原発再稼働、もんじゅに執着する「新エネ計画」
- 2014年 4月 7日
- 時代をみる
- 池田龍夫
政府は4月11日にも「エネルギー基本計画」を閣議決定する見通しだ。世論を気にした自民、公明両党は4月3日、政府原案の修正合意に漕ぎつけたものの、原発再稼働、核燃料サイクルなどは見直さないとの原案の柱は温存されたままだ。
最終案と政府原案の主要点を精査したところ、「原発の位置づけ」については「エネルギー需給の安定に寄与する、重要なベースロード電源」との表現を、「ベースロード電源として、原子力のほかに地熱、水力、石炭も加える」と変更。増殖炉もんじゅに関しては「徹底的な調査を行う。研究成果の取りまとめを目指し、克服すべき課題を検討」と記されていた原案を、「核廃棄物の減容や核不拡散関連技術等の向上の国際的研究拠点と位置づける」と修正。高速増殖炉を「核のゴミ減要路」(高速炉)と言い換え、もんじゅ〝延命〟を図っていることなどを確認できた。平たく言えば、「原発も核燃料サイクルも止めない」ということで、原子力規制委のお墨付きをもらった原発は再稼動させる」とのエネルギー政策と言えよう。
「言葉遊び」の印象拭えず
毎日新聞4月4日付朝刊は、「そもそも高速炉と高速増殖炉は原子炉自体ほぼ同じで、中に入れる燃料が異なるだけ。高速炉に看板を書き替えたとしても、後に高速増殖炉として使うことも可能だ。元原子力学者は『ただの言葉遊び。全くの欺瞞だ』と、もんじゅ延命を批判した」とコメントしていたが、まさにその通り。事故続きに終始している〝カネ食いもんじゅ〟をストップさせるのが筋ではないのか。
公明党・斉藤エネルギー政策委員会顧問は「大変、苦労したけれども、調和の取れた結果になったのではないか」と自画自賛していたが、原発再稼動を重視する経産省幹部は「経済への影響を考えれば、再生エネの高い数値目標を掲げるのは控えるべきだ」と冷かに語っていた。原発再稼動路線へ突っ走る安倍政権を後押ししていることが、見え見えではないか。
函館市が「大間原発建設中止」を求め、国と原燃を提訴
電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原発ついて、津軽海峡対岸に位置する北海道函館市は4月3日、同社と国を相手取って、建設差し止めや原子炉設置許可の無効確認などを求める訴訟を東京地裁に起こした。国の新防災基準に照らして違法として差し止め訴訟に踏み切ったもので、自治体として初の提訴である。大間原発は安全対策を強化した新規性基準の審査を受けておらず、旧基準に基づく設置許可は違法と主張。工藤寿樹・函館市長は記者会見で、「事故が起きると地域が崩壊してしまう。防災計画が義務づけられている危険地域なのに、まともに相手にされていない。安全が二の次なのは明らかで 原発に真剣に向き合っていく」と、自治体が原告になることの意義を強調した。
北海道新聞4月4日付朝刊が「司法の姿勢も厳しく問われる。 事故の危険性などを司法はどう評価し、何をすべきか。3年前の東京電力福島第1原発事故の経験を踏まえ、審理の在り方や判断の枠組みを変える必要がある。地域を危険にさらしてはならない。(中略)原発は函館から最短で23㌔の距離にある。全炉心でプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使う商業炉は世界初だ。毒性が特に強いプルトニウムを多く含み、事故の被害は想像を絶する。(中略)北海道泊原発をはじめ、各地で住民らが廃炉などを求める訴訟を起こしている。生存権や財産権など憲法が保障する国民の権利を原発が脅かすことは疑いようがない。この現実を司法は知るべきだ」と、函館市の提訴にエールを送る社説を掲げていた。
以上、原発がらみの二つのケースを考察したが、安倍晋三政権には福島原発事故の反省に立って、政策を見直す姿勢が欠落していることを痛感させられた。野党や自治体、有識者らが問題提起しても〝聞く耳を持たぬ〟政治姿勢で押し切るようでは、国民主権の侵害甚だしいと指摘せざるを得ない。
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