愛猫・とらの助太刀(299字)
- 2018年 12月 9日
- 交流の広場
- 熊王信行
我が家の愛猫・とらは、飼い主と気持ちが通じました。 加えて或る程度の意思も通じました。 人間の私への愛猫からの意思も通じました。 猫の方も人間と暮らす内に、人間に自分の意思を伝える工夫をするようでした。
例えば、啼き声です。 イエスとノー等のお互いの意思は簡単に通じました。 腎臓病罹患後の療法食に関わってですが、当初の療法食は愛猫にはとても不味かったようであり、その意思を私に伝えるのには、食器に入れた療法食を前にして私を見ながら横を向き、「ニャー!!」と大きく叫び、拒否の意思を伝えました。
それから世に出た療法食を全て揃える程に美味しく食べられるものを探しました。 そのような試みが別れるまでの六年以上も続き、美味しく食べられる猫缶が発売されて間も無くお別れが来てしまいました。
猫缶のメイカーさんを恨む積りはありませんが、もっと早く腎臓病の猫が美味しく食べられるものを発売して欲しかったものです。
ともあれ、以下は、茶髪、ポニーテールの武闘派・美女・由里とその愛猫・とらの300字小説です。
「とら~、獣医さんに診て貰いに行くからね~。」と籠に入れた愛猫・とらに声かけた由里が私鉄の駅前にあるタクシー乗り場に急ぐが、直ぐに気が変わる。 「電車で行くか。」
ホームに出るとすぐ来た電車に乗り込み、「駅員め、とらを荷物扱いかよ~。」と切符を手に何やら不満気な由里。 次の瞬間、右後ろを振り向き様、男の手首を右手で掴み捩じる。 ギャーと声を上げた初老の男が床に転がるが由里は男の手首を離さずに、更に捩じる。
「この野郎、女の尻を触りやがって。」と血相を変えた由里。 左手に持つとらの入る籠を床に置き様、更に手首を絞める。
とその時、籠の隙間から猫の手が伸び、痴漢の顔を引っ掻く。
これぞ、猫の助太刀。否、恩返しか?
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