5年ぶり職場復帰⇒社長就任MBC、ストライキ100日目KBS
- 2017年 12月 19日
- 評論・紹介・意見
- NHK原発小原 紘韓国
韓国通信NO542
韓国の二つの公共放送(KBS、MBC)では、管理者を含む労働者たちが「放送の公正・公平」を主張して壮絶な闘いを繰り広げてきた。わが国でそのような運動は聞いたことがない。韓国社会が遅れているのか日本が進んでいるのかは読者におまかせしたい。
なかでもMBC労組は2012年に170日間にわるストライキを決行し、44名が解雇・停職処分となった。「解雇無効」の判決が出ても会社側は控訴、労使の対立は泥沼化した。同様にKBSも部長クラスのほとんどの職員が「役職を返上」、労働組合とともにも社長の退陣を求め9月からストライキを継続中だ。
両組合の運動に新たな動きが生まれている。MBCの経営刷新の動きだ。
<面接試験で選ばれた社長>
ストライキ71日目、MBCの社長が突然解任され、後任に2012年のストライキで解雇されたチェ・スンホ氏(55)が就任した。新社長のチェ・スンホン氏はMBCの看板報道番組「PD手帖」のプロデューサーであり、ほかにも社会性のあるドキュメンタリーを手がけた人物として知られる。組合の委員長を歴任、ストライキ中に解雇された。解雇後はオンライン調査専門メディア「打破」で活躍、李・朴両大統領の放送掌握をテーマにした映画『共犯者たち』の監督をつとめるなど、放送の正常化に取り組んだことでも知られている。解雇闘争を闘い1997日ぶりの解雇撤回と同時に「社長」として職場復帰した。
社長になった経緯が興味深い。 MBCの経営権を持つ大株主、放送文化振興会(放文振)が実施した面接試験(12月7日)で他のライバルに競り勝ち「合格」して社長になった。
報道の民主化の先頭に立ち、能力に溢れた人材であることは誰もが認めていたが、経営のトップに躍り出たことに韓国でも一様に驚いたようだ。驚くのはそればかりではない。それまで社長選出が密室で行われていたのを改め、「透明性」を高めるために、候補者たちは視聴者と社員の前で政策発表をし、面接審査の過程はホームページ、
チェ候補は説明会で過去の腐敗と権限乱用などを集中的に調査、徹底した責任を追及すると約束。今後の抱負として、ニュース部門では「機械的中立性の影に隠れない、分析と批判を入れたニュース」「デパート式ニュースの脱却」「調査報道の復活」「10年後に見るに値するドキュメンタリーの作成」などを公約にあげた。
初出勤した今月8日、新社長は労働組合との共同宣言文を発表。解雇者6人は即時復職した。復職した記者の一人は「覚めたくない夢」と喜びを語った。
大株主の放送文化振興会はこれまで政権の意を汲んで天下り社長を選んできたが、公営放送としての国民の期待に応えるために経営の刷新を断行した。社長となったチェ・スンホ氏は「MBCを再建して公的責任を正しく遂行する公営放送を取り戻すために全力を尽くしたい」と語った。
一方、闘争継続中のKBSでも理事長、社長の退陣はもはや時間の問題となっている。李明博元大統領の公共放送乗っ取りと情報操作の実態が明らかになりつつあるからだ。
<テレビを買ったら受信料を払え>
わが国の公共放送NHKの話題は、もっぱら受信料制度が合憲かどうかで争われた最高裁判決(6日)であろう。憲法が保障する「契約の自由」は認められず800万所帯とも1000万所帯ともいわれる受信料不払い者は「契約の自由」を理由に支払いを拒めなくなった。
受信料の問題はともかくとして、放送の公正さという点で、NHKが「テレビを買ったら受信料を払え」と胸を張って主張できるのか大いに疑問だ。
NHKの中立性でまず思いだすのはETV2001「問われる戦時性暴力」での番組改変事件がある。安倍晋三(当時官房副長官)ら右派政治家が従軍慰安婦問題でNHKにねじこんで改ざんを迫った。NHKがこれほど権力に弱いとは信じがたいことだった。極めつけは首相のオトモダチ籾井が会長に就任すると「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」と発言し、あからさまな政府の広報機関宣言をしてしまったことだ。受信料を払わせることにエネルギーを費やしても「公正・公平」な報道に努力を傾けているとはとても思えない。政府が知られたくないものは知らせない。政府が伝えたいものは忠実に伝える。ニュース番組の順番、時間のどれをとっても政府に「忖度」しているように見える。李明博元大統領が強く望んだことは「政府の批判」をさせないことだった。批判をする番組は「偏向」していると攻撃し、スタッフを左遷させた。
MBCの新社長が語った抱負―機械的中立性の影に隠れない、分析と批判を入れたニュース――デパート式ニュースからの脱却―は、わがMHKに捧げたい言葉でもある。今回の最高裁判決で一番欠けていたのは「契約の自由」という法律問題ではなく、「報道の公正」が問われるべきだった。国営、官営放送局に受信料を支払う義務が国民にあるのかどうか。
<東海第二原発は廃炉に>
茨城県東海村から直線距離87キロmにある我孫子市の市民として東海第二原発廃炉を求める請願行動を準備中だ。請願文書の作成、署名用紙を準備して市会議員と打ち合わせをした。危険だから寿命を40年にして廃炉と決めたはずだが、20年延長して使わせろという住民無視の「ムシ」のいい話は絶対に認められない。手作りのチラシを作って千人くらいの署名は集めたいと仲間と話した。市議会で意見書が承認されると政府、原子力規制委員会、茨城県に送られる。
栃木県益子町議会では住民たちの請願で既に意見書が採択された。
稼働したばかりの愛媛県の伊方原発3号機の稼働差し止めの仮処分決定が広島高裁であった。またひとつ希望が見えてきた。
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〔opinion7200:171219〕
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