共謀罪は「安倍首相=日本会議=読売新聞」合作改憲とセットで、個人の自由と権利を監視し、侵害する!
- 2017年 6月 2日
- 時代をみる
- 共謀罪加藤哲郎忖度憲法
◆2017.6.1 5月末イタリアでのG7サミット=主要7か国首脳会議を見計らったように、北朝鮮は3週連続のミサイル発射、29日朝の短距離弾道ミサイルは、日本海で日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられます。G7で安倍総理が北朝鮮に圧力を加えるべきだと率先して述べたことに反発し、「日本が現実を正しく見ず、アメリカに追従して我々に敵対的に対応するなら、我々の標的は変わるしかない」と主張しました。日本国内の攻撃対象を米軍基地以外にも拡大すると警告し、原発や大都会も攻撃できると、示唆しています。アメリカは、日本海に空母2隻を配備し、3隻目を準備中、マーシャル群島とカリフォルニアではICBMミサイル迎撃訓練、東アジアの軍事的緊張は続きます。アメリカに依存するだけの日本にとって、対岸の火事ではありえません。米国内でのロシアンゲート疑惑で、核のボタンを握るトランプ大統領の言動は、きわめて感情的で不安定ですから、不測の事態もありえます。緊張緩和にあたっては、日米関係ばかりでなく、日中韓がポイントです。アメリカにとっては、中東情勢とも連動しています。マンチェスターやカブールなどラマダン期間中に毎日のようにテロ事件が起こっていますから、日ロ・米ロ・中ロ・ 米欧関係も入る複雑な多元方程式です。 欧州内部も、まだまだ不安定です。
◆そんな国際環境にもかかわらず、安倍首相は、世界から警戒される、トランプべったりです。かつて日本の外交は、日米安保と国連中心主義の2本柱といわれましたが、21世紀に入って、国連安全保障理事会常任理事国入りも遠のき、むしろ国連へのご都合主義的対応が目立っています。国連核禁止条約交渉への不参加、ユネスコ世界遺産への自国推薦登録には熱心なのに、中国の南京虐殺や韓国の従軍慰安婦申請に横やりを入れて分担金拠出拒否の身勝手。国連人権高等弁務官事務所デービッド・ケイ特別報告者がまとめた対日調査報告書での 、特定秘密保護法 、メディアの自由、教科書問題、沖縄での抗議活動への圧力への批判と勧告に対しては、政府として反論・勧告拒否。共謀罪についての国連特別報告者ジョセフ・カナタチ氏の安倍晋三首相宛書簡についても、反論の閣議決定。果ては、G7での安倍首相と国連事務総長の会談内容について、外務省の作為により日本側に有利な記者発表に改竄された疑いが出ています。親分トランプ大統領の地球温暖化対策パリ協定脱退にならい、その独善を後ろ盾にした、子分の国際社会への挑戦、二枚舌外交、フェイクニュース発信です。
◆日本の国内政治は、国連人権委員会が危惧した通りに、進んでいます。 権力者の横暴・腐敗があっても、議会・メディア・社会運動の権力監視と抵抗が強ければ、韓国やアメリカのように、権力を変えたり、制限することができます。しかし、今日の日本は、若い世代の抵抗力が弱まり、大メディアが権力に囲み込まれ、北朝鮮や中国を批判できない水準まで劣化しているかに見えます。安倍内閣の腐敗を象徴する森友学園・加計学園の利益相反・公金私消の疑惑を、元自民党代議士は「もり・かけ」とよんでいますが、籠池泰典・前森友学園理事長や、前川喜平・前文部科学省事務次官のきわめて信憑性の高い証言・資料を、公文書がない・廃棄したという理由で、与党が国会では首相夫妻をガードし、行政手続きの事実調査さえ行わず、証言者への個人攻撃と脅迫で、切り抜けようとしています。
◆4月にも掲げましたが、安倍昭恵夫人がフェイスブックに投稿・コメントした、2015年クリスマス・イヴの「男たちの悪巧み」が、今となっては、的確な表現でした。安倍首相と、加計学園・加計孝太郎理事長と、三井住友銀行・高橋精一郎副頭取、増岡商事・増岡聡一郎社長の並んで乾杯する写真が、安倍首相自身の「おともだち」事業への関与、加計学園の岡山理科大獣医学部新設への「首相の後ろ盾」、今治市民の土地36億円の無償譲渡や、銚子市の千葉科学大学水産・獣医学部への92億円補助金、淡路島の「吉備国際大学南あわじ志知キャンパス」まで含めると「血税176億円」という試算もある「悪だくみ」の一部であることを、首相夫人自身が示唆しています。
◆安倍内閣の目標は、2020年までに憲法を変えることです。前回挙げた「安倍首相=日本会議=読売新聞」合作改憲案に向けて、安倍首相は、一直線です。どうやら米国側は、集団的自衛権が発動できる新安保法実行と、沖縄辺野古基地移転・確保がさしあたりの目標で、不安定なトランプ政権は、日本の右傾化や改憲問題までは、手がまわらないようです。そこで一気にお試し改憲まで持って行くのが、憲法9条の1項・2項をそのままにしたまま、3項に自衛隊を明記する安倍新改憲案の狙い。参院で審議中の共謀罪は、護憲運動、人権・福祉・環境運動を含む社会運動全般に監視の網を張って、政権に反対する声を事前に押さえ込み、内心の自由を脅かす、危機管理のための治安維持法です。すでに、多くの市民運動が監視の対象とされ、一部は表面に現れています。メールやライン、SNS、スマホ、GPS、消費者アンケート、同窓会名簿、各種カードや会員証も、無論税金や医療・年金の公的個人情報も、内閣情報調査室、警備公安警察、防衛省中央情報隊、公安調査庁などのインテリジェンス機関によって、恣意的に使われる可能性があります。加計学園問題で、首相官邸が前川・前文科省事務次官の勇気ある証言・資料公開を事前に察知し、日本一の発行部数を持つ新聞にスキャンダル記事を掲載させたのは、内閣情報調査室でしょう。逆に、安倍首相に近いTBS元記者のレイプ・スキャンダルを、官邸がもみ消し不起訴にしたことも、これも勇気ある被害者女性の実名告発で、ようやく明るみに出ました。共謀罪が成立すると、このようなかたちで、個人の日常的監視、権力の恣意的運用の幅が、いっそう広がるのです。
◆現在の日本を、日中戦争から太平洋戦争へと向かう戦前の監視国家、治安維持法・大政翼賛会・大本営発表の歴史とダブらせる議論は、ウェブ上でも多く見られます。本サイト学術論文データベ ースの常連、神戸の弁護士深草徹さんは、久方ぶりの投稿「ニワトリからアヒルの帝国軍隊−−憲法9条の果たしている役割」(2017.6)で、戦前帝国軍隊においても、自衛のためという名目の軍隊が、いったん海外に出ることで侵略の軍隊に変わっていくメカニズムを見出し、安倍改憲に警鐘を鳴らしています。私の久しぶりの書きおろし『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊・二木秀雄と「政界ジープ」』は、5月25日に花伝社から刊行されました。満州侵略の関東軍731細菌戦部隊の、敗戦後における隠蔽・免責・復権のメカニズムと、731部隊医師・二木秀雄『政界ジープ』対佐和慶太郎『真相』の、戦後10年にわたる時局雑誌の興亡が目玉です。400頁税込み3780円とやや高価ですが、アマゾンやお近くの書店で、ぜひお求めください。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4091:170602〕
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