沖縄統一地方選挙の結果に注目せよ -知事選・基地問題への影響は?-
- 2014年 9月 4日
- 時代をみる
- 宮里政充沖縄
名護、沖縄、宜野湾、南城、石垣の5つの市議会議員選挙が8月31日に告示された。開投票は9月7日。この選挙は沖縄県内の統一地方選挙の皮切りとなるもので、引き続き2日には本部町、大宜味村、伊是名村の村長選と6町16村の議員選挙が告示された。7日には竹富町を除く26市町村、14日には伊平屋村、10月5日にはうるま市でそれぞれ投開票されることになっている。
全国的な統一地方選挙は来年の春であるが、沖縄の場合は米占領下の1946年9月に首長・議会選挙が行われたため本土との間に時期のずれが生じたものである。東京新聞は8月31日の記事でこの選挙について「一連の米軍再編や基地負担軽減策に対する県民審判の色彩を帯びる。11月16日開投票の知事選にも影響は確実だ」と論評した後「地方選は地縁・血縁が重視され、政策は関係ない」と述べた自民党県連幹部の言葉を紹介し、「予防線を張った」とつけ加えている。
なお、沖縄タイムスは名護市議会議員選挙(定数27人)の立候補者35人に対し、米軍普天間飛行場の返還に伴う同市辺野古への新基地建設に関するアンケートを実施したが、沖縄防衛局が8月18日から始めたボーリング調査について、半数以上の19人が「反対」、4人が「賛成」と答え、仲井間弘多県知事が昨年12月27日に辺野古の埋め立てを承認したことと、辺野古への新基地建設に対しても19人(公明も含む)が「反対」だったと報じている。「反対」が圧倒的多数とは言えないまでも、この結果では先ほどの自民党県連幹部の「予防線」も肯けないでもない。地元の選挙民を馬鹿にした言い方ではあるけれども。
ところで、仲井真知事の辺野古埋め立て容認記者会見以来、県庁前の抗議集会やデモ、米軍キャンプ・シュワブ第1ゲート周辺での県民集会、シュワブ沿岸の海上におけるカヌーによる抗議など、さまざまな反対運動が繰り広げられてきた。だが、安倍政権はこれらの行動にひるむことはあるまい。内閣府は2015年度の沖縄振興予算として3794億円を財務相に概算要求し、8月24日の閣議では2021年度まで毎年3000億円台を確保する方針を表明している。仲井真知事が辺野古新基地建設に舵を切った原因の1つがそこにあるのは確かだが、金をちらつかせ、沖縄の負担軽減(?)を唱えながら建設作業を強行する方法に、沖縄県民はほとほと嫌気がさしているのである。
8月29日、内閣府の後藤田正純副大臣は那覇市内で開かれた会合で、「財政的に厳しい県もある中で、沖縄は羨ましがられている」と述べたそうだが、たとえば、彼の選挙区の徳島県3区に予算をつけて普天間基地の半分でも移設する案を国会に提出したらどうだろうか。選挙民は日本の安全保障のため、県の振興のため喜んで賛成しましょうとなるかどうか。さらに、その提案を日本全国の県民に問うてみてもいい。私は沖縄へ帰郷して高校時代の同級生会に出席したことがあるが、本土から出張してきている役人が「沖縄を甘やかすぎる」とぼやいているのを聞いて「沖縄に甘えているのはお前たち本土の人たちじゃないか」と喧嘩になった話をしていたのを思い出す。
ところで、沖縄に基地が集中しているのは地政学的な必然であるという考えが大勢を占めているように思われる。特に中国や韓国との関係、アジア諸国との位置関係が重要な要素だ。「戦争の抑止力として沖縄の米軍基地は絶対必要だ。だから、我慢しろ。金も出しているのだから」というわけだ。ところが安倍政権とアメリカ政府はむしろ戦争への危機を高めているとしか思えない。事実、辺野古新基地の建設はオスプレイの訓練、ステルス最新鋭戦闘機F35の運用などを含むものであり、普天間基地移設などと単純に呼べるものではなく、むしろ周辺諸国に脅威を与える内容であることが明らかになっている。
8月31日の「沖縄タイムス+プラス」の記事によれば、元アメリカ国防次官補のジョセフ・ナイ氏(現在ハーバード大学教授)が、米オンライン政治誌ハフィントン・ポストの8月7日付への寄稿で、安倍政権の集団的自衛権の行使容認などを評価し、「中国の弾道ミサイルの開発で、沖縄の基地の脆弱性は増している」と指摘し、「航空自衛隊と米空軍が共同使用する三沢空軍基地を例に挙げながら、『長期的な目標は、米国が基地を徐々に日本の管理下に移行し、米軍が各拠点を巡回(ローテーション)配備すること』と主張。米軍基地を自衛隊の管理下にした上で、米軍が自衛隊の基地や施設を自由に使用する形式への移行を提唱している。」
こういう人物がアメリカ政府にどれだけの影響を与え得るかは知らないが、安倍首相としては願ったり叶ったりというところだろう。ナイ氏の考えを進めていけば、いずれ日本が核武装し自衛隊が国防軍となり、徴兵制が導入され、アメリカ軍が仕掛ける戦争には積極的に参加することが実現されることになるからだ。
それは戦争の抑止力などと呼べるものではなく、積極的平和主義でもないことはこれまでアメリカ主導の戦争や殺戮の数々を思い出してみれば、子どもでも分かることだ。(ごく最近、「新外交イニシアティブ(東京、ND)」が旬報社から『虚像の抑止力』を出版した。基地抑止力についての議論が高まることを期待している。)
沖縄県議会の議会運営委員会は8月29日、9月3日に臨時会を開き、野党4会派と公明県民無所属の22人が「辺野古でのボーリング調査等の強行に抗議し、新基地建設工事の即時中止を求める意見書」案を審議する構えである。賛成多数で可決される公算が高いと、沖縄タイムス、琉球新報は伝えている。
さて、沖縄統一地方選の結果はどう出るであろうか。そしてその結果が11月16日に行われる知事選にどう影響するであろうか。安倍政権としてはその結果が出る前に何とか新基地建設工事のピッチを上げたいところだろうが、そうすればするほど自分たちにとって悪い結果を招くことになることを知るべきである。
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