福島原発事故損害賠償訴訟 前橋地裁判決:日本の裁判所・裁判官は、何故に理不尽極まる原発事故の被害者に対して人権救済の道を開かぬのか!? これは明らかに「不当判決」である
- 2017年 3月 20日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
1.今月号(2017年4月号)の『DAYS JAPAN』より
https://daysjapan.net/
https://twitter.com/days_japan
今月号の『DAYS JAPAN』がまもなく発売となります。今月号も見逃がせない記事で満載です。別添PDFファイルには、2つの記事のイントロ部分のみを添付しておきます。『DAYS JAPAN』は、みなさまの購読料のみにて支えられている日本では数少ない真実報道のフォト・ジャーナリズム雑誌です(企業や役所などの広告宣伝はもらわない)。みなさまの定期購読をお願い申し上げます。
●特集:福島の健康管理を仕切る10人の専門家(イントロ部分)(広河隆一 『DAYS JAPAN 2017.4』)
●実際どうなの(58):ドイツで実感、日本の原発事故放置(イントロ部分)(おしどりマコ・ケン 『DAYS JAPAN 2017.4』)
2.「帰還キャンペーン」の一環? 福島・裁判員候補「呼び出し」 避難指示解除地域で再開(東京 2017.3.18)
3.山城議長の拘留続く、那覇地裁、保釈決定を覆す(東京2017.3.18)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017031802000137.
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(関連)沖縄の基地反対リーダーの保釈、那覇地裁が認める 検察は不服申し立てへ
沖縄タイムス+プラス ニュース 沖縄タイムス+プラス
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/89077
(関連)社説[山城議長初公判]検察側も保釈を認めよ 社説 沖縄タイムス+プラス
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/89107
(関連)山城議長の勾留、米軍・星条旗紙も報道「海外に非難拡大」 沖縄タイムス+プラス ニュース 沖縄タイムス+プラス
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/88371東京新聞移設反対派リーダーの保釈認める 福岡高裁支部、拘束5カ月 社会(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017031801001640.html
4.(チラシ)第18回市民意見広告運動:憲法を壊すな!
(市民の意見30の会・東京)
http://www.ikenkoukoku.jp/
(ご協力をよろしくお願い申し上げます)
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下記は、昨日3/17に下された福島原発事故損害賠償訴訟・前橋地裁判決に関する私のコメントです(現段階では新聞報道を見る限りにおいてです)。ある方からいただいた「兵庫訴訟」の辰巳裕規弁護士の良心的で励ましになるコメントと共にお送りいたします。私は辰巳裕規弁護士のコメントを否定したくてこのメールをお送りするのではありません。福島第1原発事故とその後の多くの被害者の方々の耐え難いまでの惨状と苦しみを前にして、そのなすべき責務を果たそうとしない日本の司法・裁判所や検察・法務省に対して、満身の怒りを感じるが故にお送りするものです。誤解のなきようにお願い申し上げます。
<原子力損害賠償群馬弁護団 HP>
http://gunmagenpatsu.bengodan.jp/
(1)福島原発事故賠償訴訟 前橋地裁判決記事:東京新聞(1)(2017.3.18)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017031802000144.
html
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017031701001467.html
(2)福島原発事故賠償訴訟 前橋地裁判決記事:東京新聞(2)(2017.3.18)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201703/CK2017031802000133.
html
(3)福島原発事故賠償訴訟 前橋地裁判決記事:朝日新聞(1)(2017.3.18)
http://www.asahi.com/articles/ASK3J6R9JK3JUTIL052.html
http://www.asahi.com/articles/DA3S12847271.html
(4)福島原発事故賠償訴訟 前橋地裁判決記事:朝日新聞(2)(2017.3.18)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12847362.html?ref=nmail_20170318mo
(5)福島原発事故賠償訴訟 前橋地裁判決記事(日刊ゲンダイ 2017.3.20)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/201747
<関連サイト>
(1)原発避難訴訟、裁判長はどんな人 原告の自宅を見て回る:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASK3G0FF7K3FUHNB010.html
(2)東日本大震災:福島第1原発事故 避難者訴訟 「国・東電に責任」62人に
賠償命令 「津波予見できた」 前橋地裁 – 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20170318/ddm/001/040/157000c?fm=mnm
(3)クローズアップ2017:原発避難者訴訟判決 国・東電の無策非難 「安全
より経済優先」 – 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20170318/ddm/003/040/120000c?fm=mnm
(4)<原発避難者訴訟>原告、笑顔なき勝訴…苦労報われず落胆 (毎日新聞) –
Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170317-00000094-mai-soci
(田中一郎コメント)
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辰巳裕規弁護士の判決解説(このメールの後半部分)は大変参考になりました。賠償訴訟の原告を励ましながら、長い裁判闘争をリードする弁護士さんの弁としては良心的に書かれていて、出来る限り判決の評価できる部分を浮き彫りにしようとしている、一つの立派な評価だと私は思います。
しかし、私は事態をもっと厳しく見ていて、脱原発・脱被ばく・被害者完全救済を三位一体で進めるべきであると考える立場からは、下記のような「良心的判決評価」だけでなく、もっと厳しい、かつ怒りを込めた評価も並行してお持ちいただきたいと考えているのです。以下、簡単に箇条書きいたします。
1.原発賠償訴訟は被害者の救済を求める裁判であり、それがこの判決では、ほぼ事実上実現していない=賠償範囲も賠償金額も話にならない、という点で見て、これは「不当判決」による敗訴と見るべきです。これでは被害者は救われない。原告全員の口からため息が漏れ、この裁判の原告以外の方々も含めて、ほとんどの被害者の方々が、体の力が抜けていく思いをされたのではないかと推測します。私はひどい判決だと思っています。この原発事故による放射能被害という理不尽極まりない被害を受けた方々の人生や生活や居住環境やコミュニティや文化や、すべてのことを何だと思っているのかと、自分のことのように怒りがこみ上げてくるのです。
2.辰巳弁護士の解説に書かれている、この判決の「1.国の責任・東電と国の津波の予見可能性などの責任を認めていること」については、「当たり前」の事であって、これを裁判所が認めたからと言って、裁判所を評価するなどということはあり得ない話です。この「責任問題」で言えば、評価されるべきは、この裁判の原告弁護団をはじめ、海渡雄一弁護士他の良心的な弁護士の方々が、添田孝史さん他のこれまた良心的な方々の協力も得ながら、山のような関連資料を読み込んで試行錯誤的に献身的に粉骨砕身の努力によって加害者・東京電力や事故責任者・国の責任を具体的に明らかにしたことであって、そのお膳立ての上で「当たり前」の判決を下した裁判官達ではありません。ここまで立証してもらって、責任を認めないなどということはあり得ない話です。そんなことになるのなら、この国には法の秩序も社会的正義もなくなり、裁判そのものが無意味になるでしょう。
3.そもそも私がおかしいと思うのは、こうした民事裁判が先行して判決が出始めていることで、本来ならば、告訴された東京電力3幹部のみならず、国(経済産業省、原子力安全保安院、原子力安全委員会他)や東京電力幹部役職員、あるいは原発メーカーらの刑事責任追及の刑事裁判が先行し、そこで彼らの刑事責任が明白となり、その結果を受けて、今回のような損害賠償などの民事裁判が続くという形でないといけないはずです。しかし、この国では、裁判所が東京電力3幹部の裁判を、被告側と水面下でグルになっているような雰囲気の中で、裁判の開始を極端に遅らせている状態に戻ります(東京電力3幹部の刑事裁判の方は未だ初公判さえ開かれていません)。
また、それ以外の加害者・責任者は誰一人として起訴されていないのです。こんなバカな話があるかということです。
4.また、東電株主代表訴訟においては、原告側から出ていた政府事故調による東電役職員らへの聞き取り調書の公開請求を、裁判所が(地裁・高裁)退けるような決定を下しています。要するに、福島第1原発事故の責任を明らかにするという点について、日本の司法・裁判所は、なんら自ら積極的な役割を担わないどころか、あわよくば妨害をするという姿勢を垣間見せているのです。
5.検察については、もう申し上げるまでもないでしょう。福島第1原発事故の加害者・責任者たちを起訴せず、この事故は誰にも責任がない、避けられない自然現象によるものだったという、許しがたい状況を創り上げようと粉骨砕身の努力をしています。東京電力幹部3人以外が不起訴になっているという、この破廉恥行為は絶対に許さない=つまり政権交代を実現したら、この検察庁・法務省は真っ先に解体をするのだということを忘れてはいけないでしょう(その後、新検察庁の下で改めて関係責任者どもを起訴すればいい)。この検察の出鱈目は、原発に関する分野だけではありません。自民党議員の甘利明の事件や沖縄の山城さんの例を挙げておけば十分でしょう。福島第1原発事故について言えば、検察がなすべき実態解明と責任の明確化、そしてその立証作業は、上記で申し上げたように、原告弁護団らが代わって行ったということになります。しかし、そもそも、こんなバカな話がありますか? 何のために検察庁があるのでしょう? 役に立たないどころか、巨悪を見逃し、えん罪を繰り返し、そして善良な市民の異議申し立てを弾圧する、このどうしようもない役所は、真っ先に解体です。
6.今回の裁判で裁判所がなすべきだったことは、福島第1原発事故の加害者・東京電力や事故責任者・国の「当たり前」の責任を認めることではありません。裁判所がすべきことは、その前提の上で、悲惨な状況に置かれ、今でも放射線被曝による健康被害の危険性にさらされ続けている事故被害者をどうやって救済するのか、被害者の命や健康や財産や人権を、この理不尽からどう守るのか、それを判決の中で明らかにすることです。辰巳弁護士の解説では、2と3で「前進があった」と判決文が評価されています。確かにそれはそうでしょう。しかし、それが具体的な賠償範囲や賠償金額に全くと言っていいほど反映されていないような判決では、評価しようにも評価できないのではありませんか?
7.具体例を挙げておきましょうか。いい加減な管理で化学工場が爆発事故を起こし、有害物質が環境にばらまかれたときに、今回のような判決で、企業側の責任は認めるが、賠償金額や賠償範囲が極端なまでに抑え込まれた判決が出たら、評価できますか? 責任や罪は認めるが、賠償金は出さんでいい、こんな判決ですよ。
8.私はこの判決は、もっとその底辺に、裁判所・裁判官の無責任ないしは悪意があって、これから損害賠償の提訴をしようかどうかと迷っている被害者の方々に対して、お前ら被害者はそんなことをしたって、裁判ではロクスッポ賠償など受けられないんだぞ、だから提訴など、やめておけ、というシグナルを送るとともに、最高裁人事局や原子力ムラが支配する政府・支配権力側に対しては、「政治的に「名」を捨てて、経済的には「実」をとっておきましたよ」、「これで国や東電に大きな賠償負担がかかることはないでしょうし、経済的に見て賠償訴訟が意味がないことを被害者・国民は悟るでしょうから、賠償提訴が今後増大することもないでしょう、ですから損害賠償訴訟についてはご安心ください」、そういう暗黙のサインも送ったと見ていいのではないか、とも受け止めています。
9.原告弁護団らが、ここまで福島第1原発事故の実態究明と原因解明をしてくれているにも関わらず、裁判所がなすべきであった被害者救済のための全体的な枠組みや理論づけは、下された判決において、ついに示されることはありませんでした。少なくとも、理論づけと賠償範囲や賠償金額とは全くリンクしておりません。お前たち裁判官は一体何のために存在しているのか、ということではないかと思います。恥を知れ、ということです。
昨日のメールで速報でお送りした私の記載を再度書き出しておきます。
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日本の司法・裁判所は腐っています。有権者・国民の人権を守ろうとはいたしません。どこを向いて仕事をしているのかという連中ばかりです。最高裁判事の国民審判には「×××××」をお忘れなく。政権交代により第二次司法改革が必要です。憲法を守ろうとはしない(基本的人権切捨て)裁判官に対して、国会による裁判官に対する弾劾裁判が可能な状況を早く創りましょう。
群馬地裁の判決についての兵庫訴訟辰巳弁護士の解説
昨日の群馬での判決についての兵庫訴訟の辰巳裕規弁護士の解説です。
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2017年3月17日(金) 21:24 辰巳 裕規
皆さま、群馬判決の理解について情報が錯綜してるかもしれませんが・・・
1.国の責任・東電と国の津波の予見可能性などの責任を認めていること
・これまで本件事故は東電も予見できず回避できない、さけられない、やむを得ない事故であったということが全ての前提になってきました。
・その上で、東電の賠償も、原賠法で無過失でも定められているから、しかたなく行っている
・だから、自動車の「自賠責」と同じくらいでいい
・区域外の人に賠償などする必要はない
とされてきました。しかたなく、しぶしぶ、いやいや、お金を支払っていました。しかし、国に規制権限不行使の違法があり、東電を含めて津波の予見可能性があるのに回避措置を怠ってきたという違法があるとなると話は別です。彼らは「加害者」です。しかも国は東電の陰に隠れることはできません。国が正面から責任を負うことになります。これまでのADRなどの枠組みの土台から見直しが必要になります。この点が、この判決の重大な意味です。極論をすれば賠償金1円でも国の責任を認める、東電の予見可能性を認める、という判決には画期的な意味があります。
2.区域内外の線引きがないこと
判決骨子・要旨をみるかぎり、「自主避難」「区域内外」という言葉はありません。因果関係のある損害がある限り、賠償は認められることになります。自主避難者には賠償責任はないという前提も崩れます。
3.避難を選択した相当性・合理性を認めていること
判決要旨では、避難時の情報や放射線の状況などから避難を選択したことについて、自主避難者についても相当性・合理性を認めています。「勝手に逃げた」という非難はあたりません。避難の選択の正当性・合理性を公的に認めています。
ということで、この判決はやはり画期的であり、今後、これを更に発展させる(後退させない)闘いが重要になります。
残念ながら、避難者のおかれた状況や被害の把握、被ばくを避ける権利の理解などにおいて、おそらく裁判所の無理解はあり、そこに認容額の低さ、あるいは、棄却となった原告が少なくないことの結果となっています。でも、これは個別立証を尽くすことで必ず克服できます。今後も全国各地で判決があります。これが全てではありません。大いなる第一歩になります。
この群馬判決は今後の裁判でも運動でも大きな足がかりになります。ひょうご訴訟もがんばりましょう。PS あわせて、住宅支援打ち切りの見直しなど目下の課題にも活用したいところです。
神戸合同法律事務所
弁護士 辰巳裕規
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6572:170320〕
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