今度は一律10万円ですか~感染が拡大する中で
- 2020年 4月 23日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子
4月4日の当ブログ記事で、「布マスク2枚の次は何ですか~税金なんですからムダ使いしないでください」と書いた。http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2020/04/post-5c6025.html
私の住む佐倉市のHPによれば、4月20日現在、感染者24人となった。また、報道によれば、佐倉市内の高齢者施設で集団感染が発生、感染者は7人に及んだという(『毎日新聞(千葉版)』4月20日)。
医療や介護の現場での感染が拡大したのはなぜだろうか。マスク・防護服などの不足、人工呼吸器、重傷者入院ベッドなどの不備、そして何より、医療従事者や介護者の人材の不足などは、2月当初より指摘されていたし、海外の事情も届いていたはずである。PCR検査を重症者に限るとして、検査数を極力絞ったことが要因ではないか。オリンピック延期発表後は、感染者の拡大はあったものの、検査数が劇的に拡大したわけではなかった。陽性判明者の隔離も遅々として進まず、いまになって、都市部でのホテル借り上げなどが始まっているのが現状である。
首相は、得意げにマスクの一斉送付を発表し、7割から8割減の外出制限要請を強調した。マスメデイアは、466億円かけて配布するマスクは小さすぎる、不良品が多い、届くのがいつかわからないなどと揶揄することはあっても、連休や週末の気のゆるみによる外出が、感染拡大の最大の原因であるかのように喧伝し、タレントやスポーツ選手たちの外出自粛の呼びかけを増幅させたりしている。外出自粛は、たしかに大事ではあるが、政府がこればかりを強調するのは、これまでの愚策の責任転嫁のように思えてならない。検査希望者の検査を抑え、陽性軽症患者を自宅療養の名のもとに放置されていたことこそが、拡大につながってしまったのではないか。発熱外来の設置や検査手続きの簡素化により、感染者の早期発見と隔離が肝心ではなかったのか。
政府は、4月7日に発表した収入減少者への30万円給付を、すったもんだで、わずか1週間で変更、4月16日には、一律10万円給付が発表されたのだった。まさに「朝令暮改」である。ところが、その手続きも、手上げ方式だの、住民基本台帳ベースにするだの閣内不一致があらわになり、国民は戸惑うばかりであった。4月20日の閣議決定では、住民基本台帳ベースで書類が届き、郵送、オンラインでの申請の際に振込口座番号を記入するという。個人情報流出のリスクを担保する保証がない。どこでも起こり得る流出や漏洩である。
そして、第一に、一人一律10万円では、現実的な不公平が、まず、問題視されるだろう。収入の減らない人、富裕層の人たちにも給付されることになり、一方で、本当に困っている人が、当座だけでもしのげる給付にも程遠いといわざるを得ない。ホームレスの人たちやネットカフェを転々としている人たち、施設やシェルターにいる人たちはどうなるのだろう。4月20日の閣議で決まった、補正予算を含め、このための予算は12兆8803億となる。総予算117兆余円だから、約一割に当たるのだ。
安倍首相は、会見や会議の発言において、有識者会議や諮問会議の意見を踏まえてという文言を必ず付け加え、「専門家」のお墨付きのごとく振舞うが、「専門家」は専門家で利用されることは承知で、たとえ、齟齬があったとしても抗議をすることもない。さらに、彼らは、マスメディアに入れ替わり立ち替わり、解説者として登場し、政府の広報官と化す。とくにNHKの報道においてはその傾向が著しく、NHKの報道自体が、まさに政府広報となる。一部の新聞や民放では、世論調査などを背景に、政府に批判的な解説者をバランスよく配することもあり、芸人やスポーツ選手を動員して、「希望をもってがんばろう」と、お茶をにごすこともある。
いったい私たち家庭にいる高齢者は、どうしたらいいのか。ひたすら家にこもり、テレビに向かって文句を言っても、何も変わらない。ときにはストレッチをし、布マスクを手縫いしてみたり、少しばかりていねいにカレーを作ったり、タンスの衣類の入れ替えをしたりすることぐらいしかできない。
世の中で、テレワークなどできる仕事は限られ、毎日出勤しなければならない人たちに外出自粛といっても無理だろう。売り上げ減から廃業寸前の店主たち、職を失った人たち、学校や保育所、学童保育所に行けなくなった子供たち、給食がなくなって、まともに三食がとれなくなった子供たち・・・。勉学やバイトを絶たれた学生たち、予定した手術が延期になった知人もいる。
小さくてもいい、一人でもいい、この理不尽に声を上げ、記憶に留め、記録を残しておきたいと思うのだった。
はや、ドクダミが繁茂し始めたこんなところにハハコグサが。
毎年、ここには、ウラシマソウが咲き出す。この日、近くの公園の散策路でのこと、前日の強風で落ちた木の枝かと思ったら、なんと動き出したのはヘビだった。
初出:「内野光子のブログ」2020.4.21より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2020/04/post-4a2264.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion9677:200423〕
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