文化とデジタルをめぐるトレンド【2013年初め】
- 2013年 1月 25日
- 評論・紹介・意見
- 木村洋平本電子媒体音楽
本と音楽をめぐる状況は、新しい時代へとシフトしているさなか。
電子機器も、タブレットの登場で光景が変わりつつあります。
そんな業界のトレンド(動向、流行)を思いつくままにまとめてみました。
・単行本よりも文庫本が主力商品になる。
背景:いままでは、本屋さんというと単行本を目に付きやすいところに配置していました。とくに、小説の新作は、まず単行本として出され、しばらく経ってから文庫化されていました。それが、「重い」「高い」という単行本離れのムードのなかで、「軽い」「小さい」「安い」文庫本へ、購買がシフトしています。これからの本屋さんは文庫が主力商品になりそう。
ちなみに、ゼロ年代のトレンドとしては、新書ブームがありました。老舗の新書以外に、いろんな出版社が新書を出したため、いまでは飽和状態の感があります。
・電子書籍ブームはもう少し、火がつくまでに時間がかかりそう。
背景:日本の出版にかかわる制度が、アメリカとは異なるため、Amazonの進出も摩擦が大きいようですし、Appleも日本語版のサービス提供に踏み切っていません。また、日本発の電子書籍(とリーダー)も大差のない出だしで、いずれのサービスにしても電子で買える本の数が少なすぎます……。日本特有の制度(書籍の再版制度ほか)や慣習がはばんでいる部分も大きいのかな、と。そういうわけで、電子書籍ブームに火がつくのは、もう少し先(2,3年はかかる?)でしょう。
・仕事ではノートパソコン、家庭ではタブレットという棲み分けが進む。
背景:デスクトップPCは、売れなくなっています。開発側も、控え気味。20インチを超える巨大なディスプレイくらいしか、売れるポイントがない模様。それは、ゼロ年代のうちに、ノートパソコンが十分に高性能になったからです。そして、そのノートパソコンの市場は、ここ1,2年でタブレットにシェアを奪われている段階です。子供が遊んだり、リビングでネットを見るくらいなら、タブレットの方がすぐれているでしょう。
けれども、ノートパソコンの需要は、一定以下にはならないはずです。タブレットは、家庭では多機能で楽しいけれども、仕事では依然として「パソコン」が必要だからです。そうなると、仕事の主役はノートパソコン、家庭の主役はタブレット、というところに落ち着くのではないでしょうか。
・音楽販売は、ゆっくりと配信がメインになってゆく。
背景:アメリカでは、音楽配信のiTunes Storeが、音楽販売の主力になってきました。ところが、日本ではいまだ配信が主力にならない。それは、1.TSUTAYAやゲオといった低価格レンタルの市場が根強くあるから。2.YouTubeで無料で聴ける音楽だけで十分、という人たちが多いから。(ふたつ目の理由は、日本だけの事情ではありませんが……。)そもそも音楽の聴き方が、これらを主流としているのですね。
これは(電子書籍のときと同じように)構造的な問題なので、転換は時間がかかりそうです。ちなみに、2000年頃から、CD販売も不振が続いていて、こちらの回復は見込めなさそうです。このままでは、音楽業界全体が縮小し、先細りしていく、と思われます。打開策はよくわかりません。LIVEの売り上げは、微増が続いていますので、LIVE文化が業界を下支えするでしょう。
ただし、配信が「販売」の中心になる動きは、ゆっくりと続くと思います。(「聴き方」の中心になるかどうかは、わからず。)レコチョクのスマートフォン向け定額配信(月額980円)も始まりますし、やっと大型の国産サービスですね。iTunes Store
もJ-POPの品揃えを増やしました。今後、おそらく数年かけてCDから配信へ、販売のメインは変わっていくのではないでしょうか。
・オーディオは、ワイヤレスが主流になっていく。
背景:スピーカーやイヤホン、ヘッドホンといったオーディオ機器、そしてプレイヤーの本体までもが、ワイヤレス主流になりつつあります。
ひとつの理由は、Bluetoothと、無線LANを利用した技術の進歩によって、音楽を音源(スマートフォンやパソコン内のデータ)から「飛ばして」、スピーカーやプレイヤーから流すことが容易になったからです。この「聴くスタイル」は、ワイヤレス製品の多様化と低価格化が、確実に後押ししています。
もうひとつの理由は、音源がそもそも、物理的な媒体(CDやDVDなど)でなくなってきていることです。YouTubeであったり、パソコンに取り込んだデータだったりするので、「一度、物理的な媒体を読み込んで」というステップが不要になっています。この傾向が、ワイヤレス環境の構築にとって、追い風になります。
ほかにも、思いつきそうですが、長さもきりが良いので、今回はこのあたりで終わりたいと思います。
2013.1.24.
初出:ブログ【珈琲ブレイク】http://idea-writer.blogspot.jp/2013/01/2013.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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