フジ住宅ヘイトハラスメント訴訟。原告女性は何を求めて提訴を決意したのか。
- 2020年 7月 21日
- 評論・紹介・意見
- 司法制度弁護士澤藤統一郎韓国
(2020年7月20日)
ヘイト企業として名を馳せている「フジ住宅」(大阪府・岸和田市)。社内での「ヘイトハラスメント」を苦痛とした、在日3世の女性社員が果敢に会社を訴え、4年余の審理を経て、7月2日に大阪地裁堺支部で一審勝訴判決を得た。文字通り、勝ち取ったというにふさわしい。世の中には大した人がいるものだ。こんなひどい会社の中でのたった一人の闘いを毅然とやり抜いた人。おそらくは、同僚からの暗黙の支援があったのだろうと想像する。
原告弁護団は、「ほぼ完全勝訴! ご支援ありがとうございました!!」という判決の評価。ただし、原被告双方が控訴の見込みだという。おそらくは、双方の控訴があって、既に大阪高裁に控訴審が係属しているのだろう。
この訴訟は、損害賠償請求事件。原告は、フジ住宅株式会社に勤務する在日コリアン3世の女性、被告はフジ住宅とその会長の今井 。
判決は両被告に連帯して110万円の支払いを命じる請求の一部認容。判決理由で会社の次の行為を違法と認めた。
(1) 被告らが社内で全従業員に対し、ヘイトスピーチをはじめ人種民族差別的な記載あるいはこれらを助長する記載のある文書や今井会長の信奉する見解が記載された文書を大量に反復継続して配布した。この行為は、労働者の国籍によって差別的取扱いを受けない人格的利益である内心の静隠な感情に対する介入として社会的に許容できる限度を超え、違法であるとした。
(2) また、フジ住宅及び今井会長は、地方自治体における中学校の教科書採択にあたって、全従業員に対し、特定の教科書が採択されるようアンケートの提出等の運動に従事するよう動員した。これは、業務と関連しない政治活動であって、労働者である原告の政治的な思想・信条の自由を侵害する差別的取扱いを伴うもので、その侵害の態様、程度が社会的に許容できる限度を超えるものといわざるを得ず、原告の人格的利益を侵害して違法であるとした。
(3) フジ住宅は、本件訴訟の提訴直後の2015年9月に、社内で、原告を含む全従業員に対し、原告について「温情を仇で返すバカ者」などと非難する内容の大量の従業員の感想文を配布した。
会社がこれだけのことをやれば当然にアウトだ。判決は至極当然のこと。但し、判決の認容額はあまりに低額である。ネットに、こんな記事を見つけた。
フジ住宅控訴!!がんばれフジ住宅!!
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300万円の和解案を提示された時点で(民族関係なく)まともな人なら和解で済ます。裁判所が昨日認めた慰謝料金額を見ると、この原告は実質的には負けているのでは…弁護士費用だけで100万飛ぶだろうに。フジ住宅側から控訴状キター、民事弁護士費用は自己負担だからさらに費用がかかります。裁判所も「在日の訴訟好き」にあきれていると見た。今回の控訴でフジ住宅は間違いなく注文が立て続けに入りますね。
この匿名ネトウヨ君は、「人は、金を求め、金のために裁判をする」「裁判の目的は金なのだから、金額の最大化のために行動することが合理的」としか考えていない。そんな思考回路の持ち主。人が、ブライドのために、自由や平等の理念を実現するために裁判を起こすことなどは、考えも及ばないのだ。
裁判所から300万円の和解案があったのに、それを蹴って110万円の判決を得た。これは原告の200万円の損。費用をかけて何をしているのか、理解ができないのだ。
判決が、会社の違法を確認する。メディアがそれを報じる。社会も、正義が女性社員の側にあることを認めることになる。何よりも、自分の精神の矜持を保ったのだ。そして、どんな会社も、フジ住宅のようなヘイトハラスメントをしてはならないことを天下に示すのだ。110万円の金額以上に判決の価値は大きい。
とは言うものの、認容額は高いに越したことはない。こんな違法行為を根絶するためには、慰謝料も弁護士費用ももっと高水準にしなければならない。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2020.7.20より許可を得て転載
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〔opinion9954:200721〕
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