20ミリシーベルトの恐怖
- 2011年 5月 25日
- 時代をみる
- 宇井 宙放射線被曝
福島の子どもたちを放射能から守ろうとする福島の親や市民団体などが5月23日、文科省前に集まり、文科省が定めた学校の暫定基準20ミリシーベルト(校庭での毎時3.8マイクロシーベルト)の撤回を求めるため、高木義明大臣との面会を要求したが、高木大臣をはじめ、5人の政務三役はついに姿を見せなかったという。子どもたちを何としてでも放射能から守りたいという親たちの切羽詰まった思いに、どうして文科省の大臣や政務三役は耳を傾けようとしないのだろうか。http://www.foejapan.org/infomation/news/110523.html
そもそも、厚労省は、あまりにも当然のことながら、放射性管理区域(0.6マイクロシーベルト/時以上)で子どもを遊ばせてはならないと発言しているのに、文科省はその3倍以上の放射能汚染地域で子どもたちが遊んだり運動したりしてよいというとんでもないことを言っているのである。では、実際に、子どもたちにとって、20ミリシーベルトとは、どのくらい「安全」なのであろうか? よく知られているように、放射線被曝の感受性(被害の受けやすさ)は低年齢ほど高く、年齢が高くなるにつれて低くなる。小出裕章氏が4月29日、明治大学で行った講演の原稿が「ちきゅう座」にアップされている。
http://chikyuza.net/archives/9063
その中の「Ⅲ.起きてしまった福島原発事故」の「子どもの被曝は何としても避けなければならない」のところに、「放射線被曝で受ける危険の年齢依存性(白血病を除くガン死)」というグラフが掲載されている。このグラフによれば、「1万人・シーベルト当たりのガン死者数」は、全年齢平均が約4000人なのに対し、10歳では10000人、5歳では13000人、0歳児では15000人となっている。これは、10歳の子ども1万人が1シーベルトずつ浴びれば全員死亡し、100ミリシーベルトずつ浴びた場合は1000人が死亡、10ミリシーベルトずつ浴びた場合でも100人が死亡するということを意味している。
今、福島県の学校に何人の子どもたちがいるのか私は知らないが、5月2日に行われた「20ミリシーベルト撤回を求める対政府交渉」において、参加者の中から「今管理区域レベルの場所に30万人の子がいる」という発言があった。
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/05/blog-post.htm
この30万人の子どもたちの平均年齢を10歳と仮定し、さらにこの30万人が20ミリシーベルトの放射線を浴びたと仮定すると、この30万人で300,000×0.02=6,000人・シーベルトの被曝をすることになる。これに先ほどのグラフによる10歳のリスク係数を当てはめると、何と6000人が将来ガンで死亡するという結果が出る!(注) こんなことが許されていいわけがない。文科省は直ちに、少なくとも管理区域レベルの子どもたちを避難させる措置をとるべきである。
(注)リスク係数の捉え方は、研究者・機関によって幅がある。例えば小出氏は「10人・シーベルト当たりのガン死者」のリスク係数として、原子力推進派である国際放射線防護委員会(ICRP)と小出氏が信用しているJ.W.Gofman氏の数値を挙げている(表2)が、それによれば、ICRPは平均人で1、子どもで5と評価しているのに対し、Gofman氏は平均人で4、子どもで20と評価している。Gofman氏のリスク係数を先ほどの6000人・シーベルトに当てはめると、何と12000人の子どもが将来ガンで死亡することになる。しかし文科省が依拠しているICRPのリスク係数を用いたとしても、3000人の子どもがガン死することになる。これを文科省は許容範囲と見なしているのである!
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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