国会事故調査委員会、東電会長の無責任発言に驚く
- 2012年 5月 16日
- 時代をみる
- 池田龍夫
国会の東京電力福島第一原発事故調査委員会(黒川清委員長)は5月14日、参議院会館で第12回会合を開き、勝俣恒久・東電会長から参考人聴取を行った。勝俣氏は東京電力のトップとして、2002年10月から社長、08年2月から会長を務め、05年6月 から2008年6月までの3年間は電気事業連合会長の要職にあった。〝電力業界のドン〟の勝俣氏は、事故原因のポイントについて「知らぬ存ぜぬ」を繰り返すばかり。午後6時から3時間に及ぶ質疑を傍聴して、余りにも倣岸・無責任な姿勢に驚かされた。
「電力事業者」として、お粗末過ぎる
午後9時半からの記者会見に臨んだ黒川委員長は、「原子力を担う巨大な電力会社の経営トップとしての覚悟があったかどうか…」との感慨を率直に語った。黒川委員長が指摘した問題点を踏まえ、当夜の質疑のポイントを報告したい。
①原子力事業者としての責任と当事者意識=勝俣氏は「原子力発電所の安全に関する一義的な責任は電力事業者」と述べる一方、「現場の判断を優先すべきだが、総理が対策本部長だったから止むを得なかった」と発言した。これは、3・11事故直後に菅直人首相(当時)が現場を視察し、吉田昌郎所長(同)らが対応に追われ、視察後にも携帯電話で吉田氏に問い合わせをしたことを批判したもので、「現場責任者が指揮すべき緊急時の対応を遅らせた」との発言は他人事のようだ。勝俣氏は事故当時中国旅行中で、清水正孝社長(当時)も東京を離れており、「会長、社長不在」という失態には「止むを得なかった」と言い逃れるだけで、原子力を扱う組織としての責任と覚悟の欠如には呆れた。
② 津波に関する重要なポイント=原子力安全・保安院が2006年、スマトラ沖大地震・津波を教訓にシビアアクシデント対策を打ち出したにもかかわらず、電気事業連合会の抵抗により対策が実現されなかった。「保安院が『電源喪失が起こり得る』と東電社員に伝えたのをご存じか?」との追及に対し、「存じません。(原子力事業)本部長どまりだったことは今後の課題です」と、逃げの答弁に終始。事故の原因については、「事故については東京電力自らも検証中である」と発言したものの、想定外の津波が主原因との主張を改めなかった。想定を超える津波のリスクについて、勝俣会長は「そのような津波は起こり得ない」判断して対策を指示しなかったことを白状せざるを得なかった。
③ 規制に関する問題点=無責任な弁明に終始した勝俣証言に不満は残るが、耐震バックチェック、シビアアクシデント対策などの対応を怠っていた責任が洗い出された意義は大きい。目先の企業利益に走って、安全対策をサボった社会的責任は大きい。今回の質疑を通じて、電気事業連合会のロビー活動の行き過ぎも明らかになり、原子力を担う巨大な電力会社の経営トップとしての責任と覚悟がなかったことに唖然とさせられた。
独立性の高い「原子力規制庁」発足を急げ
国会事故調は6月に最終報告を出す予定だが、関係者の証言収集をさらに進めてもらいたい。併せて、原子力行政を監視するため独立性の高い「原子力規制庁」設置を目指すことを切に望みたい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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