本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(257)
- 2020年 5月 11日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
お金の役割
古典的な貨幣論では、「お金の役割」として、「価値の尺度」、「交換手段」、そして、「価値貯蔵手段」の三点が指摘されているが、現在では、すでに、「交換手段」の面において、「マネーの機能不全」が始まっているものと考えている。つまり、「お金は、必要な商品と交換できて、初めて役に立つ」という事実のことだが、現在では、「マスク」や「貴金属」などのように、「現物の不足により、交換ができなくなっているケース」が散見される状況となっているのである。
別の言葉では、「大膨張したマネー経済」、そして、「縮小する実体経済」の結果として、現在では、「大量のマネー」が存在するものの、多くの人々は、いまだに、「預金」や「現金」、あるいは、「金融商品」などの資産として保有しているのである。つまり、「これらの資産を持っていれば、いつでも、実物商品に交換が可能である」という錯覚を抱き、「ゼロ金利やマイナス金利でも、預金や国債などの資産を保有し続けてきた状況」だったが、現在では、徐々に、「マネーの交換機能」が働かなくなり始めているのである。
そして、今後は、この事実に気づいた人から、「本当に必要な商品」、そして、「本当に安全な資産」への切り替えが始まるものと思われるが、「人々の価値観」が、「お金儲けよりも、命を維持すること」に大転換した現在では、「ほとんどの商品が、不要不急なものだった可能性」も指摘できるようである。つまり、今回の「コロナ・ショック」には、「人々の認識」を改める効果も存在したようだが、一方で、私自身としては、これから想定される「本格的な大インフレ」に対する「予行演習」ではないかと感じている。
具体的には、「食料」や「トイレットペーパー」などの「生活に必要な物資」に関して、今後、徐々に、「交換機能」が失われ、また、「価格の上昇」により、「価値貯蔵手段」としての機能が減少する事態が想定されるのである。つまり、「大インフレ」が始まることにより、「価値の尺度」が変化する状況のことだが、この点については、すでに、「金価格の上昇」が、事実を証明しているものと考えている。
このように、現在では、「神様となったデジタル通貨」に関して、さまざまな「機能不全」が発生し始めた状況ともいえるようだが、この事実が、世界的に理解されるのは、「紙幣の大増刷」が実施されるときだと考えている。つまり、このことが、「神から紙への変化」を意味しているが、今回の「コロナ・ショック」については、今後、「紙幣の増刷」、あるいは、「インフレ政策」に対する言い訳として利用される可能性も考えられるようである。(2020.4.14)
------------------------------------------
金市場における異変
現在、世界の金(ゴールド)市場で、いろいろな異変が発生しているが、その一つは、「ロンドン市場の現物価格」と「ニューヨーク市場の先物価格」との間に、大きな開きが発生している状況である。そして、この理由としては、やはり、20年以上も前から噂されてきた「金の価格操作」が指摘できるようだが、実際には、「デリバティブの大膨張で、大量の資金を手にしたメガバンク」が、「金(ゴールド)」のみならず、「金利」や「株価」、あるいは、「為替市場」までをも支配してきた状況のことである。
より具体的には、「ゼロ金利」や「マイナス金利」などの「超低金利状態の蓋」で覆われた「金融界のブラックホール」の内部で、さまざまな価格操作が行われてきた疑いが存在するのである。そして、今までは、「金の価格操作」に対する裁判が実施されながらも、「証拠不足で、有罪の判決が出なかった」という状況だったが、この点については、現在の「日本における森友問題」のように、「政府や官僚が、具体的な証拠や資料を示さないために、一般庶民にとっては、全く、打つ手がない状況」だったようにも感じている。
つまり、一種の「権力の壁」とでも呼ぶべきものが存在した状態のことだが、この点に関して、過去の歴史が教えることは、「時間の経過とともに、必ず、真実が暴露される」という展開だと感じている。別の言葉では、「王様の耳はロバの耳」という物語のとおりに、「真実が隠し切れなくなる状況」のことだが、今までは、「超低金利状態を維持するために、さまざまな市場で、いろいろな価格が、強引に押さえつけられてきた状態」だったものと思われるのである。
そして、このことが、いわゆる「海中のビーチボール状態」のことだが、実際のところ、現在の「さまざまな商品価格」については、歴史的に、きわめて異常な事態となっていることも見て取れるのである。つまり、前述の「マイナス金利」を筆頭にして、本末転倒の状態が、多くの分野で発生しているわけだが、実際には、映画の「猿の惑星」のように、「主客が転倒した社会」において「真実が見えなくなっている状況」とも思われるのである。
そのために、今後の「金価格」は、もっともおおきな注目点の一つだと考えているが、現在、発生している現象は、「銀やプラチナなどの現物が、世界的に手に入りにくくなっている状況」、すなわち、「大量に存在する現代のマネー」に比較して、「さまざまな商品の量がわずかな状態」となっているために、「お金を持っていても、役に立たない状況」が、いろいろな分野で発生し始めている状況とも言えるようである。(2020.4.14)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9739:200511〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。