橋氏は「きょうここに集まった皆さんは、これから先、20年後、30年後に生まれる、いわば私たちの子ども、孫たちから感謝されることでしょう。われわれのために、よく脱原発に立ち上がってくれたと。そういう時代が必ず来るようにするためにも、なんとしても私たちの手で脱原発を実現せねば」「新しい原発安全神話が台頭しつつある。技術が進めば安全な原発は可能であるという主張だ。しかし、これはこれまでの安全神話の改訂版であって、新しい装いをまとった安全神話に過ぎない。こうした新しい神話にだまされてはいけない」と述べた。
落合さんは、原発事故が子どもたち与える影響を憂慮する立場から、「小さな子が、夜中に起きて『放射能来ないで』と叫ぶような社会はつくるな」と訴えた。
「ひざの骨折で50日前から入院中だが、この集会にはどうしても参加したくてやってきた」と語り出した澤地さんは「福島原発の事故から半年たつというのに事故はまだ収束していない。つまり、人類は核の暴走を止めるノウハウを持っていないということだ」と、脱原発の必要性を強調した。
この後、俳優の山本太郎氏が登壇し、「きょうは、生きていたいという人がここに集まった。ぼくも生きていきたい。今、ものすごい危機が迫っている。子どもの命を守ろう。大人の命も守ろう」と叫んだ。
参加者は午後2時半ごろから、渋谷、原宿、新宿までの3コースに分かれてデモ行進に移った。長い長い列が続いた。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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