本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(272)
- 2020年 9月 10日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
1991年のソ連
1917年の「ロシア革命」で誕生した「ソ連(ソビエト社会主義共和国連盟)」は、74年目の「1991年」に崩壊の運命を辿ることとなったが、崩壊の状況については、まさに、「資本主義国家の末路」そのものだったようにも感じている。つまり、「国債価格の急落」とともに「紙幣の大増刷」が始まり、結果としては、「約1年」という期間で、当時、世界第二位の経済大国が、あっという間に、分裂状態に陥ったのである。
そして、約30年後の現在、世界各国の「ソ連化」が始まっている状況のようにも感じているが、実際には、「国債価格の暴落」、あるいは、「デリバティブのバブル崩壊」が始まった時に、世界的な「紙幣の増刷」が本格化する展開のことである。別の言葉では、「コロナ・ショック」がもたらした「実体経済の縮小」、そして、「税収減と歳出増」による「国家財政の悪化」、あるいは、「マネー経済の破裂」により、「大量の資金が、マネー経済から実体経済への移動を始める状況」のことである。
ただし、この時の注意点は、「マネー経済」を大膨張させた「デジタル通貨」が、すでに枯渇している状況であり、実際のところ、「日米欧の中央銀行においては、すでに紙幣の増刷が実施され始めている状態」とも言えるのである。そして、今後は、大量の「紙幣」が、「実体経済」への移動を始める展開が想定されるが、このことは、「目に見えないデジタル通貨」が「目に見える紙幣」となって、我々の目の前に現れてくる状況のことである。
しかも、今回は、「米中の対立」という「新たな要因」が発生しており、この点に関して気になる事実は、「1949年に誕生した中共(中華人民共和国)」が、現在、71年目を迎えている事実である。つまり、現在の中国は、「世界第二位の経済大国」となりながらも、「習近平氏」の指導の下、ひたすらに、「共産主義的な独裁色」を強めている状況のようにも感じられるのである。
別の言葉では、「米中の対立」が「世界的な信用崩壊」を引き起こし、その結果として、「国債価格の暴落」が発生する事態を危惧しているが、この点に「戦後76年目を迎える日本の運命」を重ね合わせると、「今後の数年間」については、きわめて危機的な展開となる可能性も考えられるようである。そして、この時に、最も注目すべき点は、「通貨価値の下落」を意味する「インフレ」でもあるが、実際には、「マネー残高の実質的な急減」により、「戦争などの奪い合い」ができなくなる状況が想定されるわけであり、この点については、「ソ連崩壊後の状況」が、大きな参考になるものと考えられるのである。(2020.8.11)
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中央銀行のデジタル通貨
現在、「中央銀行のデジタル通貨」が議論され始めているが、「マネー理論」から言えることは、「中央銀行のデジタル通貨は、当分の間、実現不可能である」ということである。つまり、現在の「金融システム」や、今までの「マネーの歴史」を吟味すると、「理論上は、全く、別の方向に向かっている可能性」が指摘できるものと考えており、現時点では、「資金繰り」に窮し始めた世界各国の中央銀行が、「時間稼ぎ」と「問題の先送り」の一環として、このような論争を巻き起こした可能性が考えられるのである。
より具体的に申し上げると、「約5000年前に発明された」と言われている「貨幣」や「通貨」については、その後、「金(ゴールド)」や「銀(シルバー)」が、主な「素材」だったことも見て取れるのである。つまり、「お金」は。文字通りに、「金(ゴールド)」だったわけだが、問題は、「マルクスの資本論(1868年に第一部刊行)」の頃から、「お金」と「商品」との関係性に変化が出始めてきたことである。
より具体的に申し上げると、「約5000年前に発明された」と言われている「貨幣」や「通貨」については、その後、「金(ゴールド)」や「銀(シルバー)」が、主な「素材」だったことも見て取れるのである。つまり、「お金」は。文字通りに、「金(ゴールド)」だったわけだが、問題は、「マルクスの資本論(1868年に第一部刊行)」の頃から、「お金」と「商品」との関係性に変化が出始めてきたことである。
より具体的には、「新たな商品」が存在すれば、「マネーの健全な膨張」が可能なわけだが、現在の問題点は、「デリバティブ」という「通貨」と「商品」の二面性を持った金融商品が崩壊を迎えている事態である。つまり、「2008年のリーマンショック」の前後に、「残高のピーク」を付け、その後は、「中央銀行が、国民の資産を利用して超低金利状態を形成し、デリバティブという金融商品崩壊の隠ぺいを図った状況」のことである。
別の言葉では、国民が、超低金利の仕組みに気付かなかったために、「マイナス金利」までも発生させて、時間稼ぎが実施されたわけだが、現在では、徐々に、世界的な「人々の覚醒」が始まっているものと思われるのである。つまり、「お金は信用を形にしたものだが、現在は、根本の信用が使い果たされた段階である」という事実について、世界各国で認識が深まっており、しかも、今後は、本当の意味での「通貨の堕落」、すなわち、「中央銀行が紙幣を増刷して、資金不足を補う展開」が始まるものと想定されるのである。(2020.8.15)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10100:200910〕
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