アベノミクスとは何だったのか?3
- 2014年 11月 20日
- 交流の広場
- 大野 和美
私の議論の二つめの前提となるのは、現在の資本主義経済についての認識である。私は、様々な留保や前提を付け加える必要を否定しないが、産業革命以来工業が社会・経済の中核となって来ていた事態が1980年代頃から変化しているとみている。特にアメリカ・イギリスでは第三次産業とりわけ金融業が経済の中心になっている。ユーロ加盟国の主要国の中でフランス・イタリア・ドイツ、それに域外の日本は製造業の劣勢の中で金融業が製造業の劣勢を補うような力を持ち得ないでいる。時間が経てば後続のこの諸国が金融業でアメリカ・イギリスに追いつき・凌駕するという事態は生じないと思う。国際通貨ドルの国と長年に築き上げてきた国際金融上の情報網を織り込んだシステム・技術を擁する国であるからこそ製造業に代わって富を生む金融業を展開できたのであろう。フランス・イタリア・日本は言うまでもなく、製造業の優位をまだ維持しているかに見えるドイツさえ、金融面ではイギリス・アメリカの支配下に置かれるのであろう。製造業の面では、最先端技術部門を含めて中国を筆頭に、BRICs諸国に追いつかれ、おい散らかされて行くのであろう。その結果は、アメリカ・イギリスのグローバルな金融業も、すでにこれまでも繰り返してきたような金融バブルを続けることになろう。BRICsが今後いかなる経済システムを発展させるのか私には見通せない。ただ、そのBRICsからの強烈な圧力を受けながら、かつて先進工業諸国と称された高度に発展した資本主義諸国が静かに沈んで行くのではないか?既にこの沈没課程は始まっているのではないか?
この点はさらに詳しく述べねばならないのかもしれない。差し当たり、このような現代資本主義の認識を前提にしてアベノミクスを見て行きたい。
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