【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第2号】 (2015年6月6日)
- 2015年 6月 6日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
集団的自衛権問題研究会では、「安全保障法制」の国会審議がスタートし
たことに伴い、今までの「News&Review」から、速報性重視の発行体制に
転換させていくことにしました。まずは、衆議院特別委員会をウォッチし
て、そのダイジェストを発信していきます。第2号をお送りします。
[転送・転載歓迎/重複失礼]
★なお、衆議院特別委員会の定例日は月、水、金ですが、来週6月8日(月)
の特別委員会質疑は行われません。5日の審議の際の自民党によるヤジ等
に、野党が反発を強めたとも報じられています。8日(月)12時からの理
事懇談会で日程等について協議される予定です。
※衆議院のインターネット中継の録画はこちらから
右側のカレンダー欄の日付をクリックすれば見られます。
→ http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
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<6月5日(金)「安全保障法制」審議ダイジェスト>
◆辻元清美(民主)
「憲法審査会で与党推薦者含めて3人とも集団的自衛権行使は違憲と発言。
どう受け止めたか?」。中谷「政府の人間として立ち入るべきでないが、
それぞれご自分の意見を述べられた」。辻元「非常に深刻な事態と認識
すべき。違憲の法案をこの委員会で審査している」。中谷「現在の憲法、
これをいかにこの法案に適用させていけばいいのかという議論を踏まえて
閣議決定した」。
◆辻元清美(民主)
「自衛隊員の宣誓に『日本国憲法及び法令を遵守し」とあるが、憲法学者
をはじめ世論の半数以上が反対し、違憲との声が多い。宣誓の根幹が揺ら
いでいる。そんな状況で自衛隊員に『命を懸けて他国のために戦え』と言
えるか?」「本法案は一回政府は撤回された方がいい」。
◆辻元清美(民主)
「中谷大臣は著書『右でも左でもない政治~リベラルの旗』(幻冬社、2007
年11月 http://www.gentosha.co.jp/book/b1598.html )で「憲法改正し
なくても解釈で変えれば、との議論あるがすべきでない。これ以上解釈の
幅を広げると、これまでの憲法議論は何だったのかとなる」と素晴らしい
意見を表明されていた」。
◆辻元清美(民主)
「中谷大臣は2013年8月の『なぜ今憲法改正か』との座談会(『ニューリ
ーダー』)で「解釈のテクニックで騙したくない。自分が閣僚として『集
団的自衛権は行使できない』と言った以上は、『本当はできる』とは言え
ません」と述べている。これは昨日の参考人の意見と同じだ。あなたは信
念を変えたのか?」。中谷「裁量の範囲内だ」。
◆辻元清美(民主)
「日本版の集団的自衛権は、国際法上の集団的自衛権と違うのか?」。中
谷「その通りです」。辻元「閣議決定では『国際法上は集団的自衛権が根
拠になる場合がある』と書いている。根拠になるのはどういう場合か?」。
中谷「自国防衛と重ならない集団的自衛権行使は認めていない」。
◆辻元清美(民主)
「(官僚が入れ知恵するのを見て)後ろから行かなくていいですよ!」。
中谷「事前通告なしの質問ですよ」。辻元「通告については、民主党政権
の時に自民党は『通告しないと基本的なことが答えられないのか?』とお
っしゃったではないですか?!」。
◆辻元清美(民主)
「新3要件が満たされた場合でも、集団的自衛権は権利であり義務ではな
いとして、行使しない場合があるか?」。中谷「個別に総合的に判断する
が、3要件が満たされる場合、政府として何もしないとは想定されない」。
辻元「総理は『政策判断で行使しない場合もある』と答弁していた」。
◆辻元清美(民主)
「長谷部先生は『意味を明確にするために解釈するが、今回は解釈を変え
て意味がわからなくなってしまった』と言われている。今までは自国が攻
撃された時、と明確だった」。中谷「武力攻撃切迫事態と存立危機事態の
関係を一概には答えられない」。辻元「その時にならないと分からないの
か?」。
◆大串博志(民主)
この間問題になってきた1998年の高野外務省局長の答弁(「軍事的波及が
ない場合、周辺事態に該当せず」)に関する岸田外相の5月28日の答弁
(当該答弁は維持されているとの趣旨)を撤回するべきだと追及。岸田外
相はかたくなに「撤回」とは言わず、審議が度々止まる。岸田外相は結局
「修正して発言した」と答弁。
◆長島昭久(民主)
「3人の違憲発言に衝撃を受けた。長谷部氏は「法的な安定性を大きく揺
るがす」と発言されたが、法案で法的安定性はどう担保しているか?」。
横畠法制局長官「法案は昭和47年の政府見解を基礎にしたものだが、残念
ながら憲法学者の理解を得られていないと認識」。長島「小林節氏は指導
教授でずっと自衛隊合憲論を唱えていた。最高法規の解釈を行政の長が変
更して結論をひっくり返した。国民は納得しない」。
◆長島昭久(民主)
「存立危機事態がホルムズ海峡だけとの印象が広がりつつあるが誤解だ。
ホルムズはほとんど蓋然性はないが、南シナ海の方がよほど不安定で、存
立危機や重要影響事態が世界のどこより起こりやすい。認定する可能性は
排除しませんね?」。中谷「南シナ海は迂回が可能。3要件に合致すれば
法理論としては可能」。
◆長島昭久(民主)
「警戒監視やアセット防護(有事の前の緊迫した事態での米軍防衛)は重
要影響事態でもできるのか?」。中谷「武力行使と一体化しない形ならで
きる」。長島「米国防次官補や太平洋軍司令官は日本と一緒に南シナ海の
警戒監視ができたらいいと発言している。南シナ海で米軍と一緒に、ある
いは自衛隊のみで警戒監視をやれるか?」。中谷「具体的な計画は有して
いないが、「我が国の防衛に資する」ことが前提」。
◆重徳和彦(維新)
「ホルムズ海峡での機雷掃海は『海外派兵』にあたるのか?」。中谷「海
外派兵の一般的禁止の例外」。重徳「はっきり答弁を」。中谷「海外派兵
にあたります」。重徳「日本国内で『受動的、限定的』と言っても、関係
国が考慮するはずはない。禁止されている海外派兵をやり武力行使を行い、
敵国の武器を破壊することだ」。
◆重徳和彦(維新)
「原油が滞り死活的状況に至る前にあらゆる非軍事的手段をとるべき」。
宮沢経産相「原油の8割がホルムズ海峡を通る。官民併せて169日分の備蓄
がある。天然ガスの約4分の1がホルムズを通るが、気体なので備蓄は不可
能。原油の国家備蓄を100日分増強するのに5兆円ほどかかる。現在、原油
調達先の多角化を進めており、ホルムズ回避が可能な世界屈指のアブダビ
陸上油田の獲得に成功。シェールガスも米国から2016年以降、輸入開始。
ホルムズ海峡の外にパイプラインで運び出すのはサウジアラビア等2本あ
るが、容量が小さく我が国にそう多くは回ってこない。
◆吉村洋文(維新)
「米軍等の武器防護は、今までの自衛隊法で認められている自衛隊の武器
防護とは本質的に違う。外国からの要請に基づき出ていく。憲法に違反し
ない根拠が分からない」。防衛政策局長「現に我が国の防衛に資する活動
を自衛隊とともに行っている他国軍の武器は自衛隊の武器と同視できる」。
吉村「同視するのはあまりにも乱暴な議論だ」。
◆木内孝胤(維新)
「いきなり法制局長官を変えて一内閣で解釈変更したのは、極めて悪しき
前例を作った」「ホルムズ海峡は緊急事態にはならず、事後承認にならな
いとの理解でいいか?」。中谷「事後承認は想定していない」。木内「自
民のチラシには事前事後の話が一切ない。こんな乱暴な説明は国民に不誠
実」「緊急時と判断して事後承認にする場合、その根拠となる情報は特定
秘密にあたるか?」。中谷「現時点でのお答は控える。適切な情報公開は
重要であり、必要な情報は公開する」。
◆赤嶺政賢(共産)
「国際支援法案の第3条「ロ」の決議について。2001年9・11テロを受けて
の国連決議1368号は加盟国に軍事的措置を求めておらず、国連憲章7章に
もふれていない。こうした決議を根拠に日本は軍事的措置をとることがで
きるのか?」。内閣審議官「加盟国に何らかの取り組みを求める国際的正
当性は十分にある」「3条のロは、自衛権または領域国の同意に基づいて
諸外国の軍隊が活動する際に、その国際的な正当性を担保するために設け
た」。
◆赤嶺政賢(共産)
「中谷大臣は2日の参議院外交防衛委員会で、国連決議2170号、2199号は
ISILに対して加盟国に措置をとることを求めており、国際平和支援法案の
ロに規定する決議に該当し得ると答弁した」「軍事的措置を求める規定も
自衛権への言及もないのに、なぜ軍事的措置の根拠にできるのか?」。中
谷「現時点で国際平和支援法案の要件を満たしていると判断しておらず、
判断を行う必要があるとも考えていない」。赤嶺「法案は、米国が国連決
議もなく、個別的、集団的自衛権を口実に一方的に軍事介入を行う場合に
日本が支援するもので極めて重大」。
◆赤嶺政賢(共産)
「日米新ガイドラインについて。平時から緊急事態に至る日米共同計画を
策定、更新するとあるが、対象に「国際テロへの対処」は含まれるか?」。
深山防衛省運用企画局長「共同計画の対象は『日本の平和と安全に関連す
る緊急事態』となっており、それ以上の内容と詳細は、緊急事態における
日米の対応に関わるのでお答えは差し控える」。赤嶺「『これ以上説明で
きない』なら『これ以上審議できません。法案を出し直してこい』となり
ますよ」「ごく常識的な質問に答えられないのはおかしい」。中谷「これ
以上は事柄の性質上差し控えたい」。
◆赤嶺政賢(共産)
「米国は世界各地で無人機攻撃を繰り返している。その根拠が自衛権。こ
うした米国が自衛権で乗り出している事態は重要影響事態に該当するか?」。
黒江防衛政策局長「事態に即して判断する。現在起きている個別事態につ
いて判断していない」。
◆赤嶺政賢(共産)
「法案作成と提出にあたり、国際法違反のイラク戦争を支持し、自衛隊を
派遣して無法な戦争と占領に加担した政府の対応は検証しなかったのか?」。
岸田外相「2012年12月の外務省の検証により、イラク戦争の核心はイラク
が国連決議を守らなかったことにあるとした。改めて検証はしていない」。
赤嶺「戦争加担の責任をとらず民主党政権の検証を追認しているだけ。民
主党政権への批判は凄まじいが、矛盾を感じる」。
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<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
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発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
http://www.sjmk.org/
ツイッター https://twitter.com/shumonken/
※ダイジェストはツイッターでも発信します。ぜひフォローしてください。
<本研究会のご紹介>
http://www.sjmk.org/?page_id=2
◇集団的自衛権問題研究会News & Review
第9号の内容
● 歯止め無き対米支援法制は「国民を守る」か(川崎哲)
● 新「日米ガイドライン」は何を狙うか(吉田遼)
http://www.sjmk.org/?p=130
◇『世界』6月号に当研究会の論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=118
※7月号にも掲載されます。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5393:150606〕
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