北朝鮮のミサイル発射予告の波紋
- 2012年 4月 4日
- 時代をみる
- 池田龍夫
北朝鮮の「衛星」打ち上げと称するミサイル発射予告に備え、防衛省・自衛隊は、沖縄県先島諸島への地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC3)部隊派遣を決定。4月1日、海自呉基地からPAC3を積み込んだ輸送船が出港した。
石垣島周辺にPAC3とSM3を配備
沖縄本島には陸自部隊が常駐しているが、北朝鮮の衛星が通過するコースの先島諸島は無防備のため、急きょPAC3配備に踏み切った。海自は海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦を日本海に1隻、東シナ海に2隻展開、海・陸から不測の事態に備えるという。
ミサイル発射から10分程度で日本上空を通過するといわれ、ミサイル防衛(MD)は極めて難しく、その実効性を疑問視する声も強い。自衛隊は、米軍の早期警戒衛星が捉える情報に頼らざるを得ず、在日米軍との緊密な連携が必要になってくる。ただ、迎撃に成功しても部品の落下軌道を捉えるのは難しいという。仲井真弘多知事は「適正規模の派遣を要請した」というが、自衛隊の規模は過大ではないだろうか。北朝鮮の不穏な動きを警戒する必要は認めるが、これとは別に防衛省は中国を意識した南西諸島防衛の沿岸警備隊配備を計画している。
南西諸島への自衛隊常駐を計画
毎日新聞3月31日付夕刊によると、陸自幹部は「今回のPAC3派遣は、南西諸島防衛とは関係ない」と説明しているものの、沖縄県民からは「部隊配置の実績作りを狙っているんだろう。必要以上の隊員を送ろうとする動きに釘を刺す必要がある」「何百人も来るほどなのか.。これを機に一気に部隊配備を進めることはやめてほしい」等々、軍事基地拡大を懸念する声が上がっている。
韓国もミサイル防衛網拡大へ
産経新聞 3月23日付特派員電が、「米韓ミサイル指針によって、現在300㌔に制限されている韓国軍の弾道ミサイルの射程が延長される見通しであることが22日分かった。韓国の李明博大統領が韓国紙・東亜日報などとの会見で明らかにした。今後の米韓協議で合意する方向だという」と報じていた。これまでの協議で改正に慎重だった米側が、弾道ミサイル発射とみられる北朝鮮の発射予告を契機に態度を変えた形だ。李大統領は会見で北朝鮮側の発射予告を念頭に、射程延長の必要性を強調、「今や現実と条件が変わった」と断言した。北朝鮮は射程約1300㌔の中距離弾道ミサイルを実戦配備していると伝えられているが、韓国軍の300㌔射程では対抗できないとの声が韓国内で高まっていた。
ミサイル発射をめぐって朝鮮半島情勢の緊迫が懸念されるが、北朝鮮ミサイル過大視して、不安感を煽ってはならない。一触即発のように過剰な〝危機意識〟を喧伝することは慎んでもらいたい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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