この国の近未来が予見可能な来る選挙(続々)
- 2016年 7月 5日
- 交流の広場
- 熊王 信之
今夏参議院選挙の命題が護憲であるのは余りにも明白で、それは弁護士の澤藤統一郎氏が先の論稿で力説されているとおりです。
そのために、問題を内在しながらも野党共闘が成立したことは評価に値することでもあるでしょう。 澤藤氏が以下のとおりに強調されることには、同意するものです。
「至上命題が、明文改憲の阻止である。現在の選挙制度を前提とする限り、野党がバラバラでいる限りは、改憲を狙う与党勢力に各個撃破されて選挙に勝てない。憲法擁護を求める国民の多数の声が、「死票」となって議場から閉め出され切り捨てられる。「憲法の改悪を絶対に阻止」するためには、野党の共闘が必要なことはあきらかだ。」
「護憲派44議席の確保」に向けて、これが共闘の政策協定だ。 澤藤 統一郎 ちきゅう座 2016年 6月 8日
http://chikyuza.net/archives/63726
しかしながら、相手の安倍一派は、改憲の企図をあくまで隠し、自らの経済政策と銘うった「アベノミクス」を前面に出す擬態で票を掠め取る算段であり、一方、眼を国民に転ずると、残念ながら、国民一般には、未だ、その真の姿が暴露されて観えている訳ではありません。
安倍一派には、何も新規な経済・財政政策が在った訳では無く、その真実は、バラマキ資金捻出のために国債を増発し、それがために金利が上昇する危険を避けるために日銀に市場から国債を買わせる、との「財政ファイナンス」を誤魔化すのが狙いであるのです。
更に年金基金(GPIF)他に株を買わせて、株価騰貴を造出する官製相場で好況を演出した訳です。
ところが、アベノミクスの恩恵がある筈と宣伝された国民の懐具合は、敢えて政権擁護媒体の報道を引用しても、実質賃金が増えるどころか、減少する始末です。
「厚生労働省が8日発表した2015年の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動の影響を除いた15年通年の実質賃金は前年から0.9%減少した。マイナスは4年連続となる。」
実質賃金0.9%減 15年、物価上昇に賃上げ追いつかず 日本経済新聞 2016/2/8 9:00 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO97043380Y6A200C1I00000/
その結果は、当然のことですが、消費が減退しています。 何と、サンケイにまで「労使の協調姿勢から、春闘で極端な賃上げが要求されない「文化」もあって、実質賃金が伸びず、節約志向が弱まらないことが背景にある。」と書かれる始末です。
「内閣府が8日発表した景気関連の統計は、国内の消費意欲の低迷を改めて浮き彫りにした。実質国内総生産(GDP)の個人消費額は平成26年4月の消費税率8%への引き上げ後、年率換算で300兆円程度に落ち込んだまま。労使の協調姿勢から、春闘で極端な賃上げが要求されない「文化」もあって、実質賃金が伸びず、節約志向が弱まらないことが背景にある。」
消費意欲の低迷浮き彫り 政府の経済統計 実質賃金伸びず節約続く 産経ニュース 2016.4.8 20:51更新
http://www.sankei.com/politics/news/160408/plt1604080040-n1.html
残念ながら、現下の野党共闘では、安倍政権の疑似政策を見抜けない国民一般に、その実像を剥ぎ取り実態を見せ、代わりの政策を提示出来得て居ないのが現状でしょう。 勿論、時間的余裕も無かったことは認められるでしょうが。
国家財政の窮迫が近未来にある危険を知ってか知らずか、知る余地もありませんが、消費増税の延期は、生活に窮迫しつつある国民一般には、受け入れられることは間違いが無いことでしょう。 そして、前稿で言及しましたように、護憲が懸案であるにも拘わらずに論戦を避ける姦計に国民一般が騙されることもあることでしょう。 その結末は、この国が改憲に一歩近づくことになるかも知れません。
私は、あまり、この国の近未来に楽観出来ません。 私が幼児の折に、観た大阪市内の光景を、もう一度見ることに為るのかも知れない、と密かに恐れているのが事実です。
その光景とは、亡母に連れられて阿倍野に行く折に観た、空襲で焼け落ちたビルの醜い姿と、野宿していた焼け出された人達の群れです。
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。