「アベノリスク」との風評が恐ろしい
- 2014年 3月 12日
- 時代をみる
- 池田龍夫
「今や、アベノミクスではなく、アベノリスク」という新語が流布されている。安部晋三政権の強引過ぎる姿勢を警戒する声が次第に高まってきた現象と思われる。
そもそも、安部首相が昨年の五輪招致委員会で語った「福島事故の汚染水はアンダーコントロールされている」との〝虚言〟が、発火点になっているようだ。さらに改憲・集団的自衛権容認、特定秘密防止保護法の強行可決、原発再稼動を目論む新エネルギー政策など矢継ぎ早の独断的政策に、国民が疑念を感じ始めたと推察できる。
事故から3年たっても、破壊されたままの現場
福島事故処理は、汚染水をいかに食い止めるかが焦点。制御どころの話ではなく、拡大の様相を呈してきた。高濃度放射能のため長時間の作業はできず、今後50年もかかると言われる「廃炉」見通しなど、論議できる状況では全くない。
2014年3月11日は事故からまる3年。破壊され尽くした現場の爪あとはいぜん生々しい。毎日新聞が単独取材、3月5日付朝刊に報じた。
使用済み核燃料取り出しの難作業
「4日,原子力規制委パトロール官と4号機原子力建屋へ。昨年11月から使用済み核燃料の作業を見守った。水面から約12㍍下にある燃料棒をクレーンで1本ずつ抜き取る作業だ。4日までに回収されたのは418体。総量1538体の5割にも満たず、神経をすり減らす回収作業は年末まで続くという。汚染水タンクの組立作業も視察した。第1原発では先月、ボルトで締め付けるタンクから100㌧が漏れる事故があったばかりだった。(中略)約5時間の取材を終えて、線量計を見ると累積51ミリシーベルトだった。帰還困難区域の約2倍に当たる」との報告に肝を潰した。
地元の福島民報や河北新報は連日、汚染水対策などを詳報しており、遅々として進まない東電の対応の拙劣さに批判が高まっている。「東電に当事者能力ナシ。日航と同じように破綻処理し、国が積極的に収拾に乗り出せ」との提言が有識者から上がっているのに東電任せに終始する政府に、ドラスティックな対応を求めることは、所詮ムリなのだろうか。
政府、国会の無責任さに呆れる
無責任な政府与党だけでなく、国会審議の形骸化も酷すぎないか‥。こんな折、福島原発事故調の黒川清・元委員長(元日本学術会議議長、元東大医学部教授)の「国会が役割を果たせ」との鋭い指摘に注目した。「2012年7月、国会に『人災事故』との調査報告書を提出。『規制当局の監視』『未解明の事故原因を究明するため独立調査委員会の活用』など国会に7つの提言をした。国会による独立した調査は、憲政史上で初めての試み。国会の下で行なわれた調査や提言を政府が尊重するという民主制度の国では当たり前の三権分立が、日本では機能していない。事故後3年たっても状況は変わっていない」(毎日新聞3月8日付朝刊・再生への提言要旨)――。事故から立ち直り、国家の信頼を取り戻すため、この提言の意味はズシリと重い。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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