本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(136)
- 2016年 10月 11日
- 評論・紹介・意見
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黒田日銀総裁の演説
9月5日の「黒田日銀総裁の演説」を読んで感じたことは、以前の「イエレンFRB議長のコメント」と同様に、ほとんど「ホンネ」が語られていない可能性でもあった。つまり、「タテマエ」だけを語ることにより、「問題の先送り」を目論んでいるようにも感じられたが、特に気になったのが、「金利」だけに注目し、「市中に出回る資金量」が、ほとんど問題視されていなかった点である。
具体的には、「金利の操作」だけで「金融システムの安定」が継続可能であると主張したかったようだが、実際には、「マイナス金利の副作用」により、今後は、「短期金利の低下」も難しくなっているものと思われるのである。また、「長期金利」については、今まで、「日銀トレード」という「日銀が更なる高値で買ってくれるから、安心して、高値を買う動き」が、すでに終了した状況とも考えられるために、やはり、これ以上の、金利低下が難しくなっているようにも感じられるのである。
つまり、今後は、「短期」のみならず、「中期」や「長期」の金利も、世界的に上昇を始めるものと思われるが、この時に、最も危惧すべき点は、「金融庁」が指摘し始めた「短期借り、中長期貸し」のポジションでもあるようだ。具体的には、「短期資金」を借りて、「長期国債」などに投資する方法のことだが、この投資の問題点は、「短期金利が上昇すると、一挙に、損失が発生する可能性」とも言えるのである。
具体的には、現在の「日銀」のように、「0.1%」の金利で短期資金を借り、「マイナス金利の10年国債」に投資すると、今後、短期金利が急上昇した時に、損失額が、大幅に膨らむ可能性が存在するのである。つまり、短期金利が「2%」に上昇しても、すでに投資した「10年国債」については、「満期までマイナス金利が確定している状況」でもあるからだ。そのために、今後の注目点は、短期金利が上昇した時に、「日銀」を始めとして、「国債」を保有する全ての「金融機関」に、大きな損失が発生する可能性だが、前述の演説においては、この点が、ほとんど言及されなかったのである。
つまり、現在は、「口先介入による時間稼ぎ」しかできなくなった段階とも思われるが、この点については、早ければ9月中にも結論が出るものと考えている。そして、今後の注目点は、黒田総裁が指摘した「適合性の予想形成」、すなわち、「これまで物価や金利が上がらなかったのだから、今後も上がらないだろう」という「人々の認識」が変化する可能性であり、実際には、人々がパニック状態に陥る可能性も存在するようである。(2016.9.16)
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バブル相場の再来!?
現在、日本の「不動産バブル」が発生し始めたようだが、この点については、「マイナス金利」が大きな影響を及ぼしているものと考えている。つまり、「イールド・ハンティング(利回り追求)」という言葉のとおりに、「利回り」を得られる商品に、資金が向かい始めたものと思われるが、実際には、「30年前の日本」と同様に、行き場を失った資金が、最初に、「不動産市場」に向かった可能性が存在するのである。
しかも、今後は、「国債価格の暴落」とともに、「約300兆円」にまで膨らんだ「日銀の当座預金」が、一挙に、市中に出回り始め、結果として、さまざまな資産価格を押し上げるものと考えている。また、この「メカニズム」については、最初に、「日銀の資金繰り」が注目されるが、この時の注意点は、「金利が上昇しても、日銀の保有国債残高が変化しない状況」が想定されることである。つまり、「約400兆円もの国債保有残高」に関して、「日銀」が売却を始めると、当然のことながら、「国債価格の更なる大暴落」と「金利の急騰」が予想されるために、「国債の保有」は継続されるものと考えられるのである。
しかし、一方で、「国債の買い」の資金源である「当座預金の残高」に関しては、「上昇した金利分を支払うか、それとも、民間銀行に返却するのか?」という選択を迫られるものと思われるのである。つまり、「約300兆円もの残高」に、「1%の金利」を支払っただけで、「約3兆円もの金利負担」になることが予想され、結果として、「日銀」は、「紙幣の増刷」により、「当座預金の返還」を行うことになるようだが、この時に考えなければいけない点は、「還流した大量の資金が、さまざまな資産バブルを引き起こす可能性」とも言えるのである。
つまり、今後は、「不動産」のみならず、「株式」や「貴金属」などの「実物資産」において、「30年前以上のバブル相場」が引き起こされるものと思われるが、このような状況下で発生することは、「人々が、こぞって、実物資産を買いだす状況」とも言えるようである。別の言葉では、「資産価格の急騰」が「新たな資金需要」や「更なる価格上昇」を生み出す「バブルのスパイラル」が、日本全国で発生する可能性のことである。
しかし、今回の問題点は、「1980年代」とは反対に、「信用創造の乗数効果」ではなく、「信用崩壊の乗数効果」が働いた結果のバブルであり、実際には、「換物運動」という「通貨への信頼感が失われた結果として、人々が、慌てて、実物資産に殺到する動き」が、根本的な原因とも考えられるのである。(2016.9.16)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion6297:161011〕
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