本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(64)
- 2014年 9月 11日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
日本の経常収支
8月8日に発表された「日本の上半期経常収支」については、大きな注意が必要だと考えている。つまり、マスコミでは、「原油や天然ガスの輸入増加が原因だった」と言われているのだが、内容を吟味すると、「製造業の空洞化」という「構造的な問題」が存在するようにも思われるからである。別の言葉では、「クローサーの発展段階説」のとおりに、現在の日本が、「成熟した債権国」から「債権取崩国」へと変化した可能性のことだが、今までの推移をみると、この可能性は高くなっているようである。
具体的には、「戦後の焼け野原」から出発した日本人が、その後、歴史的な高度経済成長期を経て、「世界でも有数の資産」を積み上げたのだが、現在では、「その債権を取り崩す段階」に入ったようである。そして、過去の例を見ると、このような国では、「通貨価値の下落」と「金利上昇」に悩まされることが多くなるのだが、幸いにも、現在の日本は、いまだに、「高い通貨価値」と「低金利」を享受できているのである。
そして、この理由としては、「国民が、依然として、日本の現状に気付いていない」という点が指摘できるとともに、「日銀による、異常なまでの国債買い付け」も挙げられるようだが、この点についても、間もなく、限界点が訪れることになるようだ。つまり、「民間銀行からの短期借入金」により「長期国債」を買い付けるという、いわゆる「異次元の金融緩和」が、現在では、ほとんど、限界点に達したものと思われるからである。
また、根本的な要因としては、「製造業の空洞化」や「日本企業の競争力低下」が挙げられるようだが、実際に、現在の日本は、「海外から、多くの製品を輸入し始めている状況」になっているのである。つまり、かつてのような、「原材料を輸入し、加工して、製品として輸出する」というような「単純な成長モデル」から、現在では、「多くの企業が、海外に進出し、他国の企業と熾烈な競争をしている状態」となっており、この時に、「いろいろな分野で、日本企業が海外の競合相手に後れを取る状況」になっているのである。
つまり、「過去の栄光」を記憶している人々にとっては、あまり、考えたくないような状況になっているのだが、この時に必要なことは、「全盛期の日本」ではなく、「焼け野原の日本」を思い出すことでもあるようだ。別の言葉では、「苦労」を重ねた日本人が、その後、「どのような考え、あるいは、どのような態度で、現在の繁栄を築き上げたのか?」ということだが、この点については、間もなく、本格的な「金利の急騰」が起きた時に、「人々の意識」が大きく変化するものと考えている。(2014.8.14)
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異次元金融緩和の限界点
黒田日銀総裁による「異次元の金融緩和」が始まってから、約1年半が経過したが、「黒田総裁の就任以来、日銀のバランスシートが、どのような変化をしたのか?」を見ると、「恐怖心を抱かざるを得ない状況」とも言えるようである。つまり、「総額」が「約165兆円」から「約273兆円」にまで「約108兆円」も増加し、また、「国債保有残高」は「約125兆円」から「約228兆円」にまで「約103兆円」も増加しているからである。
そして、この時の「資金繰り」を見ると、ほとんどが「当座預金」によって賄われているのだが、具体的には、「約43兆円」から「約151兆円」にまで「約108兆円の増加」となっているのである。つまり、「当座預金」という「民間銀行からの借入金」により、「大量の国債買い付け」が実施されてきたことが理解できるのだが、この結果として、現在では、「約1000兆円もの国債残高」に関して、「2割以上が日銀によって保有されている状況」となっているのである。
また、「日本のGDP」と比較すると、「日銀のバランスシート」は、「50%以上の金額」にまで膨らんでいるのだが、「このような状況は、歴史的に見ても、前代未聞の事態である」とも言えるようである。つまり、今までは、「政府」と「日銀」とが協調することにより、「国債の大量買い」が実施され、その結果として、現在の「超低金利政策」が可能になったようだが、現在の問題点は、「どこまで、このような政策が継続可能なのか?」ということである。
別の言葉では、「日銀が、どのような資金繰りで、どこまで国債を買い続けることができるのか?」ということだが、現在では、この点に関して、「大きな変化」が出始めたようである。具体的には、「6月30日」以降、「当座預金の残高」が、「150兆円強の水準」で「頭打ちの状態」となっているのだが、この時に考えられる理由としては、「民間銀行からの借入が難しくなり始めた可能性」が指摘できるようである。
そして、今後は、「当座預金」に代わり、「紙幣の増刷」が始まる可能性が高まっているが、このような金融政策については、過去に頻繁に行われてきたことであり、実際には、「異次元の金融緩和」と呼べるような代物ではないものと考えている。ただし、これから想定される「金融混乱」については、「異次元の規模」になる可能性が高まっているようだが、最も「異次元な状態」は、現在の「通貨制度」であり、実際には、「影も形もない数字」が、「通貨の根本」になっていることである。(2014.8.14)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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