インド弾道ミサイル実験は許せるのか
- 2012年 4月 23日
- 時代をみる
- 池田龍夫
軍備の近代化を進めているインドは、4月19日、中国の全土を射程に収める新型弾道ミサイル発射実験に成功した。これより先、北朝鮮のミサイル発射実験予告に国際的非難が集まっていたが、13日の発射は失敗に終わった。ミサイル実験は憂慮すべきことに違いないが、インド実験への国際的関心は極めて乏しい。端的に推察すれば、〝ならず者国家〟北朝鮮と自由主義陣営のインドとは訳が違う、ということなのだろう。しかし、NPT条約(核拡散防止条約)に加盟していないインドの勝手な核政策を放置することはできない。
「ミサイル大国の仲間入りを果たした」と絶賛
インド国防省は、新型ミサイル「アグニ5」が目標地点に着弾し、実験は成功したと発表。射程5000㌔の能力を持ち、インド初のICBM(大陸間弾道ミサイル)と位置付けられており、実際に配備されれば中国の全土を含むアジアのほぼ全域を射程に収めることになるわけで、シン首相をはじめインドのメディアも「インドがミサイル大国の仲間入りを果たした」などと大きく伝えている。
インドは1974年に核実験を強行、98年再実験に踏み切ったため、国際社会から制裁を受けた。しかし、10年後に不問に付されてしまった。米国がインドと原子力協定を結び、本来は禁輸対象国だったインドに核関連技術や機材を提供したのである。英国、フランス、ロシアも続き、インドの原発市場は核保有国による受注争奪戦の様相を呈している。こうした現状から推察すれば、北朝鮮への厳しい姿勢に比べ、その〝寛容〟ぶりが推察できる。
安保理は毅然と自制を促すべきだ
琉球新報4月22日付 社説がいち早く問題点を指摘していた。「衛星と称してミサイルを発射した北朝鮮と違い、インドは『大陸間弾道ミサイル』と明言している。国連安保理事会は対北朝鮮と同様に、インドに対しても発射実験の自制を促す毅然たる姿勢を示すべきだ。インドは核拡散防止条約に加盟せず、核開発を続け、核の運搬手段になるミサイル発射実験を繰り返す。中国との国境画定問題、パキスタンとカシミール地方領有権で争う中、ミサイル発射実験は新たな緊張を生み出しかねない。安保理の議論を主導する常任理事国にインドをたしなめる姿勢が見えない。背景には、今後20間で1000億ドル(8兆5000億円)といわれるインドの原発市場への参入など各国の思惑が見える。……日本とインドは昨年12月、原子力協定交渉再開へ動き出した。しかし、原発事故で国内外の不信を招いている日本の対応としては、甚だ疑問だ。率先して行うべきことは『核なき世界』に向け、軍事でも民生でも『非核』を貫くことではないか。唯一の被爆国、原発事故を起こした国として、国際社会での役割を自覚すべきだ」――との指摘に共感した。
琉球新報以外では、22日付「赤旗」も安保理の対応を批判、「インドの核兵器保有は、パキスタンの核兵器開発を招いた。先制攻撃はしないと防衛的であることを強調してみても、核兵器保有を正当化することは核兵器の拡散を誘発し、世界をいっそう危うくするものだ」と警告していた。
北朝鮮やイランに厳しい姿勢を取りながら、インドは容認する。ミサイルや核を他国に拡散した疑いのある北朝鮮とは同列に論じられない面はある。だが、大国が商業主義や自国の事情で二重基準を設けては、NPTをさらに形骸化させかねない。大国のエゴと言わざるを得ないのである。
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