パロディ:「腰ぬけ政治家に、ゴーマンかましてよかですか?」
- 2013年 6月 19日
- 評論・紹介・意見
- アメリカ政治家盛田常夫
ワシが常日頃指摘しているように、今の日本の政治家はみんな腰ぬけだ。アメリカのご機嫌伺いしている奴ばかりだ。人気におぼれた橋下も、アメリカの反撃を食って全面降伏の有様だ。白痴番組が氾濫している日本のテレビで人気があることなど、日本の外で何の価値もない。もっとも、ワシがAKB48に嵌(はま)っていることを批判する奴もいるが、それはワシの政治信条とは関係ない。橋下などは世界を知らない典型的な内弁慶だ。だから、ちょっと国外から批判を食らうと、すぐに白旗を上げてしまう。口は軽いが、信念がない。これでは、尻尾を巻いてアメリカから逃げ帰った鳩と同類だ。どいつもこいつも、大言壮語の打ち上げ花火だけは威勢が良いが、アメリカの前では「蛇に睨まれた蛙」だ。こんな腰ぬけ政治家に、ゴーマンかましてよかですか?
TPP参加、集団的自衛権、普天間移転の合意実行など、抱えきれないほどの手土産を持って訪米したのに、安倍はオバマにコケにされた。安倍は最初からまともな交渉相手とは見做(みな)されていなかった。鳩が日米関係を壊したから冷淡に扱われたなどと、責任転嫁してはいけない。オバマにとって、鳩も安倍も大差ない。訪米で点数を上げたい、という安倍の魂胆が見透かされただけのことだ。アメリカに良かれと思うものをすべて差し出して漸く決まった訪米だ。最初からアメリカに全面的に譲歩して、事務方の事前折衝で作り上げた作文を読んで、大きな成果があったとは笑止千万。「対等に議論できないなら、訪米は不要」と言える度量がなくてアメリカと交渉できるはずがない。もっとも、小心者の安倍にそんなことを期待できるはずもないが。
これで「日米同盟」など、ちゃんちゃら可笑しい。同盟は対等な関係があって初めて成り立つものだ。軍事主権をアメリカに奪われている日本が、同盟というのはおこがましい。アメリカにとって、日本は属国の域を出ない。属国のくせに、集団的自衛権行使など主張する魂胆がアメリカから見透かされている。アメリカは、尖閣問題で軍事介入する気など一片たりとも持ち合わせていない。オバマの冷遇が意味するところは、「やっかいな問題を持って来るな」ということだ。日本の集団的自衛権など、アメリカにとってもどうでもよい。ヴェトナム戦争でもイラク戦争でも、日本はアメリカの手下として十分に機能した。アメリカにはそれで十分だ。今さら集団的自衛権を振りかざして、「中国の脅威に、ともに闘いましょう」など、アメリカにとっては迷惑千万な話だ。そんなことも分からず、アメリカに尻尾を振る“日本犬”にはおざなりの対応で十分だ、と最初から見下されている。こういう屈辱を屈辱と思わない日本の政治家は腰ぬけだ。不平等関係を「同盟」と読み替える政治家や官僚は愚の骨頂である。
見るがよい。習近平を迎え入れるオバマ政権の意気込みを。大国だからというだけではない。自立した独立国として、アメリカと対等に向き合える国だからだ。日本の政治家どもよ、世界の現実を直視せよ。ゴーマンかましてよかですか?
民主党も鳩がやるというから仕方がなかったのだろうが、対米交渉を鳩一人に任せた無責任が、民主党という政党のすべてを語っている。小沢などは威勢のいいことを言いながら、実際の交渉になると、「政府がやることに党は口を挟まない」などと逃げ回り、腹の据わっていない鳩に任せてしまった。本気に沖縄を考えるなら、なぜ党として正々堂々と「日米合意の白紙撤回」を主張できなかったのか。谷亮子じゃあるまいし、何が「最低でも県外」だ。外交は「坊ちゃん政治家」の遊びじゃない。米軍の撤退に関わる、国の将来を決める問題だ。党の存亡をかけて取り組む課題だったはずだ。
だいたい、民主党の幹部には国家的信念がない。だから、鳩がメディアから批判の嵐を受けると、菅が馬鹿丸出しに、鳩にアドヴァイスした。「良い考えがある。消費税問題を持ち出して国民の目をそらしたらよい」と。これが民主党幹部の沖縄問題の認識だ。情けない。菅にとって、沖縄問題は消費税引上げと同程度の政策課題なのだ。国家として沖縄問題をどう考えるのかという視点がゼロ。民主党はこういう腰軽連中でできあがった政党だ。だから、いとも簡単にこっちが駄目なら、こんどはあっちとなる。たいした議論もなく、日米合意への回帰、消費税増税、TPP参加へかじ取りできる理由だ。
日米関係の基本問題は何か。最大の問題は無期限の米軍駐留だ。平和条約を結んだのに、米軍駐留に期限がない。これほどの屈辱があるか。少なくとも、平和条約を結んだ政治家は、遅くない時期に米軍が日本から完全撤退すると考え、そのために努力もした。しかし、安保条約締結以後の日本の政治家は、米軍駐留問題の議論をタブー化してきた。それどころか、あたかも米軍駐留問題がなくなったかのように、「日米同盟」という綺麗な文句で駐留という実態を意図的に隠蔽(いんぺい)し、戦後軍事占領の事実上の継続を見逃してきた。これでは強姦されたのに、「合意でした」と言っているのと同じだ。
だいたい、普天間基地を国内移転するという発想そのものが、基地の存続を前提にした後ろ向きの交渉だ。無垢の美しい海に、グロテスクな空軍基地を新設することに何の痛みも感じないのか。この交渉を担った橋本は、「この移転を勝ち取るのにどれほど汗水流したか」と自負したが、こんなものは交渉の成果のうちに入らない。日本の費用でより効率的な代替基地が建設されるなら、アメリカにとって異論などあるはずがない。腰ぬけ政治家には基地撤廃ではなく、基地の移設が目一杯の交渉なのだ。最初から駐留を前提にした移転交渉など、交渉の部類に入らない。辺野古移転の手柄話は、基地撤去という発想がない自民党の自画自賛にすぎない。
いったい、日本のアメリカ軍は何時まで日本に駐留するのか、何時になったら日本から撤退するのか。この日本の真の自立にかかわる大問題を誰も語らなくなった。国家主権の枢要をなす軍事主権をアメリカに握られているにもかかわらず、従属的日米関係を「日米同盟」と読み替える惰性に流れる政治がだらだらと続いている。この腰ぬけ政治が続く限り、対米交渉で堂々と渡り合うことなどできるはずがない。政府も政治家もしっかりしろ。ゴーマンかましてよかですか?
鳩が日米関係を壊したのではない。鳩の前も鳩の後も、日本の政治家は大同小異。アメリカと太刀打ちできる大物政治家などいない。アメリカは、対米従属の自民党の政治家と違ってアメリカに盾突こうとする政治家が出てきたか、と民主党の出方に身構えていた。ところが、何のことはない、民主党も自民党も同じ穴の狢(むじな)だと即座に見透かされた。さして議論もしないうちに、「考えれば考えるほど、アメリカ軍基地の役割の重要さを認識しました」などと、簡単に尻尾を丸めてしまったから、呆気にとられただけなのだ。鳩を退治するのに、豆鉄砲すら要らなかった。やっぱり、日本の政治家は、だれが首相になっても五十歩百歩と馬鹿にされただけだ。鳩も孤軍奮闘してでもオバマとやり合えば、男を上げ、名声を高めることになったのに、簡単に尻尾を巻いてしまって、政治生命が絶たれた。そのことも分からないほどに、鳩は政治家としての能力に欠ける。
ワシの見立てによれば、日本の政治家がアメリカと正々堂々と向き合わないで、姑息な姿勢で従属しているのは、下手に刃向かうと政治生命が絶たれると直感しているからだ。国家的信念のない日本の政治家にとって、アメリカは鬼門。腹の据わった信念と強靭な論理をもっていなければ、戦後70年にもわたるアメリカの軍事占領に立ち向かうことは敵わない。だが、この問題の解決抜きに、真の日米関係など望むことなどできないが、今の日本には歴史に名を残せる大物政治家がいない。
感情的な民族主義に踊っている「ネット右翼」など論外だが、日本の「右翼」と称する勢力も、民族主義を鼓舞しながらアメリカの軍事占領にはダンマリを決め込んでいる。それどころか、軍事占領を合理化するために、中国や北朝鮮の脅威を煽りたてるばかりだ。これが偏狭な民族主義の典型だ。こんな出来の悪い右翼が国際舞台で評価されることはないし、まともな交渉相手として扱われることはない。
日米関係を重視すると言い続けている安倍政権が、アメリカ政府から冷淡な扱いを受けるのは、性質の悪い右翼政権ではないかと勘ぐられているからだ。ここが国際関係の複雑なところ。アメリカにとって、性質の悪い右翼政権に偏狭な民族主義的行動を起こしてもらっては困るし、かといって、まともな左翼政権が米軍基地の撤廃を言いだすのも困る。ならばどうするのか。さて、そこが日本の政治課題だ。ゴーマンかましてよかですか?
ワシの「大東亜論」は有象無象の「ネット右翼」が騒ぐような偏狭な民族主義とは質が違う。中国や朝鮮への日本の帝国主義的侵略は「自衛のためだった」などと姑息な論理で書き換えようとするのではなく、それを歴史的事実として真摯に受け止める。ここから出発しなければ、すべてのことは前へ進まない。中国や朝鮮とは、過去の過ちの許しを得て恩讐を越えた新しい関係をとり結ぶのだ。ワシの「大東亜論」は、アジア文明の発祥と発展を支えるアジア諸国と友好関係を築き、アジア固有の価値をともに分かち合って、欧米流の自由主義的合理主義とは一味違う普遍的価値を世界に認識させるところにある。そのためにも、アメリカとは真の対等な立場に立つ必要がある。対等な関係を実現する第一歩は、戦後軍事占領の継続である米軍駐留の完全撤廃である。それが実現すれば、アメリカの軍事行動に自動的に組み込まれることなく、自衛のための最小限の軍事力を保持しつつ、アジアの盟主の一員として自立した政治判断を行う国になることができる。これこそが真の民族主義であり、21世紀の大東亜実現の道だ。こうして初めて、アメリカも日本を対等なパートナーだと認識することになる。
姑息な言動や行動で歴史を書き換えようと取り繕う日本の政治家たちよ。このような行動は百害あって一利なしだ。君たちの進んでいる道は亡国の道だ。まして、天皇制国家復活が「維新」だなどという後ろ向きの姿勢で国家改造しようというアナクロニズムに未来はない。新しい時代の日本には、真に自立した民主主義を基礎にした民族主義が必要だ。ゴーマンかましてよかですか?
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