【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第6号】 (2015年6月15日)
- 2015年 6月 16日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
本日6月15日の特別委員会の審議ダイジェストをお送りします。砂川判決
や「存立危機事態」の例とされるホルムズ海峡での機雷掃海の問題、自衛
隊員の戦地派遣による精神疾患のリスクなどが議論になりました。
今後の審議日程は、17日(水)の午前9時~12時、休憩をはさんで13時~
14時50分、党首討論をはさんで16時~17時に委員会がセットされています。
質疑者は未定です。
衆議院インターネット中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
※右のカレンダーの日付をクリックして、委員会名をクリックするとアー
カイブも視聴できます。本日の動画も見られます。
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【6月15日(月)「安全保障法制」審議ダイジェスト】
一般質疑(6時間、首相出席なし、NHK中継なし)
◆長島昭久(民主)
「砂川判決は自衛権について判断していないというのは一般常識だ」
横畠法制局長官「(傍論の部分は)厳密な意味での法的効力はないが、そ
れなりの重みがあり、権威ある判断として尊重すべき」「「固有の自衛権」
と言うのみで個別的、集団的の区別をしていないが、自国防衛のための限
定的な集団的自衛権の行使は判決に含まれる」
長島「今回持ち出した砂川判決の法理は後知恵に聞こえる」
◆長島昭久(民主)
「80年代は米ソ冷戦による軍拡競争が激しく、極東を取り巻く軍事情勢は
現在の比ではなかった。それでも政府は憲法解釈を変えなかったのに、な
ぜ今変える必要があるのか?」
岸田外相「我が国へのリスクに質的変化がある。北朝鮮、在外邦人へのテ
ロ、宇宙・サイバーなど」
◆長島昭久(民主)
「法案が理解されない背景に日本国民のトラウマがある。一つは260万人
の同胞を失った悲惨な敗戦。二つ目は政府不信。情報が与えられないまま
戦争にひきづり込まれ、外地で兵士の6~7割が餓死した。これをきちんと
乗り越えるには時間が必要。与野党が相互不信を乗り越えるべきだ」
◆寺田学(民主)
「砂川判決には集団的自衛権の合憲性への言及はあるか?」
中谷「言及はありません」
寺田「言及がないことを集団的自衛権は合憲だという根拠と解釈されるの
か?」
中谷「根拠はあくまで昭和47年(1972年)見解。砂川判決はそれと軌を一
にしている」
◆緒方林太郎(民主)
「個別的自衛権と集団的自衛権を分けて、存立危機事態を緩く、打ち出の
小槌のように使えるようにする。その典型例がホルムズ海峡ではないか?」
中谷「どちらが緩いかは言えない」
緒方「公明党はホルムズの例は不適切としている。閣内不一致ではないか?」
◆後藤祐一(民主)
「正式停戦がなく、その前の段階でも掃海に出せる余地があるのか? 事
実上の停戦の前に、対処基本方針の策定や国会承認を行うことはあるか?」
中谷「法理上は認められるが、停戦前では慎重な判断が必要」
後藤「存立危機事態に当てはまるかを検討したり、国会承認などの手続き
をしている間に派遣が遅れ、途中で停戦が発効して現行法で対応すること
にでもなれば、隊員の士気にも影響する。現行法で出す方が早く対応でき
るのではないか」
◆今井雅人(維新)
「アーミテージレポートに、ホルムズ海峡での機雷掃海を日本はすべき、
と書いてある。アメリカから依頼、要望が来ているのか?」
岸田「要請がどういう形のものか、一度確認しなければならない」
今井「文書で提出してほしい」
◆今井雅人(維新)
「機雷掃海について、日本のように「受動的、制限的」と言っている国は
他にあるのか?」
岸田「国際的に見ても新3要件は極めて厳格な歯止めであり、我が国以外
の国がそう言っているとは考えにくい」
◆初鹿明博(維新)
「米国の帰還兵の自殺者は1日22人と言われている。自衛隊のインド洋・
イラクへの派遣で計54人の自殺者が出ている。この法律で派遣されると、
目の前で人が殺されたり、場合によっては人を殺すことも想定される。隊
員が帰国後、PTSDになるリスクが高まるのではないか?」
中谷「海外派遣は過酷な活動で精神的な負担が大きいので、PTSDを含む精
神的な問題が生じる可能性はあるが、メンタルヘルスケアに十分に留意し
て対応する。活動はリスクを極小化して実施する」
◆初鹿明博(維新)
「兵士のPTSDには、長時間にわたる死の恐怖、敵兵や味方、民間人など他
人の死の目撃によるストレス、戦場に順応し過ぎて安全な本国で支障をき
たすという3つの原因が指摘されている。しかし、ベトナム帰還兵のPTSD
の最大の原因は、正義のためと思って行ったのに帰国後に批判の的になる
こと」「自衛隊も国論が二分され多くの国民が反対する中での派遣になる」
◆丸山穂高(維新)
「この法律により、「非戦闘地域」の概念を外して「現に戦闘行っている
現場」以外で活動することになる。地域的に広がり、今まで行けなかった
ところにも行けるのか?」
横畠「柔軟性を持たせようとするもので、どこに行くかは同じだ」
中谷「一概には言えない」
丸山「なぜ「(今まで以上に)行けます」ということすら言えないのか」
中谷「その通りです」
◆丸山穂高(維新)
「名古屋高裁の判決は、クウェートからバグダッド空港への150回の輸送
のうち、125回は主に米兵輸送と指摘している。掃討作戦を実施している
地域から約15kmの空港への兵員輸送が違憲とされた。「ロケット砲で狙わ
れていた」と政府が答弁した空港が「非戦闘地域」なのか。この法律でも、
政府、国民、裁判所の判断が一致しないと違憲になる」
◆赤嶺政賢(共産)
「米国とイランの関係改善など、ホルムズ海峡の周辺環境は前向きの変化
が現れている。なぜ今、集団的自衛権の行使という話になるのか? 安保
環境にどんな「根本的変容」があったのか?」
中谷「イラクやシリア、イエメンの情勢やISILなどの要因もある。かつて
オイルショックもあり、機雷をまかれたこともある。大切な地域であり、
危機が起きる潜在的危険性がある」
◆赤嶺政賢(共産)
「米海軍大学の研究者の論文に、「日本は近代的で有能な対機雷戦部隊を
持つ。米軍掃海部隊は全海軍予算の1%のみで脆弱だ」とある。米国は同
盟国である日本を組み込むことを前提にしているとしか考えられない」
「当時米国から多国籍軍への支援を要請された海部首相は、「憲法上の制
約と国会(決議)の制約で軍事分野の協力はできないと断った。当時でき
なかった多国籍部隊への参加ができるのでは? クウェート侵攻以降の当
時の日米交渉記録の公開を」
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<2つの政府見解に関するコメント>
6月10日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=217
<特別版 第4号(6月10日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=226
<特別版 第3号(政府見解等を掲載)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=207
<特別版 第2号(6月5日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=187
<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
※特別版 第5号(6月12日の審議録)は
明日にはウェブサイトにアップする予定です。
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発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
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<本研究会のご紹介>
http://www.sjmk.org/?page_id=2
◇『世界』7月号、6月号に当研究会の論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
◇集団的自衛権問題研究会News & Review
第9号の内容
● 歯止め無き対米支援法制は「国民を守る」か(川崎哲)
● 新「日米ガイドライン」は何を狙うか(吉田遼)
http://www.sjmk.org/?p=130
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5415:150616〕
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