ゾルゲ事件研究に関する短信
- 2017年 7月 2日
- 評論・紹介・意見
- 渡部富哉
*ゾルゲ事件研究の第一人者である渡部富哉さんからの短信です。いくつかの短信を編集したものです。最初にNHKの塩田純氏の新著の紹介から入り、その後にロシアのゾルゲ研究者との交流のいきさつが述べられています。(編集部)
この春、「尖閣諸島と日中外交 証言・日中米「秘密外交」の真相」を講談社より刊行しました。
NHKスペシャル
「日中外交はこうして始まった」と「戦後70年ニッポンの肖像 冷戦 日本の選択」、2つの番組の取材で得られた新資料、証言をまとめたものです。
栗山尚一、橋本恕、岡田晃など亡くなった日本の外交官、周恩来の通訳、そして米国務省首脳のインタビューを収載。さらにニクソン・キッシンジャー秘密会談の録音などをもとに、沖縄返還と日中国交正常化のなかで浮上した尖閣諸島をめぐる外交を描きました。番組では紹介できなかった新発見の外交文書も収載しています。関心のある方は、手にとっていただければ、幸いです。
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784062205672
150ー8001
東京都渋谷区神南2-2-1
NHK第1制作センター
文化・福祉番組部
塩田純
電話 03-5455-2973
FAX 03-5455-2969
私の友人のNHKの塩田さんが上記のような本を出版されました。私もただ今知りました。一読をおすすめします。なお孫崎享(元外務省情報局長)の『日米開戦へのスパイ』が祥伝社から出版になりました。「東條英機とゾルゲ事件」の副題がついています。私の「尾崎秀実の逮捕、10月15日は警保局の虚報」が引用されています。外交官の目から”ゾルゲ事件”を見るというのは面白いと思いました。すごく迫力があります。一読をおすすめします。孫崎さんは私の論文を「ちきゅう座」のプログでみたそうです。「ちきゅう座」モスクワ採り上げて下さい。よろしく。
ゾルゲ事件・ロシアから
ゾルゲ事件の研究家アンドレー・フェシューンさんが来日したので20日、歓迎会を行いました。その折り彼は2冊の近刊の本を私に提供しました。9ポ程度の細かい字で上下で1500ページもする大冊でゾルゲの在日注の活動です。勿論ロシア語ですから、ドイツシンポジウム以来お世話になっている平井友義先生に送り、せめて目次なりとも翻訳してもらいたいと要請しました。以下は先生の回答です。さらに本日、帰国したアンドレーさんからメールが入りました。その本の内容についてです。これも平井先生に送りました。
アンドレーさんは来年11月7日ロシア革命記念日にモスクワでゾルゲ事件シンポジウムをやろう、と提案されました。当日の参加者は全員が賛成でした。日露歴史研究センターは会報50号で停刊となりますが、白井久也さんに報告したところ彼は大賛成で、是非やろうとのことでした。次回の幹事会に図りますが、もし会としての対応が無理でも有志で企画してもいいと思っています。
経緯
2017年6月20日、アンドレー・フェシューンさんの来日に合わせて6月20日、新宿で彼の歓迎会を開きました。参加者は加藤哲郎(一橋大学名誉教授)、進藤翔太郎(京都大学院生)、村井征子(婦人民主新聞記者)、山本則雄(パソコン技術協力者・編集者)、隈井のり子(英文翻訳協力者)、永井靖二(朝日新聞大阪本社)渡部富哉、アンドレー・フェシューンさんでした。
当日アンドレーさんから渡部富哉に2冊のロシア語版の本が献本されました。上下2冊で9ポの細かい文字で1500頁です。語学の素養がない私はその2冊を平井友義(大阪市立大学名誉教授)に送って、せめて目次なりとも翻訳がほしいと依頼しました。昨日のことです。ところが本日すぐに先生から上記の訳文が届きました。
生涯、労働運動一筋の男に対する「謝辞」とはいえ、単純な男ですから大いに感激しました。アンドレー・フェシューさんが提案する来年11月7日、ソビエト革命100年とゾルゲ・尾崎処刑の記念日にモスクワで最後のシンポジウムを開催しようという提案は、当日の参会者全員の賛同をえましたし、その後、私の友人からも参加の意向が伝えられています。
本日、白井久也さんから連絡があり、モスクワ・シンポジウムに対する賛同の意思が伝えられました。
日露歴史研究センターは会報50号をもって停刊になりますが、モスクワ・シンポジウムは別個に検討し、実行しようという意思表示がありました。次回の幹事会で検討されることになるでしょう。差し当たり平井先生の翻訳中の「目次」に期待しています。
それを待って翻訳の道を検討したと思っています。各位のご協力をお願いします。
なお歓迎会の席上、加藤哲郎教授からゾルゲがモスクワに送った密電は日本ではその本の一部しか明らかになっていないが、その公開を要請しました。アンドレーさんは加藤教授の要請を受けて、好意的に帰国後収録したものを送ることを約束しました。日露歴史研究センターは会報50号で一応幕を閉じますが、有志の研究者によって今後の大きな研究課題となるでしょう。
なおアンドレー・フェシューンさんは18日に帰国の途につきました。モスクワ・シンポジウムの具体化についてはメールで打ち合わせをすることになりました。
2017年6月25日 渡部富哉報告
平井友義教授より アンドレー・フェシューンさんから献本を受けた図書2冊について
渡部さま 図書うけとりました。これは2014年に来日されたミハイイル・アレクセーエフの『日本におけるゾルゲとソ連軍事諜報機関』第1巻(1933-1938年)、第2巻(1939-1941年)、モスクワ、2017年 です。献辞として、「深く尊敬する渡部さんへ。 偉大なる諜報員の記念を残されたことへの感謝と謝意をこめて。著者からの敬意とともに。署名」とあります。なお冒頭の謝辞に、「著者はアレクセーエフ(故人)、コルパキット、セレブリャンコフ、カリモフ、グリゴリエフ、タターリンツェフから本書の執筆中に受けた援助と支持にたいし感謝し、あわせて日本の研究者・白井久也(以下本書のなかでは日本人名は姓のあとに名前という本来の順序に従う) 渡部富哉および日露歴史研究センターの方々にも謝意を表明いたします。同センターはリヒャルト・ゾルゲとその戦友の記念の保存にあたっています。 フェシューンには特に感謝します。彼がコルパキットとともに、この<未完の>作品を完成させるという<偉業>を引き受けられたからです。」と書かれています。かなり詳しい目次がありますので、次便で送りましょう。 平井
渡部さま 本書は小生が送っていただいたコピーとは別の新著です。コピーの方は中国におけるソ連の軍事諜報機関をあつかったもので、しかも1929年で終わっています。(コピーは2014年の国際シンポのさいアレクセーエフ本人がフェシューン氏の指示で持参したものではありませんか?)また献辞は著者アレクセーエフのもので、日付は2017年5月12日となっています。渡辺さんとお会いになる日が決まればお知らせください。 平井
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion6775:170702〕
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