大飯原発ストレステストと再稼働
- 2012年 2月 16日
- 時代をみる
- 池田龍夫
経済産業省原子力安全・保安院は2月13日、関西電力大飯原発3、4号機再稼働に向けたストレステスト(耐性評価)の1次評価を「妥当」とする審査書をまとめ、内閣府の安全委委員会に報告した。
原子力安全・保安院が耐性審査書
保安院側は、「想定の1・8倍の地震、高さ11・4㍍の津波が来ても十分防御できる。電源車や消防ポンプ配備などの安全措置がとられていることも確認した」と主張。「保安院の基準はIAEAの安全規制とも符合する」と報告した。
斑目春樹・安全委員会委員長は、この「審査書」確認のため、安全委員5人と原子力工学などが専門の外部有識者6人で構成する検討会で協議することを明らかにした。「原子力安全・保安院」は、4月から経済産業省から切り離されて、「原子力規制庁」に衣がえすることになっており、組織変更前の3月中に「大飯原発再稼働」にメドをつけておきたいと、斑目委員長は考えていると推察される。
審査メンバーの一部から批判も
1月18日に開かれた初審査会は、傍聴人を排除しての「密室審議」で混乱したことを各メディアが大きく報じ、当「メディアウォッチ」欄でも指摘したが、今後まだ一波乱ありそうな気がする。
先月の審査会では、後藤政志・芝浦工大非常勤講師(元東芝・原子炉設計技士)と井野博満・東大名誉教授(金属材料工学)の2人が鋭く問題点を指摘した。会議傍聴をめぐっても混乱し、「公開討論」の要求が認められなかったため途中退席するなど、審査会運営の拙劣さを世間にさらしてしまった。この論客2人は電力会社が昨年末の提出期限だった報告書を出していない点などを挙げ、「保安院の審査書提出に反対する」との声明まで出している。
地元民の説得が大変だろう
藤村修官房長官は13日の会見で、「地元・福井県おおい町に対し、政府が全面に立って安全対策などを丁寧に説明し、理解を得るべく努力していく」と述べている。いずれにせよ、安全委の最終審査が3月中に終われば、藤村官房長官を含めた3閣僚と野田佳彦首相が〝最終判断〟するだろうが、再稼働への道はなお険しそうだ。たとえ首長らが受け入れても、住民の説得は容易でないからだ。
4月発足の「原子力規制庁」の初仕事にしたら?
「3・11事故」を教訓に、原子力政策の点検・監督を強化するため「原子力規制庁」が4月1日から発足する。「大飯原発」が、停止点検中原発〝再稼働〟のモデルケースであるだけに、拙速認可だけは避けてほしい。あと1カ月余、役所も審査会も組織・人事を一新したうえで、厳正公正な「原発再稼働の審査」ができるよう強く要望したい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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