アーカイブを自作する
- 2020年 1月 2日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
セミナーや講演会にもよるが、おおかた五百円から千円ほどの参加費で配布資料を頂戴できる。頂戴した資料、評価は人さまざまだろうが、素人目にはなんらかの形で残されたほうがと思うものがある。「ちきゅう座」や似たようなサイトに投稿された論考や随筆を読んでいると、このまま流れていってしまうのは、あまりにもったいないと思うこともある。
配布資料をセミナーや講演会の主催者や投稿サイトがアーカイブしてくれればいいが、ボランテァで運営されているのも多いだろうし、個人的にはお手を煩わせるのも気がひけるだろう。人の手をかりずに、手間隙かけずに残す方法はないものかと考えてきた。気がついてみれば、コロンブスの卵のようなもので、ネット上でアーカイブ(相当)を作成するサービスが無償で提供されていた。
「ちきゅう座」などの投稿サイトに掲載されたものなら、Google Chrome(以下、略してGoogle) で演題や著者名、あるいは配布資料のなかの特徴的な語句を入力して検索すれば見つかる。「ちきゅう座」(以下、ちきゅう座を投稿サイトの代表として扱う)が消滅でもしないかぎり、電子データとしてサーバーに残っている。たとえ著者が配布資料のファイルを消失しても、「ちきゅう座」からコピーできる。
多くの著者がご自身のPCのハードディスクやその他のメモリデバイスに資料(論考)のファイルを保存していると思う。ご自身の資産としてなら、それで十分だろうが、お知り合いや論考に関心のある巷の人たちが、そのハードディスクにアクセスできるわけではない。また、論考が一つのファイルで完結していない、たとえば他の論考と緊密な関係にある場合でも、保存された論考は一つひとつバラバラで関連づけられてはいない。
寄稿した論考なり随筆を、「ちきゅう座」とは別に広く一般の人々に公開する――Googleで検索できる形のアーカイブにする方法がある。それぞれをアーカイブするだけでなく、関連する論考を整理して、論考集や随筆集に編集もできるし、後日新しい論考や随筆の追加もできる。
アーカイブではなく、印刷された書籍の形で残そうとすると、少なくとも四つの問題がある。1)費用がかかる、2)在庫を抱える、3)絶版になる。4) 改版がむずかしい。電子書籍のアーカイブなら、表紙を作る手間はかかるにしても、この四点は問題にならない。アマゾン(楽天も?)であれば、著者が販売を停止しなければ、たぶんいつまでもサイトから入手できる。ここで購入といわずに入手というのには訳がある。アマゾン(楽天も?)では販売価格をゼロ円に設定できる。ここまでしっかりした論考や随筆を無償で提供? と抵抗というのか思い入れがあるのなら、販売価格を五十円でも百円でも、あるいは二千円でも三千円でもお好きな価格に設定すればいい。
楽天でもアマゾンでも、あるいはそれ以外にも電子書籍として出版するサービスを提供しているところがあると思うが、アマゾンだけしか経験がない。アマゾンの宣伝をするつもりもないし、Kindle版が電子書籍のあるべき姿などとは思わない。拙い経験からでしかないが、アマゾンのサポートには満足している。あれこれどうするんだろうと行き詰ったら、何かわからないことがあればメールで問い合わせすればいい。即日ではないしにしても、何時になったら返信がと待ちくたびれるようなこともない。誰も彼もがPC上の作業に長けているわけでもないし、Kindle版出版サイト上の操作を熟知しているわけではない。アマゾンのサポート部隊は、そんな人たちのちょっとした疑問にも根気よくわかりやすく説明してくれる。
初めてのこと、慣れない作業にフラストレーションはつき物だが、それを押しても電子書籍のかたちでアーカイブを残すのは一考に値すると思う。投稿サイトの世話になることもなく、自分の論考や随筆を一つの書物として作れる。その書物、ちょっとした手間はかかるが、費用はゼロ円。在庫になることもなければ、絶版になることもないし、いつでも改版できる。
電子書籍、Kindle本だと、アマゾンだからと躊躇う人もいるだろう。その気持ち、わからないわけではないが、ものは考えよう、無償で提供されているアーカイブ・サービスだと思えばいい。価格をゼロ円にすれば、無償サービスにただ乗りみたいなもの。アマゾンはサーバーを無償提供するだけで、すくなくとも直接の利益はない。
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9317:200102〕
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