「独立を目指すクルド人への懲罰中止を!」 クルド自治区大統領が世界に訴え
- 2017年 10月 22日
- 評論・紹介・意見
- クルド人坂井定雄
イラク・クルド自治区政府議長(大統領)は20日、世界各国と海外在住クルド人に対して「独立の意思を問う平和的権利を行使したクルド民族は、イラク政府による封鎖と集団的懲罰に直面している」として、「クルド民族がまたもジェノサイド(集団虐殺)と大災難を受けつつあるのを防ぐために、それぞれの政府に働きかけてほしい」と訴えた。
イラクのクルド自治区政府は9月25日、イラク国内の自治区と自治区政府が実効支配する隣接のキルクークおよび海外在住クルド人による、クルド人国家の独立の可否を問う住民投票を実施、投票率72.1%、賛成92.7%で可決された。自治区政府はイラク政府に独立の実現のために交渉開始を求めたが、イラク政府側は住民投票そのものが憲法違反だとして拒否。10月15日、政府軍と乱暴で悪名高いシーア派民兵軍団がキルクークへの攻撃を開始。2014年夏に同地を占領していたイスラム過激派イスラム国を追い出して以来、同地の治安を維持してきたクルド人武装勢力ペシュメルガは、ほとんど無抵抗でクルド自治区に向け撤退を開始。政府軍側はそれを追撃して、一部では激しい戦闘になっている。
イラク政府のアバデイ首相は16日、攻撃開始後の記者会見で、「クルドの住民投票は終わり、その結果も過去の出来事になった。国家権力はクルド地域を含むすべての国土に適用される」と宣言している。
イラク政府が世界的な産油地域キルクークの実効支配を、クルド自治政府から取り戻し、クルド独立国家樹立を阻止するだけで自治区はこれまで通り存続させる可能性は大きいが、もし自治区の存続を奪う、あるいは制限しようとすれば、内戦に拡大する危険がある。(了)
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〔opinion7050:171022〕
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