村上春樹、毎日新聞によるインタビューで日本の「自己責任の回避」傾向へ苦言(海外メディアが注目!)Author Murakami Haruki Criticizes Japanese for Evading Responsibility for WWII and Fukushima
- 2014年 11月 5日
- 時代をみる
- 「ピースフィロソフィー」日本の戦争責任村上春樹
11月3日毎日新聞に掲載された作家・村上春樹氏の単独インタビューのことをAFP通信の英語記事(11月4日)で知り、日本人の戦争や福島の核事故についての「責任回避」について強調しているので注目した。AFP記事のタイトルは、
Murakami Haruki |
Author Murakami chides Japan over WWII, Fukushima responsibility
作家のムラカミ、第二次大戦とフクシマへの責任について日本を注意
日本の英字新聞、The Japan Times にも AFP-JIJI 配信ということで
Murakami chides Japan for ignoring role in WWII, Fukushima disaster
ムラカミ、第二次大戦と福島の惨事における役割を無視していると日本に注意
と同様の見出しをつけている。
AFP記事は、
Japanese writer Haruki Murakami has chided his country for shirking responsibility for its World War II aggression and the Fukushima nuclear disaster in an interview published Monday.日本の作家、村上春樹は月曜に発表されたインタビューで、第二次世界大戦における侵略と福島の核惨事について責任回避している、と自国に対する注文をつけた。
で始まり、日本人が自分たちを戦争の『被害者』だと思っていること、それでは中国や韓国が日本の戦時侵略行為に対して恨みを持つのも当然である、日本人は自分たちが加害者でもあったことを忘れがちである、フクシマについても全員が地震と津波の被害者だということになって誰も責任を取っていないといった発言をしていたと知り、これこそ今日本人が耳を傾けるべきメッセージではないかと思い毎日新聞のウェブサイトで探したら、簡単な紹介が出ていた。
村上春樹さん:インタビュー 楽観を目指す姿勢「若者に伝えたい」
http://mainichi.jp/shimen/news/20141103ddm001040190000c.html
この紹介では最後に、「来年で70年となる『戦後』に関連し、慎重な表現ながらも、戦争と原発事故に共通する日本の問題として『自己責任の回避』を指摘した」とあるが、タイトルからして随分異なるイメージだなと思った。原文は紙面でしか見られないというので原文を取り寄せた。毎日新聞11月3日朝刊の8面に特集記事が出ており、本人の文学者としてのヒストリーや海外での評価などについて「『孤絶』超え 理想主義へ」という見出しがついており、ページの左側に別枠で「日本の問題は責任回避」というセクションが設けられていた。インタビュアーの「来年は戦後70年。作中で日本の戦争を描くこともあった作家は何を思うか」という問いに対し、
・・・僕は日本の抱える問題に、共通して「自己責任の回避」があると感じます。45年の終戦に関しても2011年の福島第1原発事故に関しても、誰も本当に責任を取っていない。そういう気がするんです。例えば、終戦後は結局、誰も悪くないということになってしまった。悪かったのは軍閥で、天皇もいいように利用され、国民もみんなだまされて、ひどい目に遭ったと。犠牲者に、被害者になってしまっています。それでは中国の人も、韓国・朝鮮の人も怒りますよね。日本人には自分たちが加害者でもあったという発想が基本的に希薄だし、その傾向はますます強くなっているように思います。原発の問題にしても、誰が加害者であるかということが真剣は追及されていない。もちろん加害者と被害者が入り乱れているということはあるんだけど、このままでいけば「地震と津波が最大の加害者で、あとはみんな被害者だった」みたいなことで収まってしまいかねない。戦争の時と同じように。それが一番心配なことです。
と答えている。毎日新聞は「慎重な表現」としているが私には「慎重」どころか非常に直截的な批判に聞こえる。特に、日本が戦争における加害者であったという発想が希薄であるという傾向が「ますます強くなっている」という部分に注目したい。昨今、朝日新聞の誤報訂正に便乗して日本軍「慰安婦」(性奴隷制度)の歴史自体を塗り替えてしまおうという動きが安倍首相をはじめとする政府、マスコミや一般社会に広範に見られるが、村上氏はこのような動きを念頭に置いてこの発言をしたのではないかと思う。
冒頭のAFP報道はシンガポールを代表する新聞 Strait Times など世界中に発信されており、世界中のメディアから村上氏の「日本の戦争責任回避」発言が注目されている。韓国の中央日報「村上春樹『日本、戦争を起こして責任回避』」の報道はヤフーニュースにも紹介されている。東亜日報は論説文「村上春樹と塩野七生」において、村上春樹の発言を評価し、同じくノーベル賞作家で、日本の加害責任を重視し安倍氏を「憲法への畏れを持たない珍しい人間」と非難した大江健三郎などともに、「過去へ回帰しないよう内部でバランスを取る良心の声がさらに大きくなることを希望する」と論じた。
インタビュー記事全体を見ても、世界的な作家の村上氏が今の日本に対し苦言を呈したという意味ではやはりこの発言の重要度は突出している。「慎重」になっているのは村上氏ではなくこのインタビューの要の部分を日本国内で抑えめに報じている毎日新聞そのものではないかと思う。@PeacePhilosophy
初出:「ピースフィロソフィー」2014.11.05より許可を得て転載
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2014/11/author-murakami-haruki-criticizes.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2807:141105〕
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