学術会議会員の任命拒否は許容できない 平和アピール七人委が緊急の訴え
- 2020年 10月 9日
- 時代をみる
- スガ岩垂 弘平和アピール七人委日本学術会議
菅首相が日本学術会議の推薦した会員候補105人のうち6人の任命を拒否した問題で、世界平和アピール七人委員会は10月7日、「日本学術会議会員の任命拒否は許容できない」と題するアピールを発表した。委員間でこの問題に関する首相の対応を検討した結果、「今回の人事介入のようなことがまかり通れば、学問の自由だけではなく、思想・良心の自由や表現の自由も脅かされる」として、緊急アピールを出したものだ。
アピールは、日本学術会議について「首相の所轄ではあるが『独立した機関』として職務を行なうものとされ、自律性を担保するため、会員はあくまで学術会議の『推薦に基づいて』内閣総理大臣が任命することが定められている」として、今回の首相による恣意的な会員任命拒否は、日本学術会議法と明白に矛盾し、これまでの「人事に介入しない」旨の国会答弁とも合致しない、と述べている。さらに、「首相は、『(会議の)総合的、俯瞰(ふかん)的活動を確保する観点から』人事を判断したと述べたが、これは説明になっていない」としている。
その上で、アピールは「今回の人事介入のようなことがまかり通れば、学問の自由だけではなく、思想・良心の自由や表現の自由も脅かされる。どんな命令でも、理由は聞かず黙って従えというのであれば、社会は委縮し、多様性は失われ、全体主義国家に向かいかねないので、けっして容認できるものではない」と結んでいる。
世界平和アピール七人委は、1955年、ノーベル賞を受賞した物理学者・湯川秀樹らにより、人道主義と平和主義に立つ不偏不党の知識人有志の集まりとして結成され、国際間の紛争は武力で解決してはならない、を原則に日本国憲法擁護、核兵器禁止、世界平和実現などを目指して内外に向けアピールを発してきた。今回のアピールは142回目。
現在の委員は武者小路公秀(国際政治学者)、大石芳野(写真家)、小沼通二(物理学者)、池内了(宇宙物理学者)、池辺晋一郎(作曲家)、髙村薫(作家)、島薗進(上智大学教授・宗教学)の7氏。
アピールの全文は次の通り。
日本学術会議会員の任命拒否は許容できない
世界平和アピール七人委員会
日本学術会議(以下学術会議と略)は、2020年10月1日から3年間の新しい期(第25期)を開始した。10月2日の総会第2日に菅義偉内閣総理大臣に「推薦した会員候補者が任命されない理由」の説明を求め、「推薦した会員候補者のうち、任命されていない方について、速やかな任命」を求めることを決定して要望書を提出した。
これは、学術会議が日本学術会議法に基づいて手順を重ねて105人の新会員候補を8月末に推薦したのに対し、内閣総理大臣が6人を外して任命し、除外の理由の問い合わせに答えないことが判明し、科学者の間だけでなく社会的に大きな批判の波紋が広がっているのに、「判断を変えることはない」と強弁し続けていることに対するものである。
私たちはこの要望書を支持する。
学術会議は、日本学術会議法によって規定された、わが国の科学者を内外に対して代表する機関であり、科学の発展を図り、我が国の行政や産業、社会に科学を反映浸透させ、政府や社会に対して助言や提言を行なう役割を担っている。首相の所轄ではあるが「独立した機関」として職務を行なうものとされ、自律性を担保するため、会員はあくまで学術会議の「推薦に基づいて」内閣総理大臣が任命することが定められている。
今回の首相による恣意的な会員任命拒否は、日本学術会議法と明白に矛盾し、選挙制度から推薦任命制度に法律改定された際の「人事に介入しない」旨の国会答弁とも合致しない。
首相は、「(会議の)総合的、俯瞰(ふかん)的活動を確保する観点から」人事を判断したと述べたが、これは説明になっていない。学術会議による会員の選考推薦は、規則に従ってさまざまな学術分野、地域、ジェンダー、経歴、能力特性等を考慮し、まさに総合的・俯瞰的な観点から責任をもって行われており、この人選は政治家や官僚によってなしうるものではない。
学術会議は、「科学者の代表機関」の重みと社会に対する責任を一層自覚し、外部の声にも耳を傾け、自ら改革を重ねていかなければならず、それは必ず可能であると考える。
今回の人事介入のようなことがまかり通れば、学問の自由だけではなく、思想・良心の自由や表現の自由も脅かされる。どんな命令でも、理由は聞かず黙って従えというのであれば、社会は委縮し、多様性は失われ、全体主義国家に向かいかねないので、けっして容認できるものではない。
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