「安倍政権下での改憲に反対」が多数に 各新聞社の全国世論調査で明らかに
- 2020年 5月 5日
- 時代をみる
- アベ岩垂 弘憲法
5月3日は憲法記念日。日本国憲法が施行されたのは1947年5月3日だから、この日で73年を迎えたわけである。それを機に、新聞・通信各社はそれぞれが憲法記念日直前に実施した憲法に関する全国世論調査の結果を発表したが、それらの結果から憲法問題についての最新の民意が浮かび上がった。一言でいうと、憲法改定については賛否両論が拮抗しているが、「安倍政権下での改憲には反対」という人たちが国民の多数派を占めているということだ。
5月3日の紙面で憲法に関する全国世論調査を発表したのは在京6紙のうちでは朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3紙。共同通信は4月28日に同様の調査結果を発表した。これらの調査結果から、憲法問題に対する民意をさぐってみた。
世論調査での各社の質問項目には共通のものもあれば、各社独自のものもある。私は、共通する質問項目の回答に注目した。共通した質問に対する回答が同じか、同じに近いものであれば、それは1つの傾向、すなわち民意を示すものだと考えたからだ。
まず、国民が憲法改定についてどう考えているか知りたかった。そこで、各社の調査結果に目をやると――
<朝日>
「いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか」という質問があり、それへの回答は、「変える必要がある」43%、「変える必要はない」46%
<読売>
「今の憲法を、改正する方がよいと思いますか、改正しない方がよいと思いますか」との質問があり、それへの回答は、「改正する方がよい」49%、「改正しない方がよい」48%、「答えない」3%。同紙によると、前年は「改正する方がよい」56%、「改正しない方がよい」46%だったという。
両紙の調査結果から言えるのは、憲法の改定問題では、賛否両論が拮抗しているということだろう。そのせいだろう。読売の紙面は「改憲賛否 大きく割れる」との見出しを立てていた。
次に私が関心を持ったのは、改憲に並々ならぬ熱意を見せている安倍首相を国民はどう見ているのだろうか、という点だ。これに関しては、3社がそれに関する質問を試みていた。
<朝日>
「安倍首相は憲法改正を目指すことを明言しています。安倍政権のもとで憲法改正を実現することに、賛成ですか。反対ですか」との質問があり、それへの回答は「賛成」32%、 「反対」58%。
<毎日>
「安倍首相の在任中に憲法改正を行うことに賛成ですか、反対ですか」との質問があり、それへの回答は「賛成」36%、「反対」46%。
<共同通信>
「安倍政権下での改憲は、反対58%、賛成40%だった」(4月29日付共同通信記事)
民意はすでに明らかであろう。「安倍改憲」に反対なのだ。
ところで、安倍政権と自民党は、国会で改憲審議を始めようと野党に働きかけるなど躍起だが、これにからんで、「朝日」は「国会での憲法改正の議論を、急ぐ必要があると思いますか。急ぐ必要はないと思いますか」との質問を設けて、有権者の反応をさぐっていた。その結果は、「急ぐ必要がある」22%、「急ぐ必要はない」72%であった。この大差を見よ。有権者の意向はもはや明白と言えるだろう。
緊急事態条項の賛否も二分
さらに、自民党内では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、現行憲法に「緊急事態条項」を設けるべきだとの意見が強まっている。こうした状況に注目したからだろうか、朝日、毎日、読売、共同通信の4社とも今回の憲法に関する全国世論調査で、緊急事態条項についても質問を発していた。その結果はこうだ――
<朝日>
「自民党の憲法改正の条文案には『大規模災害などの際に、内閣が法律に代わる緊急政令を出して、国民の権利を一時的に制限したり、国会議員の任期を延長したりする緊急事態条項の創設』とあります。これについてどのように考えますか」との質問があり、これに対する回答は、「憲法を改正して対応するべきだ」31%、「いまの憲法を変えずに対応すればよい」57%、「そもそも必要ない」8%。
<毎日>
「新型コロナウイルス感染拡大を受けて、自民党内には、憲法に緊急事態条項を設けるべきだとの意見があります。賛成ですか、反対ですか」との質問に、「賛成」が45%、「反対」が14%、「わからない」が34%。
<読売>
「大災害などの緊急事態における政府の責務や権限は、今の憲法には規定がなく、個別の法律で定められています。これについて、あなたの考えに最も近いものを、1つだけ選んで下さい」との質問に、「憲法を改正して、政府の責務や権限を条文で明記する」が31%、「憲法を改正しないで、政府の責務や権限を明記した新たな法律を作る」が49%、「今のままでよい」が16%、「その他」が1%、「答えない」が3%。
<共同通信>
「大規模災害時に内閣の権限を強め、個人の権利を制限できる緊急事態条項を憲法改正し新設する案に賛成51%、反対47%%だった」(4月29日付共同通信記事)
4社の回答にはかなりの差異があり、にわかに国民の意向を断定できない。が、全般的に見て、緊急事態条項の創設に対する国民の受け止め方は賛否両論に二分していると言っていいのではないか。
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