普天間移設に見る日本の追い込まれ方
- 2011年 10月 26日
- 時代をみる
- 中田安彦普天間移設
アルルの男・ヒロシです。普天間移設に関しても日本政府の動きが活発化している。産経新聞は野田総理の「対米5公約」というものがあるとして報じているが、その中にはTPPと普天間移設が絡んでいる。
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5つの対米公約表明へ TPP、武器輸出三原則… 来月の日米首脳会談
2011.10.21 01:37
野田佳彦首相は、11月のオバマ米大統領との首脳会談で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加や武器輸出三原則緩和など5つを「対米公約」として早急に実現に移す考えを表明する方針を固めた。複数の政府高官が明らかにした。日米最大の懸案となっている米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題に進展の兆しがない中、米側がかねて要求してきた案件をすべてのまざるを得ない状況に追い込まれた。
首相が表明する「対米公約」は、(1)TPP交渉への参加(2)武器輸出三原則の緩和(3)南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣(4)牛海綿状脳症(BSE)問題を機に実施された米国産牛肉輸入規制の緩和(5)国際結婚の子の親権に関するハーグ条約加盟-の5つ。
首相は、11月12、13両日にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に際し行われるオバマ大統領との会談で、5つの案件を早急に実現する考えを表明した上で、安全保障・経済の両面で米国との関係強化を打ち出す。
オバマ大統領は9月21日に米ニューヨークでの初の首脳会談で、普天間移設について「結果を求める時期が近づいている」と不快感を表明した上で、TPP、牛肉輸入規制、ハーグ条約加盟の3案件を挙げ「進展を期待する」と迫った。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111021/plc11102101370002-n1.htm
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最も危険な米軍基地と言われる普天間飛行場の移設問題は鳩山政権を壊したほどの難題。アメリカ国内と沖縄という2つの要件をクリアしなければならない。
(1)沖縄は従来は日米合意に賛成の仲井真知事が現在は明確な反対派に回った。移設先の辺野古のある名護市長はより強固な反対派である。
(2)アメリカ国内では移設が進まないことに苛立つ議員らが沖縄の嘉手納基地と普天間のヘリ部隊の統合案を提案。これとホワイトハウスや国務省側がすすめる日米現行案が並行して議論されている。
問題は、嘉手納町が「統合案」には明確に反対であるという立場を崩していないということである。今週、相次いで閣僚が沖縄を訪問したが、沖縄は現行案にも反対であり、統合案にも反対であるとする。ところが、政府はその沖縄の意向を無視して、現行案を推し進めるべく、移設先の環境評価を行うと通告した。
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嘉手納統合「ない」 玄葉外相、三連協に明言2011年10月20日
来県中の玄葉光一郎外相は19日、那覇市の沖縄ハーバービューホテルクラウンプラザで、県軍用地転用促進・基地問題協議会の副会長を務める翁長雄志那覇市長、儀武剛金武町長と面談した。引き続き嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の首長らとも面談した。三連協の首長らによると、玄葉外相は普天間飛行場の嘉手納統合案の可能性について「それはない」と否定したという。それぞれ、冒頭以外は非公開だった。
三連協は野国昌春北谷町長、當山宏嘉手納町長、出張中の東門美津子沖縄市長に代わり島袋芳敬副市長が出席。面談では、嘉手納統合案反対の立場などを訴えた。騒音問題では「夜間もそうだが、エンジン調整音の実態も把握すべきだ」と指摘、大幅な改善を求めた。
翁長市長、儀武町長との面談では、面談の冒頭、翁長市長が「沖縄に来て対話を重ねたいというが、むしろ他の都道府県に(移設受け入れを)理解してもらう行動をしてもらいたい。沖縄だけで話をするのは筋違い」と述べ、普天間飛行場の県外移設に取り組むよう訴えた。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-183031-storytopic-53.html
辺野古日米合意 名護市長、撤回を要求 玄葉外相は「推進」2011年10月20日
来県中の玄葉光一郎外相は19日、名護市役所で稲嶺進名護市長、県庁で仲井真弘多知事とそれぞれ会談し、日米両政府が合意した米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に理解を求めた。稲嶺市長は辺野古移設に反対し、日米合意の白紙撤回を強く求めた。
仲井真知事も「辺野古では時間がかかる。一日も早い返還のために日本のほかの地域に移すことを進めてほしい」と県外移設を要求し、政府と沖縄側の溝は一向に埋まらなかった。
仲井真知事との会談で玄葉外相は普天間移設について「『最低でも県外』と期待値を高めて、結果として(辺野古案に)回帰した。申し訳なく思っている」と陳謝した。その上で「東アジアにおける沖縄の役割は簡単に代替できない。心苦しいが県内移設をお願いしたい。普天間の危険除去が全てのスタート。グアムへの移転、嘉手納より南の返還を推進するために日米合意に沿って進展させたい」とし、辺野古への移設作業を進める考えを示した。
米軍関係者の飲酒運転による交通死亡事故が「公務中」を理由に不起訴処分とされた問題で、玄葉外相は「公の行事で飲酒した時に公務と扱われるような古い日米(合同委員会)合意は改善していく。私としては努力して結果を出したい」と改善に取り組む意向を示した。
名護市では「(県外移設の)努力や試みがあったことを理解してほしい」と述べたが、稲嶺市長は「われわれには努力も試みも感じられない」と反論。「これ以上の負担には耐えられないというのが県民の率直な意見だ」と指摘した。稲嶺市長は「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らさない」という公約を説明し、「市民との約束を最後まで貫く決意である」と述べ、辺野古移設の白紙撤回を米側に進言するよう強く求めた。
玄葉外相は19日、キャンプ・シュワブや普天間飛行場を視察。翁長雄志那覇市長や儀武剛金武町長、嘉手納飛行場周辺の首長らと懇談した。20日早朝、帰任する。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-183019-storytopic-53.html
嘉手納町長 統合案拒否は総意
NHK10月22日 20時51分
齋藤官房副長官は、沖縄県嘉手納町の當山町長と会談し、アメリカの有力議員らが検討するよう求めているアメリカ軍普天間基地の機能を嘉手納基地に統合する案について、當山町長は「受け入れ拒否は、町民の総意だ」と述べ、日米両政府の検討の対象としないよう強く求めました。
アメリカ軍普天間基地の移設問題を巡っては、アメリカの有力議員らが、来週、日本を訪れるパネッタ国防長官に対し、名護市辺野古に移設するとした現行案は実現性などの面で大きな懸念があるとして、普天間基地の機能を嘉手納基地に統合する案を検討するよう求めています。こうしたなかで、齋藤官房副長官は22日午後、沖縄県嘉手納町を訪れ、當山町長と会談しました。この中で、當山町長は「統合案の受け入れ拒否は、町民の総意であり、断固受け入れられない。政府は、これまでも『統合案はない』と返答しており、パネッタ長官との会談の結果、統合案が検討のそ上に載れば、信頼は失墜し、町民も黙っていられない」と述べ、嘉手納基地への統合案を日米両政府の検討の対象としないよう強く求めました。これに対して、齋藤副長官は「事前の外交ルートの情報でも、パネッタ長官が日本での会談でその話をするという情報はない」と述べました。また、當山町長は、嘉手納基地の騒音について「以前よりもひどくなっている」と述べ、アメリカ側に改善を求めるよう要請したのに対し、齋藤副長官は「努力したい」と述べました。一連の日程を終えた、齋藤官房副長官は、記者団に対し「長い長い時間がかかっている問題について、話し合いながら、ご理解をいただくということが、今の政権の方向であることは間違いない。そのことが十分に伝わったかどうか分からないが、大変厳しい状況だということは、沖縄に来た大臣も思っただろうし、私もそういう認識であり、単純に来れば理解が得られるということではない」と述べました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111022/k10013442661000.html
普天間移設アセス年内提出を確認 関係閣僚会合2011年10月21日
政府は21日午前、沖縄政策をめぐる関係閣僚会合を首相官邸で開き、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設のアセスメント結果をまとめた「環境影響評価書」を年内に県側へ提出する方針を確認した。日米両政府の合意に基づく移設実現に向けて県側の理解を得るため、引き続き振興策を実施することでも一致した。
会合には藤村修官房長官らが出席。相次いで沖縄を訪問した川端達夫沖縄北方担当相、一川保夫防衛相、玄葉光一郎外相が仲井真弘多知事らと会談した結果を報告した。
(共同通信)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-183088-storytopic-53.html
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埋め立ての環境アセスメントを行うことの狙いについてはいくつか考えられる。
(1)アメリカに対して環境アセスを行なっていると「言い訳」することで、最低限、アメリカをなだめる。結論を先延ばしにする。(よりマシ戦略)
(2)環境アセスという既成事実を作ってしまうことで、公有水面埋立法の埋立権限を持つ知事を追い込む。知事がそれでも折れなければ、政府は、予定海域の使用権限を知事から国に移す特別措置法案を提出、強行採決して成立させ、知事の権限を剥奪する。一方で沖縄振興策をうち出すというアメとムチの政策を狙う。(より悪戦略)
今までであれば、(1)のような希望的観測もありえただろう。しかし、「アメリカの国益が第一」と言わんばかりの野田政権では(2)の強行突破を狙っている可能性がある。
私はつい最近、沖縄に行って辺野古崎地区を数時間かけてみて回ってきた。辺野古崎地区というのは名護市の外れにある海沿いの地区で、岸壁で釣り客の家族連れが居るほかは、休日だったにも関わらず賑わいのないところだった。政府はここに米海兵隊のヘリポートを数千億円をかけて建設するというのである。
一時的には建設需要などで潤うかもしれないが、原子力発電所の建設と同じで、また次の基地を造らないと地元経済が回らないようにするのが日米両国政府の沖縄に対する狙いでもあるだろう。
沖縄というのはかつては米国の植民地であり、今は日本政府の植民地のようなところである。沖縄本島には、観光客向けの一部区間のモノレールの他、まともな鉄道は走っていない。JR沖縄というものはない。「JR九州の利用促進、JRの販売促進」を目的にしたJR九州沖縄支店があるだけである。
米軍基地の経済効果も昔ほどはあるといえなくなっており、今は沖縄が必要とするのは基地産業以外の観光産業やクリーンエネルギーの開発拠点といった新しい産業である。沖縄もできる限り基地依存ではなく自立しなければならない。
地元がこれだけダメだと言っているのであるから本来、日本政府は「日本国内には海兵隊を置く場所はない。申し訳ないが、既存の基地への統合でお願いしたい。それでもダメなら、日本の防衛に海兵隊は本質的には必要ではないので本国に帰ってもらえないか」と言うべきである。
自国の防衛は出来る限りは自国で行うべきである。日本はアメリカにとって死活的に重要な嘉手納基地を提供している。これで本来は十分すぎるほどの対米協力である。
MITのリチャード・サミュエルズらは日本以外にオーストラリアや韓国などの親米国家に基地の肩代わりを求めてはどうかと言っている。これは負担軽減のためにも願っても無いことであるはずなのだが、日本の政治家はひたすら日米合意の履行、これを念仏のように唱えるだけだ。「アメリカに見捨てられるぞ」ということを日本国内やアメリカ国内で言ってふれ回る人がいるのだろう。利権屋たちである。
日米関係をそういった利権屋たちだけに独占させるべきではない。
http://amesei.exblog.jp/14807343/より転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1682:111026〕
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