岩国基地への「一部海兵隊移設」提案も
- 2012年 2月 9日
- 時代をみる
- 池田龍夫
「沖縄・海兵隊のグアム先行移転」に関する日米審議官協議が2月7日未明(日本時間)ワシントンで開かれ、普天間飛行場移設に関する動きが慌しくなってきた。7日朝刊各紙の報道によると、「海兵隊4700人のグアム先行移転」とは別に、岩国基地(山口県)に1500人規模の移転を米政府が日本側に打診していたという。普天間問題打開のためとはいえ、新たな難題が突きつけられた印象である。
日米外交実務者協議で詰め
ワシントン発共同電によると「7日の日米実務者会議で日本側は嘉手納基地以南の米軍6施設・区域に関し、普天間飛行場返還と切り離してキャンプ瑞慶覧と牧港補給基地の一部返還を求めた。約4700人をグアムへ先行移転させ、パッケージとなっていた普天間県内移設を分離する方針と、普天間を辺野古移設する現行計画を確認した」というから、6日の「メディアウオッチ」で指摘した筋書き通りの協議が進んでいると考えられる。
〝米国主導〟の駆け引きに振り回される
一方、「岩国基地への移転打診」との情報が乱れ飛ぶなど、「米国主導による海兵隊移転」の様相がますます濃くなってきた。岩国基地は既に厚木基地などからの米軍移駐を押し付けられており、それ以上の負担拡大に地元民の反対が強まるに違いない。米側の〝ゴリ押し提案〟に野田佳彦政権が同調するとは考えられず、7日の参院予算委員会でも野田首相は「岩国基地への分散移転案は協議していない」と、野党の質問をかわしていた。しかし、玄葉光一郎外相は「沖縄の負担軽減という意味で、国外という面と全国で負担を分かち合うという両面がある」と答えており、「国内移設」に含みを残している。このような重要案件につき、地元・沖縄はもとより防衛省との協議も経ないまま、日米外務当局だけで話を進めていたに違いなく、普天間問題の行方をますます複雑にしてしまったように思える。
東京新聞2月7日付朝刊が、「米国防総省としては、普天間移設と分離したことで、グアム移転が大幅に進展する可能性が高まったとアピールし、昨年末削られた国防予算を復活させたかった。この時期に出てきたのは2月13日の『13会計年度予算』発表をにらんで、米国防総省が議会有力幹部に根回ししているうちに一部メディアに漏れたためだ」と指摘していたが、参考になる背景分析と思った。
なお残る「普天間飛行場固定化」の心配
いずれにせよ、「グアム先行移転」と「岩国基地への移転打診」が投げかけた波紋が、きわめて気になる。辺野古移設に依然こだわる日米両政府、国外・県外移設にこだわる沖縄……。この構図が一層強まれば、「普天間飛行場固定化」につながる心配が募ってくる。果たして13日に発表するという日米実務者会議の結論に、ドラステティックな〝政治決断〟を期待できるだろうか。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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