「憲法96条改正」の危険な動き
- 2013年 6月 19日
- 時代をみる
- 池田龍夫
国際的にも〝右寄り〟と見られている安倍晋三政権は、「自民党改憲草案」(昨年4月発表)を基に憲法改正を企図している。7月の参院選で改憲勢力が伸びれば、戦後60余年守り続けてきた「平和主義」「国民主権」「基本的人権」を大きく歪める改正案が持ち出される公算が強い。
国会発議要件「3分の2」を、「2分の1」にする狙い
憲法第9章(改正)第96条には「この憲法の改正には、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを議決し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と規定されている。自民党政権は先ず、改正発議要件の「総議員の3分の2以上の賛成」を「2分の1」に変えようとしている。
背景に、「9条改正」「国防軍創設」など
「96条問題」と呼ばれる所以だが、その背景に、重大な意図が隠されている。「9条改正」「国防軍創設」「集団的自衛権容認」などで、既に明らかにされている。平和国家の核心条項を、2分の1の賛成で決めてしまおうとする意図を危惧する声が強まってきたのは当然だ。
東京新聞が「検証・自民党改憲――その先に見えるもの」と題する企画を、6月5日付朝刊から6回、第1面に展開した。①海外派兵消えた歯止め②個人の権利より国家③増えた国民の義務④地方と国は対等が後退⑤国旗国歌を義務化⑥権力縛る機能後退――伊藤真弁護士のコメントと現行憲法と自民党案を例示して、問題点を指摘。大胆な紙面展開に、同社の強烈な問題意識を感じ、敬服した。広く国民に読んでもらいたい企画である。
憲法学者・樋口陽一氏らが問題点を指摘
朝日新聞6月11日付夕刊は、「96条の会」の代表、樋口陽一東大・東北大名誉教授にインタビューし「憲法学者の長老を駆り立てたものは何か」を報じた。「憲法96条が国会に厳しい発議要件を課すのは、様々な意見をぶつけ合い、論点が煮詰まる経過を国民に示したうえで、国民投票で誤りない判断をしてもらうためです」と指摘。「個人を尊重せぬ自民草案に危機感を持つ」「『公共の福祉』理念も捨てるのか」「国民は沈黙してはいけない。専門知を持つ市民としての義務感です」と警鐘を鳴らしていた。
この「96条の会」には長谷部崇男,小森陽一、山口二郎、杉田敦氏ら学者が参加しており、14日夜上智大学で「熟議なき憲法改正に抗して」をテーマに講演会が行われた。学者それぞれの指摘は全くその通りで、国民一人一人が関心を持たなければならない。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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