シャミールが語る米国大統領選の姿/アイデンティティ政治の秘密
- 2016年 8月 3日
- 時代をみる
- 童子丸開
バルセロナの童子丸です。スペインでは、マドリッドでもカタルーニャでも、諸勢力の思惑がこんがらがってまともな政府も議会も作られず、下手をすると今年中に「1年間で3回目の総選挙」が行われるのではないかと思われるほど、にっちもさっちもいかない状態が続いています。
一方でアメリカの大統領選挙ではまるでロシアが主役になっているようで、こっちも訳のわからない様相を示しています。
そんなアメリカ大統領選の一面をえぐるイズラエル・シャミールの文章を和訳(仮訳しましたので)お知らせします。
(こちらの方でもご覧ください。)http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction2/The_Secret_of_Identity_Politics.html
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シャミールが語る米国大統領選の姿 アイデンティティ政治の秘密 (以下、太文字で書かれたリンクは当サイトにある日本語記事) この11月に行われるアメリカ合衆国大統領選挙の行方は日本でも大きな関心がもたれていることだろう。いまネオコン戦争ババアを担ぐ米国民主党は、ドナルド・トランプが「ロシアのスパイだ」という陰謀論で、ヒステリックなキャンペーンを張っているようだ。親米的なスペインの新聞でも「トランプがイラクで死亡したイスラム教徒の兵士の家族を誹謗」とか「クリントンはトランプを有利にするロシアの横やりの可能性を警告」(共にエル・パイス)などとイメージダウン作戦にやっきとなっている。どうせ共和党を非難するのなら、ブッシュ時代のイラク開戦の大嘘でも書きたてればよさそうなものだが、エル・パイス紙はどうやらそれには興味がなさそうである。 一方でカタルーニャのエル・ペリオディコ紙なんか、1995年にフランスの雑誌に載ったトランプ夫人メラニアのヌード写真を報道している。ただしその元記事は「こんなファーストレディー候補なんか見たことがない」と見出しに書かれたニューヨークポスト紙の記事である。そんなファーストレディーがいたとしても、どうせ無茶苦茶なアメリカなんだから、それなりにいいんじゃないかとも思うのだが…。 ここで、このアメリカ大統領選挙を通常のメディア報道とはちょっと別の角度から眺めている興味深い記事を翻訳(仮訳)してみた。興味深い…とは言うものの、この内容は少々「やばい」ものかもしれない。元記事は次である。 http://www.unz.com/ishamir/the-secret-of-identity-politics/ The Secret of Identity Politics ISRAEL SHAMIR • JULY 26, 2016 • 1,900 WORDS 著者のイズラエル・シャミールはユダヤ系ロシア人のジャーナリストである。彼はイスラエルでハアレツ紙の記者として勤め、日本にも在住していたことがあった。キリスト教徒(ギリシャ正教)に改宗してパレスチナ問題に取り組む。後にイスラエルを出国してスウェーデンに移り、現在は故郷のロシアに居住しているようだ。 訳文中で「アイデンティティ政治」とあるのは、日本語版ウイキペディアの説明をそのまま引用させてもらうなら、 『アイデンティティ政治(英:identity politics、アイデンティティ・ポリティクス)は、主に社会的不公正の犠牲になっているジェンダー、人種、民族、性的指向、障害などの特定のアイデンティティに基づく集団の利益を代弁して行う政治活動。』 である。 訳文の途中に、必要に応じて《訳注》を挟んでおいた。訳文中のリンクは原文に従っている。また訳文の後に私からの『翻訳後記』を添えておいたので、お時間があればご笑覧いただきたい。 2016年8月3日 バルセロナにて 童子丸開 ********【引用、訳出開始】******** アイデンティティ政治の秘密 イズラエル・シャミール 2016年7月26日 【画像:ドナルド・トランプ】 http://www.unzcloud.com/wp-content/uploads/2016/07/shutterstock_398356141-600×399.jpg ユダヤ人は恐怖すべき敵となりうる。彼らは良心のとがめなしに群れを成して獲物を襲う。P.G.ウッドハウスの物語に登場するおばさんたちのように、彼らはフェアプレイに屈することがなく、相手の急所を攻撃する。自分たちに従わない指導者たちを狩ることが彼らの大好きな国技なのだ。そして自分たちの行く手を遮る政治家がいれば災いをもたらす。彼らは合衆国メディアと金融の指導的地位を占領し、そして圧力に弱い政治家たちを傷めつけることができる。 幸いにして彼らを打ち破ることは可能だ。パワフルでずるがしこくても、ユダヤ人たちは悪魔ではなく超人間的な魔法の力など持たない。彼らは多くの権力の中の一つなのだ。彼らは何度も繰り返して絶頂に達しては撃退された。このことがアメリカでも同様に起こるのかもしれない。 それは世界の終わりでも歴史の終わりでもないし、ユダヤ人の最後でもない。ただ単に、歴史を終わらせるというユダヤ人の夢が、少なくともしばらくの間は、終わるだけだ。その間に世界は続いていくだろう。彼らの振る舞いのすべてが悪いというわけではないから、また彼らが必要とされるから、しかし彼らの支配があまりにも全面的になってしまったからである。アメリカおよび人類の繁栄のために、それは、除去されるのではなく、後退させられねばならないのだ。 最良の政治家とは、1インチも譲ることなしに、そしてまた同時に、ユダヤ人たちにあまり多くの敵意を持たせることなしに、ユダヤ人たちの一致した行動をはねつけることに成功する者たちである。FDR(フランクリン・D.ルーズベルト)とJFK(ジョン・F.ケネディ)、そしてリチャード・ニクソンでさえそのようにしたのだが、ドナルド・トランプもまたそのようにできる。 このドナルドは、六芒星に関する出来事《訳注1》で実に上手にそれをやってのけた。彼は攻撃を受けた。ADL議長のジョナサン・グリーンブラットはトランプの謝罪を要求した。「彼は侮辱したことを認め謝罪すべきだ」と、グリーンブラットは“CNN Tonight”でのインタビューで語った。「それが、右派でも左派でも、民主党員も共和党員も、すべての国民を満足させるだろうと、私は思う。」 《訳注1》 六芒星はユダヤのシンボルである「ダビデの星」のことだが、こちらのザ・ガーディアン紙の記事で見るように、トランプはヒラリー・クリントンを「史上最も腐敗した政治家」と非難する際にこの六芒星の形を使って、大きな問題となった。 トランプは謝罪を拒否した。その星は単なる一つの星に過ぎないと主張したのだ。彼は自分の運動員にその侮辱的な画像を取り去るように命じさえした。確かに彼はそれを復活しなかったが、ある軟弱な姿勢の運動員を口達者に叱りつけた。この圧力に屈しない能力が、トランプ氏の最も励みになる特徴なのだ。 身をかがめて謝罪を始め、自分の支持者を追い出してユダヤ人の圧力に耐えることができないと見せつけたジェレミー・コービン《訳注2》と彼を、ちょっと比較してみるとよい。 《訳注2》コービンはイギリス労働党の党首。今年に入って労働党の内部で一部党員の「反ユダヤ主義」が問題にされていたのだが、コービンは火に油を注いでしまった。彼は「イスラエルをISISと同等視した」として、その「反ユダヤ主義」によって党内で吊し上げを食らった。ついにはユダヤ教のチーフ・ラビが「労働党を反ユダヤ主義にした」とコービンを非難した。 トランプは謝罪しなかった。それが謝罪を求めるユダヤ人たちの欲望を満たすものではないからだ。彼らは常に謝罪の魚を釣り上げ、謝罪は彼らにもっと多くを求めさせ、それがもっともっと続くのだ。ADLは、活動家たちをスパイし、自身のスパイたちと挑発者たちを動員した著名な組織だが、この際限のない謝罪の追及で先頭に立つ機関だ。謝罪を拒否せよ。そうしないとあなたは、もっと多くの謝罪を求めるもっと大きな圧力を招き入れることになる。 ユダヤ人たちが彼に謝罪させたがる理由の長大なリストがある。(1)トランプはデイヴィッド・デューク(David Duke)をできる限り長い間告発しようとしなかった;(2)人種主義と反ユダヤ主義について何も語ったことがない;(3)彼は、ジャーナリストのジュリア・イオフェ(Julia Ioffe)が自分の雑誌に書いた彼の妻メラニアの人物紹介―メラニアはそれを嫌っているのだが―のことでジュリアを攻撃する反ユダヤ主義の輪唱を批判することを拒否し、そして(4)彼は、たまたま自分のことを悪く書くユダヤ人のジャーナリストに対するたちの悪い反ユダヤ主義ソーシャルメディアの猛攻撃について何も言わない。(5)彼は「アメリカ第一」のスローガンを、それがある特定の反ユダヤ主義の歴史的な含蓄を持つことにすでに確実に気づいているにもかかわらず、取り下げることを拒否している。(6)彼は、ベニト・ムッソリーニやサダム・フセインを含む、ユダヤ人にとって問題の大きな暴君と独裁者を、繰り返し賛美している。(7)そして彼は自ら、ユダヤ人たちは自分をカネで買うことができないので自分をコントロールできないから自分を支持しないのだと 、たびたびの反ユダヤ主義的な見解を発することで有名だが、それには共和党のユダヤ人連合に対する断定も含まれている。 このトランプのユダヤ人たちとの付き合い損ねのリスト(Chemi Shalevと呼ばれるアメリカのユダヤ人によるものだが)は、ユダヤ人たちとトランプとの間で友好関係が作られるかもしれないいかなるチャンスをも妨害するように、意図的に貶めるものである。 トランプはいずれにせよユダヤ人たちとの関係修復のチャンスを持てない。決して試みていないわけではないのだ。彼は間違いなく「反ユダヤ主義者」(「ファシスト」と同様に何の意味もない馬鹿げた言葉だが)ではない。Stephen Sniegoskiは、彼が反ユダヤではなくむしろ親ユダヤ主義者であることを説得力のある方法で 証明する。トランプの子供たちはユダヤ人と結婚しているのだが、彼の娘婿は単なる金持ちのユダヤ人であるばかりではなく、(1)有罪判決を受けたことのあるユダヤ人詐欺師の息子であり、(2)シナゴーグに通っており、(3)新聞社のオーナーであり、(4)アンチ・トランプの誹謗印刷物を出版、つまりまさしく押しも押されもせぬユダヤ人なのだ。トランプは、ユダヤ人たちと同様に、親イスラエルである。実際に、ヨルダン川西岸の占領地に住む私のユダヤ人の友人は、彼の勝利を祈っているのだ。Sniegoskiは、トランプがユダヤ人の敵であるとしてするあらゆる告発にこと細かに反駁し、文句のつけようのないようにしているのだ。 トランプはユダヤ人たちとの関係修復のチャンスを持たない。彼がものごとの順序を変えたいと願っており、一方でユダヤ人たちは現在のとおりの物事のあり方に完全に満足しているからである。たぶんあなたは、合衆国が移民者たちであふれることを、あまりに多くのアメリカ人たちが貧しくなったことを、学生たちが永久に借金漬けになっていることを、企業が外国に去っていったことを、労働者たちが貧しくなる一方で銀行家たちがカネまみになっていることを、好んでいない。しかしユダヤ人たちにとって、これは素晴らしいことだ。この現状こそが彼らの望むものであり、彼らが手にしているものなのだ。 一人の著名なアメリカのユダヤ人、Rabbi Eric H. Yoffie が、ハアレツ紙の記事の中でそのことを十分に説明した。トランプの政策は要点を外している、と。彼は物事を変えたいと望んでおり、ユダヤが最初から優越性を持っている最高裁と戦うことになるだろう。そしてユダヤ人たちは現在の通りの物事のあり方の側に立ち、たぶんもっとそれを推し進めたいと願っている。 実際にトランプ大統領が踏むかもしれないあらゆるステップが最高裁に送られるだろう。そこは、選挙で選ばれたのではない(クリントン指名による)最高裁判事ルース・ギンズバーグがすでに牙と爪を剥き出して彼と戦うだろうと宣言した所である。そこは、ゲイの結婚を認め、最近の移民受け入れや、その他のリベラル好みの判決を下した所である。もしトランプが何かを達成したいのなら、遅かれ早かれ、彼は エルドアン大統領の書物からその1ページを借りて、彼らに対処しなければならなくなるだろう。もし何も達成しようとしないのなら、間違いなくだが、彼らは行動を差し控えることだろう。 ユダヤ人たちの90%はヒラリー・クリントンに投票するだろうとYoffieは予告する。これはありうる。勇敢な反シオニスト・ユダヤ人であるジェフ・ブランクフォートは「民主党の実際のオーナーであるアメリカのユダヤ人エスタブリッシュメント」と書いた。そう、ユダヤ人たちは民主党に投票する。彼らはその80%の票をバラク・オバマに投じた。比較してみると、合衆国の古い主人であるWASPは、わずか34%しかオバマに投票しなかった。もし彼らがいまだに実権を握っていたとしたら、オバマ大統領はいなかっただろうし、シリアとリビアの破壊も無かっただろうし、移住者は少なかっただろうし、平均的なアメリカ人の生活はもっとましだっただろう。ああ、たぶん男の子に、もし自分が女の子っぽいと感じるなら、女子用のトイレでおしっこをす ることを許す命令なども無かっただろう。大きな損失である。 問題はユダヤ人たちが、単に自分たちのゴミ屑に投票するよりも、はるかに多くの力を持っているという点だ。その強力な武器の一つがGoogleだが、それは彼らとCIAとの共同開発である。それは過重に作動して“Trump Hitler”に2000万回もヒットを与えている。Bingの検索エンジンの7倍である。Googleの検索機能は、ユーザーがアドルフ・ヒトラーについて検索する際にドナルド・トランプに結び付けられた 結果を提供するのである。「ヒトラーはいつ生まれたか(When was Hitler born?)」を検索すると、ヒトラーについての期待された情報だけではなく、同時にまた、ドナルド・トランプの画像とリンクが現れてきた。ユダヤ人所有のメディアは多くのアンチ・トランプのガラクタを生み出しているのだ。 しかし人々はもはやそのようなものは信用しない。バーニー・サンダースのような素敵なやつですら、結局は戦いをあきらめてねじ曲がったヒラリーを支持した。いま人々はユダヤ人が現在の状況を求める権力であると知っており、それを変えたいと望んでいる。 その目的のためには、アイデンティティ政治と呼ばれる単純なレトリックの装置の正体が暴かれるべきだ。それは労働者階級をdelegitimiseする《訳注3》目的でグラムシのブループリント《訳注4》に基づいて作られた敵の装置である。 《訳注3》この“delegitimise”という言葉は適切な訳が分からない。“legitimise”は「合法的にする」だが、それに、分離、否定、下降の意味を持つ(場合によっては強意にもなる)接頭辞の“de-”が付いている。しかし「非合法的にする」なら“illegitimate”であろう。文脈からは「労働者階級の闘争の正統性を無化させる」というような意味で用いられていると思われる。 《訳注4》グラムシの「ブループリント」についての適切な日本語での説明は見つからなかった。おそらくアントニオ・グラムシによって考えられたマルクス主義に基づく世界改造の見通しのことではないか。なお、スペインの新政党ポデモスの党首パブロ・イグレシアスはグラムシに影響を受けている。 アイデンティティ政治はユダヤの手法の延長、あるいはたぶん、ユダヤの手法がアイデンティティ政治の特別に忌まわしい形態だ。ユダヤ人銀行家は敵対者が反ユダヤ主義であると告発することによって自分を防御するのである。それは実に単純で利用価値があるため、多くの他の集団もこのトリックを真似した。それらの防御される諸集団が民主党の傘の下で同盟を形作り、そして同時に、民主党は、先にも書いたように、ユダヤ人エスタブリッシュメントの意思を実行しているのである。 アイデンティティ政治はアメリカで究極的な真実として強要されてきた。このコンセプトによると、それらの防御される諸集団は自分たちがそうであるということによって攻撃を受けるわけだが、防御されない者たちは自分が行っていることによって苦痛を受ける。これは全くの詭弁だ。広島の日本人たちは、彼らがそうである(日本人である)ということによって焼き殺されたのだろうか?それとも彼らが行ったことによって(ほとんど何もしていないのだが)であろうか? もし我々がユダヤ人の政治家に反対するのなら、それは彼らがそうであるためなのか、それとも彼らが行うことのためなのだろうか? アイデンティティ政治は防御される集団の認知を一般化することを我々に禁じる。誰でもユダヤ人については敬意未満の何事をも言うことはできない。彼らがみなそれほどに異なっているからである。そう、現在の状態を求める90%の投票は多様性の印ではない。誰でもジェンダー・グループについては全く何も言うことはできない。彼ら/彼女らがそうだからである。全能の神のようなものだ。実際に「白人」、「男性」そして「キリスト教徒」だけは、合衆国の中で、自由にそして何の懸念もなく悪罵できるアイデンティティなのだ。 合衆国でのカトリック教会を考えてみよ。ユダヤ人たちは教会に謝罪を要求し、その要求を勝ち得た。その後、彼らはまたしても手を弱めることなく教会を攻撃し続けた。副大統領候補マイク・ペンスに対する最近の攻撃の中で、ユダヤ人たちは、キリスト教徒たちに同性カップルの結婚式の執り行いを拒否することを許そうとする彼の試みを盛大に利用した。彼らはその試みを、かつてのクー・クルックス・クランとジム・クロウ時代の差別とになぞらえた。そのとき彼らは「明るいうちにここから出ていけ(Don’t let the sun go down on you here)」そして「日没後は白人専用」という、象徴的な言葉を使ったのだ。あらゆることが教会を傷めつけるために行われ、人事委員会の規則もそれを保護しない。それらがデトロイトの白人労働者を保護しないようにである。 ユダヤ人たちは、ちょうどトルコの将軍たちがモスクを嫌悪するように、教会を嫌悪する。その理由から、彼らはトランプの非キリスト教徒移民の制限という考えに非常に慌てふためいているのである。それは、彼らがイスラム教徒を好んでいるということではない。彼らが教会攻撃のためにイスラム教徒を利用したいからなのだ。 「我々ユダヤ人はクリスマスのキリスト教的な印を見たくない」という代わりに、彼らは好んで「イスラム教徒は…見たくない」と言う。これはむしろ正しくない。ベツレヘムで誰でも見ることができるようにイスラム教徒たちはクリスマスを祝うのである《訳注5》。しかしこの言葉は響きが良い。 《訳注5》イエス・キリストは、イスラム教では「Isa ibn Maryam」と呼ばれ預言者の一人、神(アッラー)のメッセンジャーとして尊ばれている。イスラム教徒がクリスマスを祝うかどうかには諸説があるが、少なくとも好感をもって(悪感情抜きに)受け止められるようだ。 ここに事例証拠がある。私はボストン・グロウブ紙の見出しと記事の案内が付いたeメールを毎日受け取っている。「あなたへのお薦め記事」の項目はいつでも、14年前に公表されたアンチ教会の記事で記事で始まるのである。 【あなたへのお薦め記事 2002年1月6日 | PART 1 OF 2 教会は長年にわたって僧侶による性的虐待を許してきた】 古いカビの生えたようなアンチ・キリスト教の悪態を私が読む必要があると、なぜ彼らは考えているのか? 彼らはバーニー・マドフの話を私にもう一度読むように勧めるのだろうか? あるいは100人の死者を出したキング・デイヴィッド・ホテル《訳注6》へのユダヤ人によるテロ攻撃の話だろうか? それはないだろう。 《訳注6》キング・デイヴッド・ホテル爆破テロについては、こちら(日本語版Wikipedeia)を参照のこと。 ユダヤ人たちが多数派の願望に対して団結してふるまうのは初めてのことではない。偉大な政治家なら彼らをどう取り扱うのか知るべきである。そんな政治家にウラジミール・レーニンがいた。1913年に彼の党はブンドと呼ばれるユダヤ人の堅固な集団と闘っていたのだが、彼は次のように書いた。「親愛なる同志諸君。もし我々が今日何も言わないでいるのなら、明日にはユダヤ人のマルクス主義者たちが我々の背の上におぶさってくるだろう」。このアドバイスは今日でも引き続いて妥当なものである。 ********【引用、訳出ここまで】******** 翻訳後記 このサイトには次のようなシャミールの記事の翻訳が収められている。 日本でのオバマ (2016年6月7日アップ) ロシア人は素早く馬に飛び乗る (2016年2月25日アップ) シリアに開く突破口 (2016年2月15日アップ) 雪中のモスクワ、リトゥヴィネンコ毒殺、そしてシリア戦争 (2016年2月1日アップ) 現在進行中 2005年に予想されていた現在の欧州難民危機 (2015年9月20日アップ) 宿命の三角関係:ロシア、ウクライナ、ユダヤ人 (2014年8月3日アップ) 動乱のウクライナ:戦争はいつでも起こりうる (2014年5月23日アップ) 民族紛争の対極にある「ロシア世界」の新たな展開 (2014年4月21日アップ) ウクライナのファシズム革命 (2014年2月28日アップ) アメリカ:あるユダヤ国家 (2006年9月~2007年3月) 我々はこれらのシャミールの著述によって、一般の日本人には極めて感知し難く理解し難いアメリカやロシアやユダヤの別の姿を知ることができる。特に合衆国のユダヤ人たちについて語る場合、同じユダヤ人著述家でも、ジェイムズ・ぺトラス教授なら用心深く学術的な言葉にくるんで(参照:『シオン権力と戦争』)、ミシェル・チョスドフスキー教授ならもっと注意深くコンテキストからだけ読み取ることができるようにしているのだが、シャミールは遠慮容赦もない。ぺトラスやチョスドフスキーにはやはり「守るべき立場」があるのだろうが、シャミールはいつも「捨て身」なのだ。彼の著述からはアメリカやロシアのユダヤ人たちの生の言葉が響いてくる。 上のリストの最後にある「アメリカ:あるユダヤ国家」は長編だが、ぜひお読みいただきたい文章だ。2001年の911事件直後に書かれたが、シャミール自ら「私の著述の集大成」と呼ぶもので、ここに描かれる「ユダヤ国家」としてのアメリカの姿、シャミールが今回の記事の中で書く「現在のとおりの物事のあり方」は、15年後の今になってもそのままに引き続いている。しかしそれがひょっとして、ドナルド・トランプがアメリカ大統領になることによって、ある程度は後退させられるのかもしれない。 それが分かっているからこそ、彼らはいかなる手段を使ってでもトランプを貶め攻撃し、自分たちの傀儡であるヒラリーを神輿の上に据えようとするだろう。先にスペインのメディアの例を紹介したが、日本を含む西側の世界中で、文字通り「あることないこと」書きたてたアンチ・トランプのキャンペーンがこの11月まで繰り広げられることだろう。また今回の大統領選挙ではロシアが目玉になっており、ロシアのメディアも驚きを隠していない 。おそらく徹底的な「ロシア悪魔化」が行われ、それに引っ付ける形での「トランプ悪魔化」が主流になると思われる。そして逆に我々は、そういう様子を観察することによってその勢力範囲を、同時にロシアとの戦争がいかに望まれているのかを、知ることになるだろう。 また本文中にもイギリス労働党の例があったのだが、「ユダヤ問題」はヨーロッパである意味アメリカより厳しい形で存在している。「反ユダヤ主義」は単に社会的排除の標的となるだけではなく刑事犯罪ですらある。スペインでは昔からセファラディ系のユダヤ人たちが改宗キリスト教徒の形で住み着いてきた。近代になってそこに中~東欧からのアシュケナジたちの移住者が加わった。以前からミロ、ダリのような芸術家は有名だが、現在スペインの各界で主導的な立場に立つ人々にはやはりそういったユダヤ系人士の姿が目立ち、多くのスペイン人たちは知っているのだが口に出さないだけだ。それには「右」と「左」の違いも、またマドリッドとカタルーニャの違いも無い。 ここで問題にされる「アイデンティティ政治」について言えば、たぶんカタルーニャ独立問題なども、広い意味でなら、含めることができるかもしれない。これには領土と経済利権が絡むためそこまで単純ではないが、独立主義者たちは「カタルーニャのアイデンティティ」をことあるごとに強調する。そして、まるで神国思想と竹槍でB29と原爆に立ち向かおうとした我々の父祖たちにも似て、一国の憲法をも楽々と超える「万能の神」ででもあるかのごとくそれを前面に立てようとする。本人らが真剣なだけにこちらとしては滑稽さすら感じる。 それよりも、バルセロナの「ゲイセロナ(Gaycelona)」がすごい。いまここでは世界中60か国から約7万人のLGTB(レスビアン、ゲイ、トランスセクシュアル、バイセクシュアル)たちが約2週間のサーキット・フェスティバルを行っている。私にはその趣味はないのだが、幸か不幸か私の住んでいる地区は虹色の旗を飾った店であふれており、筋骨隆々たるお兄ちゃんたちが何十人、何百人とそろって街頭に繰り出すと、そこで発散されるエネルギーには全く圧倒されてしまう。 カタルーニャ人が自分のアイデンティティを頑固に守ろうとする一方で、その首都であるバルセロナは「新しい風変わりな」ものを自由に取り込んでいこうとする雰囲気に溢れる。マドリッドの保守派が嫌いそうなものには特に寛容だ。かつてここはパリやアムステルダムと並んでヨーロッパの「麻薬の都」の一つだった。さすがに今は取り締まりが厳しくなり表に現れなくなったが、その代わり世界の「ゲイの都」の一つになりつつある。マドリッドのようにゲイに対するネオナチの襲撃も無いし、市民たちも寛容である。 というか、本当のことを言うと、このフェスティバルに集まるゲイたちは典型的な中産階級の人々で、金払いが良いのだ。夏はカタルーニャにとって年間最大の稼ぎ時なのだが、彼らはたった2週間足らずで1億ユーロ(約114億円)以上のお金をバルセロナに落としていってくれるだろう。市内のホテルはホクホク顔である。知り合いのレストランの店主など「ゲイの人たちは身ぎれいで教養も高く、礼儀正しいし、きっちりお金も使ってくれるから、いつでも来てほしい」と大歓迎の様子だ。 私自身にしても、知り合いや隣人の中にもゲイのカップルが何組かいて普通に仲良く付き合っている。だからこのゲイパワーに別に違和感があるわけではない。しかしこのエネルギーがまとまった巨大な政治的パワーとなり、あるとんでもない方向に突っ走っていくのなら、それは恐ろしいものに変わりかねないだろう。 そういった特定のアイデンティティを政治的に利用して、それに隠れて自分たちの利権構造を作り守っていく集団は、特にユダヤ人集団だけではあるまい。どこの国にでも見られることだ。ただアメリカではきっとそうなのだろう。ゲイやレズは個人個人の事情だが、それがあのネオコン戦争ババアをアメリカ大統領に押し上げる権力の隠れ蓑の一つにならないことを祈るだけである。 【翻訳後記、ここまで】
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