汚染水の浄化達成は極めて困難─ワシントンポスト紙
- 2011年 6月 4日
- 時代をみる
- 鈴木顕介
東京電力は6月20日にも環境に漏れ出す恐れのある福島第一原発の汚染水対策の決め手として浄化装置の稼働を急ぎ、15日にも試運転にこぎつけたいと3日発表した。しかし、4日のワシントンポスト電子版は原発敷地内に設置した、仏アレバ社の浄水装置が本来持っている稼働能力を発揮することは、ほとんど期待できないとの米専門家の見方を伝えた。
アレバ社の放射性物質除去装置は、フランスのラ・アーグ再処理工場で使われているシステムと同様の装置である。1日の処理能力が1200㌧であるが、これはあくまで正常に作動している再処理工場での能力である。同紙はこの処理能力が発揮されるのは極めて疑問だと、次のように報じた。
複数の専門家は放射性物質だけでなくがれき、油、海水の塩分の混じった汚染水を効率的に処理し、能力通りの処理ができるかを判断するのは難しいとしている。汚染水を海洋投棄してもよいレベルまで浄化するには、一回だけでなく、何十回も浄化を繰り返さねばならない。スリーマイル原発事故の処理に当たった原子力技術者レイク・バレット氏は「通常処理は注意深く化学物質をコントロールしながら、少量ずつ行う。ここの汚染水はとてつもない量で、雑多な化学物質を含んでいる」と指摘する。アレバ社の報道担当者パトリシア・マリー氏は「うまく行くといいが、正直、どうなるかは言えない」と困難さを認めた。Nuclear Safty Projectの原子力安全計画責任者デビッド・ロックボウム氏は「この処理は100%のものではないが、やらないよりはましだ。やらなければ、汚染水が蒸発し、放射性物質をより遠く、広い範囲にまき散らすだけだ」と述べた。
もし、現在の東電処理計画の要となっているアレバ社の浄化装置が予定した処理能力を発揮できなければ、核燃料の冷却─注水継続─汚染水の増加─浄化水の循環による冷却の東電計画は破産する。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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