沖縄でも東京でも、当事者の声に耳を傾け、国政転換に!
- 2014年 1月 16日
- 時代をみる
- 加藤哲郎
◆2014.1.15 沖縄で、名護市長選挙が始まりました。年末現地で感じた、自民党地元選出議員への党本部の公約変更強制や仲井真記事の振興予算に目がくらんだ普天間基地辺野古移転容認への、沖縄県民の怒りは持続されているようです。海外からは、ノーム・チョムスキー、オリバー・ストーン、ジョン・ダワー、マイケル・ムーア、リチャード・フォークらが名を連ねる「沖縄への新たな基地建設に反対し、平和と尊厳、人権、環境保護のために闘う県民を支持する」声明が出ています。朝日新聞・沖縄タイムス世論調査は、移設反対派「先行」と報じています。結果は予断を許しませんが、何よりも米軍基地が集中し事故・騒音と治外法権的な位置におかれている沖縄県民の、普天間基地が移転してもその危険と不安がそのまま引き継がれる名護市民の、当事者としての判断を尊重したいと思います。
◆東京では、ふたたび都知事選挙です。オリンピック招致にあたって、安倍首相が世界に対して、福島原発事故を「The situation is under control(状況はコントロール下にある)」「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」と述べたウソのその後をめぐって、「脱原発」「原発ゼロ」「再稼働反対」が大きな争点になってきました。早速政府のエネルギー基本計画決定は2月以降に先送りされたとのことで、国政のうえからも、歓迎すべきことです。もとより福島原発事故の直接の被害者は、今なお14万人が避難している原子炉周辺の住民だった人々です。しかし、東京都が大株主の東京電力の原発メルトダウン事故であり、東京都民はその最大の消費者・受益者であったということでは、重要な「ステークホルダー」、当事者です。韓国やオーストラリア、メキシコなみの経済力を持つ東京で、国の原発政策に対してノーを言えるかどうかが、問われます。私は年末に公刊した『日本の社会主義ーー原爆反対・原発推進の論理』(岩波現代全書)のなかで、(1)労働力を摩滅・破壊する放射線被曝労働の不可避、(2)絶対安全はありえない巨大なリスクを持つ装置産業で、人間の完全制御はありえない、(3)10万年後も残される「未来への暴力」としての核廃棄物、をあげて「核と人類は共存できない」と主張しました。地震列島日本国民全体が当事者であるのみならず、地球と文明そのものが危機にさらされている、という意味です。その観点から、20世紀日本の平和運動・社会主義を見直し、「原子力は、日本の社会主義のアキレス腱だった」と結論づけました。ぜひご笑覧ください。
◆もっとも世論調査では、特定秘密保護法強行でいったんさがった内閣支持率が、安倍首相の靖国神社参拝後に、再び60%に回復するデータが、出ています。特に若い世代で、中国や韓国の批判に反発する、ナショナリスティックな風潮が広がっています。これが集団的自衛権から憲法改正を目指す、安倍政権の右傾化・軍国化の基盤になっています。それには、マス・メディアの責任もありそうです。岸田外相が14日の記者会見で「安倍内閣は村山談話と河野談話を含め、歴代内閣の歴史認識を継承している」と述べたニュースは、いち早く韓国で報道されましたが、日本では見直しを社説で求める産経などの動きもあります。原発についても、読売社説は、東京都知事選の争点にすることを批判しています。東京新聞の都民世論調査で「脱原発を望む有権者は64・8%」と出ていますが、メディアの争点づくり・争点はずし、情報操作はこれからで、投票日まで予断を許しません。報道に携わる人々が、自らが当事者の一人であることを自覚して、特定秘密保護法制定下でも十分可能な、ジャーナリストとしての使命を果たしてほしいものです。原発については、『日本の社会主義ーー原爆反対・原発推進の論理』と共に、昨年春に公刊した本の私の担当分「日本における『原子力の平和利用』の出発」(加藤哲郎・井川充雄編『原子力と冷戦ーー日本とアジアの原発導入』花伝社,2013)も、ご参照ください。「国際歴史探偵 」の方は、1月16日(木)午後、如水会館の新三木会で山本武利さんとジョイントで「ソ連の対日情報戦」の講演、26日(日)午後は、明治大学リバティータワー1153室で大島幹雄さんと「ロシアのサーカス芸人」粛清の講演があります。本年も、本サイトをよろしくお願いします。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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