岩波ブックレット『動かすな、原発。――大飯原発地裁判決からの出発』
- 2014年 10月 12日
- 交流の広場
- chiba
岩波ブックレット 新刊の紹介です。
『動かすな、原発。――大飯原発地裁判決からの出発』
著者 小出裕章, 海渡雄一, 島田広, 中嶌哲演,河合弘之
2014/10/8発売 A5判 64頁 本体520円+税
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/eastds/
豊かな国土とくらしこそ,国富である.――3.11後,唯一再稼働した
「実績」を持つ大飯原発に対し,福井地裁は運転差し止めを命じた.
「原発銀座」と称される福井県で,原発の危険性を訴えてきた原告と
弁護団の声を紹介し,画期的内容を多く含む判決内容と影響を分析する.
格調高い判決要旨を解説付きで全文収録.
<目次>
司法への絶望と希望
――裁判所は3・11に向き合えるか 小出裕章
「原発銀座」の名を返上する日へ 中嶌哲演
「王様は裸だ」
――事実と常識に基づく判決が出されるまで 島田広
司法は生きていた
――動かしようのない事実と論理に裏づけられた判決 海渡雄一
福井地裁判決はどのような影響をもたらすか 河合弘之
大飯原発三,四号機運転差止請求事件・判決要旨
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<編集者からのメッセージ>
https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2709120/top.html
2014年5月21日。福島第一原発の事故のあとに唯一、再稼働をした「実績」
を持つ大飯原発に対して、「動かしてはならない」との運転差し止め判決が出
されました。
判決文は、その末尾で、被告の電力会社の言い分を検討して、次のように述
べています。
〈被告は本件原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張
するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の
高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否
を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。このコス
トの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転
停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失という
べきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国
富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁
判所は考えている。
また、被告は、原子力発電所の稼動がCO2排出削減に資するもので環境面
で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合
の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最
大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継
続の根拠とすることは甚だしい筋違いである。〉
これまで、原発訴訟は数多く提起されてきました。そして、その訴訟のほと
んどにおいて、司法は、原発の抱えるリスクについて独自の判断をせず、運転
の可否を行政判断に任せて自身の判断を回避してきました。その結果として、
3.11福島原発事故は起きたとも言えるでしょう。
福井地裁の裁判官たちは、あまりにすさまじい福島の被害を検討し、原発の
持つ危険性と原告の訴えに真摯に向き合って、この判決を書いたのでしょう。
その内容は法律専門家でなくても理解できる平易な言葉で書かれており、強い
説得力に貫かれています。3.11後、あらためて全国各地で原発の運転差し
止めを求める訴訟が提起されていますが、その最初に出された判決として、こ
の福井地裁判決は歴史的な意味を持つことになるでしょう。
このブックレットでは、この福井地裁判決の持つ意味について、小出裕章さ
んや、弁護団・原告の方々に寄稿していただくとともに、今後の裁判への影響
などを考察します。判決文(要旨)も収録します。
(編集部 熊谷伸一郎)
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